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デスタウン  作者: 天園風太郎
第1章 自由の夜明け
25/35

第25話 アルバムと腕時計

久しぶりに重い展開が来ます。

ご注意下さい。

 「・・・・・・トゥルーデ、ナイフを貸そうか?」


 ボブがきくと、トゥルーデは首を振った。


 「大丈夫!ヨハンナねえさんからもうカッターナイフは借りてるから!」

 「あいつ・・・・・・、10歳にもならない子供に何を渡しているんだ??」


 ボブは呆れながらも、トゥルーデのそばに立って、見守った。

 トゥルーデはポケットからカッターナイフを出すと、中身を傷つけないようにテープだけ刃でスーッと切った。

 表面の皮だけ切り裂くように、滑らかに、そして丁寧に。


 「やはり、すごいな。トゥルーデは」


 ボブの感心するような声を聞きながら、トゥルーデは刃を進めた。

 テープを切り終えると、刃をしまってカッターナイフを脇に置き、段ボール箱を開けた。

 中に入っていたのは、


 『我が一族のアルバム—S』


 とタイトルが書かれた青い表紙のアルバム。


 (懐かしいなぁ・・・・・・!)


 トゥルーデはそう思った。

 タイトルは知らなかったが、表紙の色も、大きさもよく覚えている。

 間違いない。これが、昔見せてもらったアルバムだ!

 アルバムを両手で持って開いてみると、ちょうどそのページにルシファーの写真があった。

 あの時見せてもらった、『2/11/1965』の写真だ。

 写っているルシファーの姿は、3歳の頃にトゥルーデが見た彼女とほぼ変わらず、美しかった。

 実際に会う前は「悪魔」に見えなかったが、今は違う。


 「今度は絶対に・・・・・・!」


 トゥルーデはつぶやいた。

 このまま「あの女」とにらめっこしていても気分が悪くなるだけなので、パラパラと他のページの写真も見てみた。

 祖父と大叔父が生まれたのを喜ぶ曽祖母達、機械いじりをする祖父、肩を組んでいる父とリリディア、そしてトゥルーデが生まれたのを喜ぶ両親。

 それ以外にも、父のサイラスに見せてもらった思い出の写真も含め、素敵な瞬間を収めた写真が多くあったが、アルバムは半分までしか埋まっておらず、そこから先は真っ白だった。

 両親が生きていれば、もっと写真があったかもしれない。

 少し悲しくなって真ん中から数ページ戻ると、あまりよく見ていなかった写真が目に止まった。

 その写真には、ブランドの黒い腕時計をお揃いで着けている母のセシリアとヨハンナが写っていた。

 この腕時計は、ヨハンナが今着けているものと同じだ。


 「トゥルーデ♪見つけた?」

 「わあぁぁーー!??」


 トゥルーデは驚き、声を出してしまった。

 振り向くと、ヨハンナがしゃがんでいた。

 夢中になっていたので、気づかなかった。

 トゥルーデは息をついた。


 「ヨハンナねえさんか・・・・・・」

 「おー、さすが。良かったね!」


 ヨハンナはトゥルーデがアルバムを持っているのを見て、ニコリと笑った。

 トゥルーデはせっかくなので、アルバムのそのページを見てもらい、腕時計について質問してみた。

 すると、


 「え?この腕時計?あ〜・・・・・・、話してなかったっけ。ほら、写真の下に、『9/15/1988』って書いてあるでしょ?結婚式の前にお揃いで買ったの。姉妹でのんびりショッピングできる最後のチャンスだったから、その記念にね」

