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スペーシア・クロスロード  作者: Kanra
エピローグ
102/104

線路の彼方へ

 月詠ルナは3月上旬に高校を卒業すると、入社前から、東武鉄道南栗橋車両管区にある東武鉄道能力開発センターで事前教育を受けていた。


 いくら、特別教習をしているとはいえ、やはり手順は踏まなければならない。


 事前教育を終えて、下今市まで帰るルナを迎えに来たのは、機関士の小岩剣だった。南栗橋車両管区の機関車検修庫に居る機関車を回送するため、DE10ディーゼル機関車に乗って来たのだ。なので、添乗と言う形でDE10に乗せてもらう。機関車を無動力回送する場合、牽引機と回送車の間に車掌車を連結するのだが、小岩剣の計らいで、ルナはDE10に乗せて貰った。


「車掌車もDLも、エアコン無いけどね。」


 小岩剣は苦笑いを浮かべる。

 下今市に着くと、機関区で軽井沢アイルが首を長くして待っていた。手には、日光東照宮での挙式に使ったロウソクの火を入れた容器がある。


「さぁて、このままやっちまうべ。」


 小岩剣の言葉に、アイルは微笑みながらロウソクの火を出した。

 釜の中に、薪や新聞紙を入れ、三奈美つばさ機関士が釘を刺す。

「この火入れは、ボイラー技士の免許が無いと出来ない事だ。」

「分かってます。」

「ルナ。それからアイルちゃん。この火、大切に使うぞ。この火が、この機関車を動かす原動力になる。」


 アイルとルナ。二人で持つロウソクから、三奈美の手に持っている布切れに点火。


「行くぞ」と言う三奈美の声と共に、その火が釜の中に入れられる。


「ガランガラン!ガランガラン!」と、石炭をくべる音が車庫の中に響きわたる。

 水をボイラーへ送り込む。

 そこかしろから、蒸気が噴き出す。

 煙突から煙が出て来る。

 とにかく石炭や水をバランスよく入れて蒸気を安定させる。

 3時間かけてようやく、蒸気が安定した。


「ふぅっ。」


 機関助手の美佐島が溜め息を吐く。


「唐揚げ出来ましたよぉ!」


 アイルの声が響く。


「御飯と味噌汁もOKです!」


 ルナも続けて言った。


 今日は、下今市機関区での気まぐれな夕食会。アイルが夕食を作っていたが、「アイルさん一人では大変だ」と、帰って来たばかりのルナも一緒になって夕食を作っていた。


「いよいよ、明日から本格デビューか。」


 三奈美が言う。


「ええ。と言っても、最初の数日間はアイルさんの助手で、一緒にアナウンスするのはもう少し後になりますが。」

「一日ぐらい休めばいいのに。」

「そうしたいけど、早くアイルさんと一緒に活躍したいって言う気持ちの方が強くて。」


 ルナは頭を掻きながら言った。


「ははぁん。アイルちゃん、良いお婿さん捕まえたんなぁ。でも、過労でぶっ倒れたら本末転倒だんべ。休みの日は、ターンと遊んで、温泉入って伸ばせや。」


 相変わらず、群馬弁が混じる小岩剣にルナは、「では、同じ日がお休みになりましたら、群馬のおすすめの温泉連れてって欲しいんさぁ。」と、群馬弁で返した。ルナもまた、群馬生まれだ。


