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デスタウン  作者: 天園風太郎
第1章 自由の夜明け
35/35

第35話 特別な3人

ジョシュアの回想に入ります。

遠い昔。

ルシファーは、何故ああなってしまったのでしょうか?


 生まれた時の記憶はないが、幼い頃に母から教えてもらった。

 今から約54年前の1941年10月10日。

 大雨が降る夜に、デスタウンのソドム区で3人の子供が生まれた。

 双子の男の子と、1人の女の子だ。

 双子の母親はレイラ・キルス、女の子の母親はレイラの姉であるローレル。

 不思議なことに、姉妹が同じ日のほぼ同じタイミングで出産した。

 その上、3人の子供の父親は正体不明。

 謎が残る出産となった。


 双子は兄の方はジョシュア、弟の方はサイモンと名づけられた。

 女の子はルシファーと名づけられた。

 ジョシュア、サイモン、そしてルシファーの3人は、同じ日に生まれた特別な家族同士だった。

 レイラとローレルは、キルス教の開祖ロン・キルスの娘達だったため、彼女達の子供達の父親について酷い噂を流す輩もいたが、2人は負けずに力を合わせて子育てをした。

 ロンをはじめとしたキルス教の聖職者達も子育てに協力し、子供達はすくすくと元気に成長していった。



 時は流れて、1955年6月。

 ジョシュアは手がつけられない程わんぱくな少年に成長し、大人しい弟のサイモンを連れ回して喧嘩に明け暮れていた。

 一方、2人のいとこのルシファーは可憐な少女に育ち、同い年の子供達はもちろん、大人からも好かれていたが、すごく泣き虫だった。

 ある日、ジョシュアとサイモンは、ルシファーがいじめられていると聞いて、助けに向かった。

 嫌がらせのために侵入したドゥールー教徒の子供達が、泣き虫のルシファーに目をつけてターゲットにしたのだ。

 ルシファーといじめっ子達は、「教会前広場」にいた。

 ロン大聖堂ができる前、あの場所には小さな教会があり、キルラ広場は当時、「教会前広場」と呼ばれていたのだ。


 「と、取り消して!!」


 泣きながら言うルシファーを、いじめっ子達はあざ笑う。


 「何でだ?事実だろ?お前の父親は誰だかわかんねえんだろ?つまり、そういうことだ!」

 「お前の母親は!!その辺の男と子供作るようなふしだら―—」

 「「黙れ、クズ共!!」」


 ジョシュアとサイモンはその場に駆けつけ、いじめっ子達を殴り飛ばした。

 ジョシュアは堂々と相手のパンチを受けた上で、次々と殴っていった。

 しかし、サイモンは相手の抵抗を許さず、骨折させるまで殴るのをやめなかった。

 普段は静かに時計いじりをしているような弟だが、家族を傷つけられた時はジョシュアが優しく見えるほど激しい怒りを見せることがあったのだ。

 2人に散々殴られたいじめっ子達は泣きべそをかいて逃げ去った。

 その直後、ジョシュアはルシファーに「大丈夫か!?怪我は!?」ときいたが、大丈夫な訳がなかった。

 ルシファーは、あの愚か者達に心を傷つけられたのだから。


 「私・・・・・・ヒクッ。言い返せなかった。殴れなかった。お母様の悪口を言われたのに・・・・・・!ヒクッ!私は・・・・・・、役立たずの出来損ないだ!!」

 「違う!!」


 ジョシュアはルシファーをギュっと抱きしめた。


 「それは違うぞ、ルシファー!!お前は俺の大切な家族だ!!役立たずでも、出来損ないでもない!!!!」

 「でも・・・・・・!」

 「俺はお前が生きてくれているだけで嬉しいんだ!!」

 「は・・・・・・!?」

 「俺だけじゃない。サイモンも、ローレルおばさんも、皆だってそうだ。だから、そんなこと言うな。困ったことをされたら、俺達に頼ればいい。俺はいつだって、お前を助けにいくぞ!!」


