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対等なパートナー

エリカのアナザーストーリー5話目です

その日を境に私はまるで別人のようになった。

もう、過去の亡霊に怯える、か弱い女ではない。

不当な攻撃に対し燃えるような闘志を宿した猛々しい女王だった。


「拓也。戦争のやり方を教えてちょうだい」


アマンのペントハウスで、私は彼にそう言った。

その目はどこまでも真剣だった。

彼はニヤリと笑うと、頷いた。


「いいだろう。ただし、俺のやり方は少しだけ汚いぜ」


私たちの反撃が始まった。

拓也は彼の持つ全ての力…弁護士、興信所、そして、天文学的な資金を使い、巨大な敵の見えない急所を次々と攻撃していった。

私はその光景をただ見ていることしかできなかったが怖くはなかった。

むしろ興奮していた。

これこそが彼が生きる本物の世界の戦いなのだと。


そして、私も私の戦場で戦っていた。

私は次のコレクションの準備に全ての時間を注ぎ込んだ。

デザイン、素材選び、縫製。

その全てに、一切の妥協を許さず、鬼気迫るほどの集中力で取り組んでいた。

それは、もはやファッションというよりも私の魂そのものを布に刻み込むような神聖な作業だった。


私は夜の世界で培った、全ての人脈をフル活用した。

最高のモデル、最高のスタイリスト、最高の音楽家。

私が頭を下げれば、誰もが私のその熱意に力を貸してくれた。

それは拓也の金の力ではない。

私という一人の人間がその魅力で築き上げてきた信頼の証だった。


そして、運命のファッションウィーク当日。

新生「FLEUR」のショーの会場には、世界中から、トップクラスのジャーナリストやバイヤーたちが集まっていた。

スキャンダルの渦中にある曰く付きのブランド。

彼らは好奇とそしてほんの少しの軽蔑が入り混じった目でその始まりを待っていた。


やがて、照明が落ち音楽が鳴り響く。

ショーが始まった。


その瞬間、会場の空気は完全に一変した。

ランウェイに現れたのは誰もが見たことのない、圧倒的に、美しく、そして、強い女性たちの姿だった。

私がデザインした服はもはや単なる衣服ではない。

それは、この理不尽な世界と戦う全ての女性たちのための鎧であり、翼だった。


ショーの最後。

鳴り止まない万雷の拍手の中、私はランウェイに姿を現した。

深く、そして、誇らしげに頭を下げた。

ゴシップに汚された元キャバ嬢などではない。

世界がひれ伏すほどの才能と覚悟を持った本物の女王としての私だった。


その夜。

アマンのペントハウスで、私たちは二人きりで祝杯をあげていた。


「…ありがとう、拓也」


私は、静かに言った。


「あなたという、最高のパートナーが隣にいてくれたから」


「俺は何もしていない。全て、お前の力だ」


私たちはグラスを合わせた。

カチン、と、心地よい音が静かな夜に響き渡る。

この共同作業を通じて、私たちの間には単なる恋心ではない、戦友としての絶対的な信頼感が生まれていた。


私はそんな彼を見て、もう、迷う必要はないと確信した。

この人の隣でなら、私はもっと強くなれる。


そんな私の心を見透かすように、拓也はポケットから小さなベルベットの箱を取り出した。

その中には、燃えるような真紅のルビーが埋め込まれた美しい指輪が輝いていた。

ダイヤモンドではない。

私の燃えるような野心と情熱を象徴するかのようなルビー。

彼は私のことを誰よりも理解してくれていた。


「エリカ。俺と結婚してくれ」

「お前は、もう俺の所有物じゃない。俺の生涯のパートナーだ」

「俺と共にこの世界の頂点に立ってほしい」


私の目から涙が溢れてきた。

それは喜びの涙。

そして、初めて一人の女として心からの幸福を感じた証の涙だった。

私は今日一番の最高の笑顔で涙を浮かべながら何度も何度も頷いた。


「…ええ。喜んで」


王と、そして彼が唯一認めた女王。

金で始まった俺たちの歪で奇妙な関係は、今、この瞬間世界の誰よりも強く、そして対等な愛の物語へと昇華されたのだ。

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