「なぁんだおめぇ同郷かぁ。伊香保温泉?」

「日本の名湯。」


 上毛かるたを言い合って、21時にお開きになり、ルナとアイルは家に帰る。


「いつか連れてってくださいな。ルナの故郷へ。」


 寝入りに、アイルは言う。


「ええ。アイルさんと一緒に、私の故郷を歩くのも楽しそうです。」


 ルナは微笑みながら言った。


 ーーー


 それから数日。ようやく、桜が咲き乱れ、日光鬼怒川地区にも春が来た。


 今日は、ルナの本格デビュー初日にして、ルナと一緒に南栗橋車両管区から下今市機関区に戻って来た機関車の復帰一本目の仕業の日だ。


 ルナとアイルの挙式の時のロウソクの火から採火してボイラーへ点火した機関車が、今、下今市機関区の扇形庫から転車台へ乗り、入換を始めた。


 ルナとアイルは、アテンダント仲間と共に、詰所で点呼を受け、乗務する列車に向かう。

 今日の乗務は下今市駅から東武日光駅へ行く観光準急「大樹・日光71号」と、東武日光駅から下今市駅でスイッチバックして鬼怒川温泉駅へ行く観光準急「大樹・日光72号」、最後に鬼怒川温泉駅から下今市駅へ戻る観光準急「大樹6号」と言う流れだ。


 ホームに14系客車と12系展望客車からなる3両編成の客車を引き連れて、C11蒸気機関車が入線してくる。

 今日は機関車の復帰一本目という事もあり、蒸気機関車の後ろに点検保守要員を乗せた車掌車、列車の最後尾に赤いDE10ディーゼル機関車を繋ぎ、プッシュプル運転だ。


 アテンダント仲間と共に、ルナはアイルの隣で列車に手を振る。

 11時39分に下今市駅に着くデハ10系の特急列車の乗客を迎え入れ、11時54分。観光準急「大樹・日光71号」東武日光行きは、大きな汽笛を轟かせて、春の日光路へ向け下今市駅を出発する。


「改めまして皆さま、こんにちはぁ!」


 アイルの明るく元気な声が、列車の中に響き、車内アナウンスが始まる。


「この列車を担当しますアテンダントは、1号車、持田。3号車、皆野。2号車は車内アナウンス担当の私、軽井沢アイル。そして―。」


 進行方向後方からルナが進行方向へ向かって歩いて行き、パーン!と、2号車の中間部で、アイルとルナがすれ違いざまにハイタッチしながら、ルナはマイクの電源を入れる。


「2号車、車内アナウンス副担当の私、月詠ルナの4人体制で、皆様を終点、東武日光駅までご案内いたします!」

「「皆様、どうぞよろしくお願いいたします!」」


 最後の部分を、背中合わせになりながら、アイルとルナの二人で言いながら、お辞儀をすると、車内から拍手が起こった。


「久しぶりの、合いの手だぁ!」


 と言う歓声も聞こえた。


「私事では御座いますが、私、月詠ルナは本日、研修を終えまして、本格デビューとなりました!本日、本格デビューできましたのは、この列車に乗務する先輩アテンダントの皆様、パートナーである軽井沢アイルさん、そして、お客様のご支援とご声援のおかげです。皆様、今後ともよろしくお願いいたします!」


 紺色に黄色いラインの入った制服を身に纏うルナの挨拶でも拍手が起きた後、


「では、ルナの挨拶に続きまして、この列車の機関車について!本日この列車を牽引しておりますのは、C11の207号機でございます!2つ目のカニさんとして、観光準急「大樹」ではお馴染みのこの機関車、本日、保守点検、試運転を終えまして、ルナのデビューとなるこの列車から復帰いたしました!」


 赤を基調とした制服のアイルがアナウンス。

 どちらかが一つの話題を終えると、アナウンスを交替する合いの手アナウンスが久しぶりに披露されて、終点の東武日光駅到着時には盛大な拍手が起き、ルナは笑顔で乗客全員にお辞儀をして見送った。


 ーーー

 

 昼食の時も「久しぶりの合いの手アナウンス。私達も楽しいよ!」と、持田やアテンダント仲間から言われてアイルは「えへへ」と照れるが、ルナはやはり顔を赤めてしまう。


(婚約アナウンス事件のような事を起こされなくて良かったよ。)