 ジョシュアが想いを伝えると、ルシファーはゆっくりと抱き返した。


 「ずるいよ、ジョシュア」


 あの頃のルシファーには、邪悪なものなど感じられなかった。

 現在とは全く違う。

 この時と同じものがあるとすれば、それはプロ顔負けの演技力だろう。


 数日後、ジョシュアとルシファーは、「子供に変身した天使達」の役に選ばれた。

 1897年7月12日にロンが光の神リベルルから啓示を受けたことを記念して毎年7月12日に教会前広場で演劇が行われるが、この年の演劇に参加できることになったのだ。

 選ばれた理由は、「2人とも元気で可愛いから」。

 ジョシュアとルシファーは、家族が応援してくれているため、全力で頑張りたいと思っていた。

 2人は力を合わせ、練習の時はもちろん、それ以外の時間でも自主練を欠かさなかった。

 ロンに試練を与える、子供の姿をした天使達。

 その演技次第で、ロンがリベルルから啓示を受けた正当性が観客に伝わるか否かが決まる。

 責任重大だった。


 そして、本番当日。

 キルス家の人々や聖職者、一般の信者が大勢集まる中で、演劇が行われた。

 ジョシュアは少し緊張してしまったが、ルシファーは冷や汗もかいていなかった。

 ジョシュアは彼女の姿に勇気づけられ、一緒に天使を演じた。

 途中で広場に侵入したドゥールー教徒が投石を行うなどのハプニングがあったが、ルシファーのアドリブと機転のおかげで演劇はどうにか成功に終わった。

 演劇の後、ジョシュアはルシファーの手を両手で握った。


 「すごかったぞ、ルシファー!俺よりもはるかに天使らしかった!」

 「ふぇ!?そ、そんなこと・・・・・・」


 ルシファーは少し照れて、最初は否定しようとした。

 しかし、


 「頑張ったわね!!本物みたいだった!!」


 と母であるローレルに抱きしめられ、その上、広場の皆から称賛されたことで、結局認めた。

 あの演劇以降、ルシファーは「演技の天才」として有名になった。

 現在よりも激しい迫害が行われていた時代だったが、あの日々の間は明るかった。



 しかし3年後、状況は悪化した。

 1958年6月13日。

 後に「災厄の日」と呼ばれるあの日、リベール山から突然「狼」が下りてきた。

 角が生えているその奇妙な狼は、ソドム区の住民を次々と襲い、その襲われた住民も凶暴な「魔物」と化して周囲の人々を襲い始めた。

 すると、その襲われた人々も新しい「魔物」となり、数が増えていく。

 元凶である「狼」は自警団によって仕留められたが、魔物と化した人々はウイルスのように増え続けていった。

 何故増えるのか?

