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王様の育成ゲーム

俺が「美月を三ヶ月でNo.1にする」と宣言した日から、銀座の夜は奇妙な熱狂に包まれた。

俺はその言葉通り毎日のようにその店へ通い詰めた。

そして指名はただ一人。

美月だけ。


俺のテーブルには常に最高級の酒が並んだ。

一本数百万円のワイン、数十万円のシャンパン。

俺はそれを水のように注文しその売り上げは全て美月のものになっていった。


店の女の子たちは最初その状況を信じられないという顔で見ていた。


「なんで、あんな新人の子に…?」

「No.1の静香さんを差し置いて…」


嫉妬とやっかみ。

当然の反応だろう。

だが俺は一切気にしなかった。


俺は美月との時間を純粋に楽しんでいた。

彼女に夜の世界のイロハを俺なりに教えていく。


「美月。客の話を聞く時はただ相槌を打つな。相手が本当に話したいことは何か、その一歩先を読んで質問をしろ」


「はい…!」


「それから、そのワンピースはいい。だが、靴が合っていない。明日の昼、銀座の和光に行くぞ。俺がお前にふさわしいものを選んでやる」


俺は彼女を支配しようとしているのではない。

ただ磨けば光る最高の原石を最高の道具と知識で丁寧に磨き上げているだけだ。

創造する喜び。

育てる楽しみ。

俺は金で新しい才能を開花させるという最高の道楽を見つけたのだ。


美月は俺の教えをスポンジが水を吸うように吸収していった。

元々持っていた素朴な魅力に、銀座の女としての洗練さが加わり、彼女は日を追うごとに驚くような輝きを放ち始めた。

店の外では俺がプレゼントした美しいドレスと宝飾品を身にまとい、一流のテーブルマナーで俺との食事を楽しむ。


もはや彼女を「ランキング外の新人」だと馬鹿にする者はいなかった。

彼女は俺という王に見出された、特別なシンデレラだった。


そして、運命の月末。

店の売上ランキングが発表された。


一位の欄に書かれていたのは、もちろん、

「美月」

の名前だった。


しかも二位の静香に、ダブルスコア以上の圧倒的な差をつけて。

その月の彼女の売り上げは、そのほとんどを俺一人が作ったものだ。

金額にして、約2億円。

もはや個人キャストの売り上げとしては伝説の領域だった。


店内は祝福とそして嫉隠が入り混じった異様な熱気に包まれた。

美月は信じられないという顔でただ立ち尽くしている。


その日の営業後。

店の外で美月が俺のことを待っていた。

その顔は少しだけ赤い。


「…あの、佐藤様」


「ん?どうした、美月。No.1、おめでとう」


「ありがとうございます…!これも全て佐藤様のおかげです…!」


彼女は深々と頭を下げた。

そして意を決したように顔を上げる。

その瞳は潤んでいた。


「もし、よろしければ…。この後、二人でお祝いをさせていただけませんか…?」


それは暗黙の誘いだった。

アフター、そして、その先にある、枕営業。

これだけの金を使ってもらったのだから体で返すのは当然。

それがこの世界のルールだ。

彼女も必死の思いで俺を誘っているのだろう。


だが俺は静かに首を横に振った。


「いや、いい」


「…え?」


美月が信じられないという顔で俺を見た。


「お前の時間はもう終わりだろ。疲れただろうから、早く帰って休め」


「で、でも…!」


「俺はお前の体が欲しいわけじゃない」


俺は初めて彼女に自分の本心のかけらを見せた。


「俺はただお前という原石がどこまで輝くかを見てみたいだけだ。だから自分を安売りするな。お前は俺が選んだ最高の女なんだから」


俺はそう言うと彼女の頭を、ポン、と軽く撫でた。

そして待たせていたロールスロイスに一人で乗り込む。


呆然と立ち尽くす美月を残して、車は静かに銀座の夜を滑り出した。

車内で俺は一人満足げに微笑んでいた。


金で女を買うのは三流の遊びだ。

一流の遊びは金で女の「心」を揺さぶり支配すること。

そして超一流の遊びは――。


金など必要ないと錯覚させるほどに相手を魅了し心酔させることだ。


俺の本当のゲームはまだ始まったばかりだった。

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