 と、内心冷や汗をかいていたが、それは口には出さなかった。


 ルナは本格デビュー前に、上司の五十里課長や運行管理者の川治に「合いの手は確かにやっていて楽しかったし、旅客も盛り上がっていた。ただ、私達が勝手に盛り上がって、勝手に終わるのでは、旅客は嫌な思いをする可能性もある。行き過ぎればコンプライアンス違反にもなりかねない。故に、ガイドラインを敷いた方がいい。特にアイルさんが危ない!」と打診した。


「新入りが何を生意気な!」と一蹴されるかと思ったが、ここまで含めた行動を取れるかまでも見ていたらしく、上司達は満足気だった。


 東武日光発、下今市経由の鬼怒川温泉行き観光準急「大樹・日光72号」は、今日は東武日光から下今市までDE10が牽引するためか、乗客は数人程度で、しかも鉄道マニアのようだった。

 なので、ルナが積極的に前に出て、機関車の豆知識や客車の豆知識をアナウンスし、時に、アイルにアナウンスを押し付けて、14系客車のマニアックな話をしていたが、再度、蒸気機関車が先頭で牽引する形になる下今市からはドッと乗客が乗って来て満員御礼だ。

 下今市を発車したところで、改めてアテンダントの紹介を行いつつ、ルナとアイルの合いの手アナウンスが始まると、満員御礼の車内から拍手が起こったり、ルナとアイルのお手振りに合わせて、乗客の沿線のおもてなしに手を振って答えたり、車内は終始盛り上がりを見せる。


 車窓に東武ワールドスクウェアが見えて来た。そこに、ルナの世界にあった物は無い。でも、ルナはもう驚かない。この世界が、ルナの生きる世界なのだから。


 終点、鬼怒川温泉駅に着いた。

 ここでもルナは、乗客全員に笑顔でお辞儀をし「いってらっしゃいませ!」と見送った。

 後は、最後の観光準急「大樹6号」で終了だ。


(楽しいだけじゃない。大変な事もある。でも、この世界で生きることは、幸せなことだ。)


 転車台で向きを変えるC11‐207号機にアテンダントの仲間やギャラリー達と共に手を振りながら、ルナはアイルの手を握った。


「こらっ!今は仕事中!」


 アイルに叱られる。


「あっ―。すみません。」

「まったくもう。そういうのは、家に帰る時にね。」


 耳打ちされ、ルナは自分でやっておきながら、顔を真っ赤にしてしまった。 


 鬼怒川温泉駅の転車台でC11が向きを変えた時、晴れているのに、山の方から雪のような物が舞い始めた。日光鬼怒川地区の今日の天候は晴れなのだが、寒の戻りで気温が低く、山の方では雪予報。故に、桜の花びらと共に、風花が舞っているのだ。


 ルナはそれでも、先に1番線ホームに歩く。

 デハ10系の浅草行き特急列車が1番線に停車している。この列車は、ルナの世界ではスペーシアXだった。


 ルナはホームの先端まで歩きながら、アイルと初めて会った日を思い出す。


 2年前に地球のようなヘッドマークを付けたSL大樹を見に来た、あの始まりの日から、ルナの旅は始まった。

 SL大樹を追う旅をしていたルナは、実はアイルの事を探していたのだ。


 そして、その旅の果て。

 ルナは宇宙への夢を叶える代わりに、アイルの世界という安息の地を得た。


「夢のワールドスクウェア」の発車メロディーが流れ、浅草行き特急列車が発車すると、特急列車の後にいたC11‐207号機の姿が見えた。


 特急列車が行った方向の線路は、夕陽に染まっていた。

 ルナは静かに息をついた。

 それだけで、今の自分は間違っていないと思えた。

 C11‐207号機が短い汽笛を鳴らし、入換作業が始まった。


「おっとやべ。」


 ルナは客車が停まっている3番線ホームに急いだ。


 3番線に入ると、「おい。」と、列車の最後尾のDE10から小岩剣が声をかける。


「三奈美へ伝えろ!屁みたいな汽笛で出たら、今日のカレーに唐辛子ぶち込むぞってな!」

「了解です!」


 タタっとホームを走ると、先頭のC11に乗っている三奈美機関士に「つるぎさんから伝言!屁みたいな汽笛鳴らしたら、今日の金曜カレーを唐辛子山盛りにするらしいです!」と、本当に伝える。