 それは、傷口からあるウイルスが入って感染することにより、脳に異常が起きて理性を無くし、やがて人肉を食らう欲求に支配されてしまうからだ。

 そう。彼らが、この街で初めて目撃された「ゾンビ」だ。

 ゾンビ達は数十体も増えたため、多くの住民は近くの学校か教会に避難した。

 ジョシュア達3人は避難してきた人々を助けるために教会にいたが、扉を破られ、そこにもゾンビ達が侵入してきた。


 「た、助けて。ジョシュア!」


 子供を逃がそうとして転んでしまったルシファーがゾンビに襲われそうになり、ジョシュアはゾンビに殴りかかった。

 殴りかかる瞬間、目と頭が熱くなるのを感じた。


 「ルシファーに、触るなぁああ!!」


 ゾンビにルシファーを触らせない想いで叫んだ。

 すると、一瞬ゾンビの動きが止まった。

 ジョシュアは驚いたが、その時には既にゾンビを殴り倒した後だった。

 ルシファーも驚いていたが、ジョシュアを見てあることに気づいた。


 「ジョシュア、あなた、瞳が光っている!!」

 「え?瞳が何だって??」


 ジョシュアはルシファーに言われて、自分の瞳が光っていることを知った。

 自警団によってゾンビ達が押し戻され、扉がふさがれる頃には目と頭の熱は引いていたが、瞳が光らなくなったのを確認できたのはロンからたくさん叱られた後だった。

 ルシファーはロンが別の場所に行った直後のタイミングでジョシュアに駆け寄り、鏡を探していた彼に手鏡を貸してくれた。


 「光らなくなっている。ありがとう、ルシファー」

 「ううん。感謝したいのは私の方。本当に助けてくれるなんて!ヒーローみたい!」

 「当たり前のことをしただけだろ?」


 ジョシュアはそう言って手鏡を返した。

 その後、ロンによって、ジョシュアが使った「力」は、「リベルル様からの贈り物」だと発表された。

 ジョシュアは何故そんな発表をするかわからず、理由をきいたが、


 「今の皆には希望が必要なのだよ」


 という答えが返ってきた。

 外ではゾンビ達が暴れているため、ソドム区の住民のほとんどが自分の家に帰れず、不安な様子だった。

 ジョシュアはそんな状況を知っていたので、その理由に納得した。

 そして、覚悟を決めた。

 自分が、皆の「希望」になろうと。

 その日、ジョシュアは「わんぱく少年」を卒業した。


 それから1週間の間にウイルス―—ニューボーンウイルスは街中に広がり、市内の犯罪者を上回る勢いでゾンビが増加した。

 国中にウイルスが流行することを恐れたアメリカ政府によって橋が封鎖され、他のルートにも厳しい制限がつけられたことで物流のほとんどが止まり、街は一時大混乱になった。

 その間にジョシュアは、教会の近くを通りかかったゾンビ達を相手に自分の「力」を使い、練習を重ねた。

 最初は上手くいかず、何度か食べられそうになったが、徐々に力の使い方がわかるようになってきた。

 この力は、「ゾンビを操る特殊能力」。

 使っている時だけ瞳が光を放ち、能力を解除したり、集中力が途切れて能力が解除されたりすると光らなくなる。

 能力を使っている間に頭と目が熱くなるのも、この能力が関係しているようだった。

 7日目になる頃には、ゾンビ達を自由に動かすことができるようになった。

 だが、能力が解除されると、ゾンビがまた暴れ出してしまうため、ジョシュアは油断しなかった。

 ジョシュアは、ロンや自警団に相談した上で特殊能力を使い、1931年にマフィアの大抗争で廃墟になったビルの地下室へソドム区内のゾンビ達を閉じ込めた。

 拘束した上で。

 心が痛んだが、人間に戻す方法がわかるまではこうするしか方法はなかった。


 ジョシュアは更に1週間もソドム区に侵入するゾンビを同じ方法で閉じ込めていった。

 彼の背中を見ていたサイモンやルシファーも、武器を持ってそれに参加した。

 その甲斐あって、ソドム区だけゾンビの数は減り、住民は家へ戻れるようになった。

 すると、それを知った当時の市長達は、ジョシュアにある要請をした。

 「街中のゾンビを捕まえる大作戦に参加してほしい」と。

 このままだと、デビルズランドに展開している軍から無差別砲撃を受け、ゾンビごとデスタウンが吹き飛んでしまう。

 その前に街独自でゾンビを全員捕まえて、政府と取引しよう。

 そういうことらしい。


 「調子よすぎない?あれだけ私達をいじめたくせにっ!!」


 話を聞いたルシファーは珍しく怒りに震えていた。

 サイモンも、ロンも、レイラとローレルも、自警団や一般住民も皆怒っていた。

 ジョシュアも皆の気持ちは理解できた。

 しかし、このままでは大切なものが全てなくなってしまう。

 ジョシュアは大作戦に参加することを皆に伝えた。

 すると、サイモンやルシファー、自警団も一緒に戦うと言ってくれた。

 ジョシュアはソドム区の皆に感謝し、話し合った上で、市長達に対して、大作戦が成功したらキルス教徒やソドム区住民への迫害をやめるように要求した。

 市長達が要求を呑んだため、ジョシュア達は参加を決めた。

『黎明の魔王』でも触れていたあの戦いが始まります。

そして・・・・・・。


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