「んなこと言ったって、あんまりボーボーやると、近所迷惑になるんだよ。」


 三奈美は溜め息交じりに言った。


「こらっ!」


 今度はアイルに尻を蹴飛ばされる。


「油売ってんな!仕事!」

「分かっています。伝令です!」

「帰りは乗客0人で、空っぽのはずだったんだけど―。」


 アイルは少し恥ずかしそうにしながら、視線を逸らす。

 そこには里緒菜とエレナの姿。


「えへへっ。来ちゃった。」


 里緒菜が微笑む。


「んじゃ、サボっていいですね。」

「こらぁ!」


 ルナは冗談で言ったのだが、アイルにまたも蹴り飛ばされる。

 しかし、その顔は笑っていた上、本気で蹴飛ばしたのではなく、ちょっと小突く程度の蹴りだった。


「仲良いね。二人とも。」


 エレナも微笑んだ。


「お陰様で、仲良くやっております。まもなく発車いたしますので、ご乗車になりまして、車内でお待ちください。」


 ルナはお辞儀をする。


「ほーい。じゃあ、車内で待っているよ。2号車でね。」


 エレナは言うと、客車に向かう。


「むーっ。ルナにはすぐ笑顔を見せてぇ!」


 里緒菜が頬を膨らましながら後を付いて行くのを見送って、ルナは2号車で発車合図を送る体制に入った。


 発車時刻1分前。

 ルナは1号車、3号車、そして車掌に発車合図を送る。


「ボォーッ!」と、C11が汽笛を鳴らし、次いで最後尾の紅いDE10ディーゼル機関車が「ピィーッ!」とホイッスルを鳴らし、12系展望車からメロディーホーンを奏でながら、観光準急「大樹6号」は鬼怒川温泉駅を出発した。


「今日は黒色の蒸気機関車と赤いディーゼル機関車の二人三脚。まるでルナとアイルね。」


 里緒菜が言う。


「そうですね。蒸気機関車がルナで、ディーゼル機関車がアイル。」


 エレナも続く。


「そうですよ。ルナがデビューし、同時に今日の蒸気機関車は試運転を終えて復帰一本目ですよぉ!」


 アイルがクルクル回りながらアナウンス。


「危ないです。」


 ルナが溜め息交じりに言った後、


「ご乗車ありがとうございます!」


 と、2号車車内へお辞儀をする。


「本日は、お客様が少ないため、アナウンスは特別アナウンスを行います!」

「皆様と一緒に、楽しく下今市までご案内いたします!よろしくお願いいたします!」


 ルナに続いてアイルもお辞儀をすると、里緒菜が笑顔で拍手する。


(すんげぇヤラセくせぇ!)


 エレナが苦笑いしているのがルナにも分かった。


「それでは―。」


 クルっと回って、ルナは後ろに居た持田にアナウンスを変わると、検札をする。

 それを終えると、東武ワールドスクウェアを発車。

 進行方向には夕陽が見えていた。

 2号車の展望デッキに行くエレナについて、ルナも展望デッキに出る。


「よかった。」


 エレナが微笑んだ。


「アイルと一緒に楽しく暮らせているようで。」

「私一人ではありません。みなさんのおかげです。エレナさんだけではありません。」

「アイルと一緒に生きる時間はどうだ?」


 ガタンゴトンというジョイント音に続いてルナは、


「まさに、里緒菜さんの言う通りです。蒸気機関車とディーゼル機関車。私とアイルさんと。二人三脚で、楽しく、幸せに過ごさせていただいております。」


 と言う。


「実は、里緒菜さんのお腹には、赤ちゃんがいるんだ。」

「えっ!?」


 本気でルナは驚いた。


「それから、ウララちゃんも。」

「本当に?」

「ああ。白百合家も安泰。軽井沢の家もね。」


 エレナは照れ笑いを浮かべつつ、


「でも、ルナとアイルは二人のペースでいい。」


 と言った後、客室の方を見て、

「あまり君を占拠してはいかんな。」と言って、客室へ戻るので、ルナも後を追おうとしたが、エレナに止められた。


「ちゃんと、明里さん達の許可は得ておりますよ。」


 アイルは微笑みながら言った。

 列車は新高徳駅に対向列車との行き違いのため停車する。


「この世界に来て、皆さんの微笑みが温かいと感じております。」


 ルナは本心から言った。


「えへへ。私も、同じです。特に―。」


 アイルは上目遣いでルナを見る。


「特に、ルナと出会い、ルナと一緒に歩き始めた時から、私の世界に彩が生まれました。ルナ。あなたと出会えたことに感謝です。ありがとうございます。」


 アイルがルナに感謝を伝えるので、ルナは少し狼狽する。 

 対向列車のデハ10系の特急列車が警笛を鳴らしながら通過した。


「感謝するのは、私の方です。「大樹」という列車に出会えて、「大樹」に携わる皆様と出会い、そして―。」


 ルナはアイルをまっすぐに見つめる。


「ボォーッ!」と長い汽笛を鳴らしながら、列車は鬼怒川を渡っていく。


「アイルさん。貴女と出会えました。」

「-。」

「あの―。」

「なら、何か欲しいですわ。」


 アイルはニヤリと笑って何かを求める。

「ゲホっ」とルナは咳払い。


「いくら許可貰っていても、それは越権行為。」

「みんな見てますよ?」


 アイルは視線を客室に飛ばす。

 列車は砥川橋梁を渡る。また長い汽笛が聞こえた。

 客室からは、アテンダント仲間と里緒菜が見ていた。


「ちょっとヤキ入れて来ます。」


 ルナは本気で言うと、空に向かって煙が流れて行くのが見えた。

 そして、遠くに日光連山が、茜色に染まった空に、紺色のシルエットを見せている。東の空を見ると、半月から少し膨らんだ月が見えていた。まもなく、夜になり、あの月が綺麗に輝くだろう。


 それらを見たルナ。


「まぁ、ハグだけなら―。」


 顔を真っ赤にして言ったら、


「本気で言うな!」


 と、アイルに言われてしまった。


 列車は大桑を通過して、倉ケ崎の花畑に差し掛かる。

 春の花々が咲き乱れていた。鬼怒川温泉駅を出た時は曇っていた空が、ここまで来ると明るく晴れていた。沿線には桜も咲いている。


 桜咲く中、観光準急「大樹6号」。

 ルナの世界ではSL大樹と呼ばれていた列車は、森の中を進むと、大谷向駅に差し掛かる。対向列車の5700系の特急列車と行き違いながら大谷向駅を通過すると、大谷川を渡る長い鉄橋に差し掛かる。


「下今市駅場内進行!」


 先頭のC11の三奈美機関士の視差歓呼の声が聞こえた気がする。


「では―。」


 ルナは客室に戻る。


「まもなく、この列車の終点、下今市駅に到着いたします!」


 アイルも続いて、


「皆様、車内にお忘れ物、落とし物なさいませんよう、御手回り品もう一度ご確認ください。」


 そして、二人並んで―。


「本日は、観光準急「大樹6号」ご乗車いただきましてありがとうございました!」


 車内へお辞儀をすると、

「ボォーッ!」と長い汽笛が聞こえてきた。


 汽笛の音は、夕陽暮れなずむ日光鬼怒川地区の空へ、町へ、そして、ルナとアイルの心の中へ溶けていった。


 夕陽に照らされた空の下、二人の影は線路の先へと伸びて行った。


 そして、線路は続いて行く。

 ルナとアイルの未来へ―。




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