 「知らなかった・・・・・・!でも、その腕時計、このうちで見たことなかったよ?」

 「だろうね。金庫に入れて、屋根裏部屋に隠してたみたいだし。大切なものはしまっておくタイプなんだよね」


 ヨハンナはちゃんと教えてくれた。

 トゥルーデは母の可愛い一面を知って、意外に思ったが、もっと知りたくなった。

 しかし、今はまだ作業の途中。

 後で詳しく聞いてみよう。

 トゥルーデはそう思った。


 「良し!ここの確認終わり!それじゃあ、運べるものから運んじゃおう」


 ヨハンナはパンッと手を叩いて言った。


 「本当にこれ、全部か?20個以上はあるぞ」


 ボブがそうきくと、ヨハンナは立ち上がってうなずいた。


 「当たり前でしょ。文句ある?」

 「いや、ないが・・・・・・」

 「しっかりしてよね?手伝ってくれたら、もっとふ・や・すからさ?」

 「・・・・・・わかっている」


 ボブはうつむいて言った。

 金曜日にボブの娘の容体がまた急変し、ボブは今度はちゃんと事情を話して休んだ。

 その後、夜遅くに戻ってきたボブが玄関でヨハンナと話し合っていたのを、トゥルーデは階段で聞いていた。

 話し合いの結果、ボブが遺品整理を手伝ってくれれば、ヨハンナは治療費のためのお金を出すと決めたようだ。

 そのため、ボブはこの日はあまり文句を言っていない。

 ヨハンナはトゥルーデの視線に気づくと、笑顔で言った。


 「ほら、トゥルーデも!」

 「はい!」


 トゥルーデは元気に返事した。

 しかし、その直後、突然トラックが現れた。

 まるで、3人を逃がさないかのように。

 トラックは家の前に停まった。


 「え!?これじゃあ、車が出れないよ!あのトラック、何!?」

 「・・・・・・業者のじゃないか?」

 「違う。あれは・・・・・・、兄さん達のだ」


 ヨハンナはトラックを睨みつけた。

 トゥルーデは震え上がった。


 「兄さん達?待って!兄さんって、まさか・・・・・・!?」


 そう。「兄さん」とは、ヨハンナの兄のことである。





 ヨハンナの兄はヨハンナと同じ職場、市庁舎で働いている。

 彼はグレゴリー家当主だが、妹のヨハンナが自分の上司であることが気に入らず、度々ヨハンナの屋敷に押しかけては訳のわからないことを喚き散らしていた。

 ヨハンナはその度に仕方なく対応した。

 狂った兄をトゥルーデに近づけないためである。

 トゥルーデはボブに守られながらその様子を見ていた。


 「グレゴリー家当主の上に立つとはぁーー、許せんなぁあー!?これは、反逆かぁ!?ヨハンナ!!」


 そう怒鳴る彼の顔は、ヨハンナの兄とは思えない程歪んでいた。





 トゥルーデはその男の狂った姿を思い出して怖くなり、すがるようにギュッとアルバムを抱きしめた。

 トラックから、2人の父子が降りた。


 「よう、ヨハンナ。遺品整理を手伝いに来てやったぜ」


 彼が、ヨハンナの兄ヨハン・グレゴリー。

 ヨハンナと同じ艶のある黒髪と美しく輝く金色の瞳を持っているが、それを台無しにするかのように、目にはドス黒いクマがあり、口周りには汚い無精髭が生えている。


 「お任せ下さい。中身を傷つけずに運んでみせます」


 そして、ヨハンの息子ジェイコブ。

 ヨハンと違ってクマも無精髭もないが、耳が人より大きい。

 一見優しそうだが、以前肩がぶつかった相手に逆上して殴り倒しているのを、トゥルーデは目撃している。

 つまり、この2人は危険人物ということだ。

 そんな父子を信じられる訳がない。


 「間に合ってるよ。帰って!」

 「おいおい。お兄様に何て口の利き方だ。手伝ってやろうとしてるのに」

 「あなた達が信用できる訳ないでしょ!」


 ヨハンナがそう言うと、トゥルーデもヨハンナの隣でうなずいた。

 ヨハンは低く舌打ちした。


 「大人しく言うことを聞けば良いものを。ん?」


 ヨハンの目がギョロッとトゥルーデの方を向いた。


 「その持ってるアルバムは・・・・・・、あの変人一族のか!」


 ヨハンはトゥルーデが持っているアルバムを見た途端、ニチャアッと気持ち悪い笑みを浮かべた。

 そして、


 「そのアルバム、デビルズランドかニューヨークに持って行けば、高値で売れるな・・・・・・。いや、売るよりも手元に置いておけば、デビルTVの番組『殺人鬼の素顔』に出演できるかもしれないぞ!グフフフ!」


 一方的にそんな勝手な都合を言ったかと思うと、突然トゥルーデのそばに駆け寄り、アルバムの端をガシッとつかんだ。


 「アルバムを・・・・・・よこせェエエエェ!!!!」


 アルバムが、ゆっくりとヨハンの方へ引っ張られていく。

 トゥルーデは慌てて全力で引っ張った。


 「嫌だぁあああ!!!!」

 「やめなよ、兄さん!」


 ヨハンナがヨハンを力ずくで引き離してくれた。

 危うくアルバムを奪われる所だった。


 「ハァ、ハァ・・・・・・!」


 トゥルーデは息を整えながら2人のやりとりを聞いた。


 「やっぱり、遺品を盗むために来たんだね。このクズ兄貴!これは!このアルバムは!トゥルーデの大切な家族の思い出が詰まったものなんだ!奪うなんてむごすぎるよ!!」

 「ほう。ヨハンナ、どうしても兄である俺に歯向かいたいか。良かろう。ならば、どちらが正しいか、兄妹らしく喧嘩で決めようではないか!」

 「受けて立つ!!」


 どう考えてもヨハンナの方が正しいのに、兄弟喧嘩の開始が決まってしまった。

 息が整うと、トゥルーデはヨハンナのそばに駆け寄った。


 「ヨハンナねえさん!一旦逃げよう!何も準備しないままバトルするのは危ない!」

 「・・・・・・トゥルーデは離れててね。あのクズは今度こそしつけなくちゃ」

 「ヨハンナねえさん・・・・・・」


 ヨハンナの意志は固かった。


 「わかった。さっきはアルバムを守ってくれてありがとう。気をつけて」

 「任せて。すぐに終わらせるから!」


 ヨハンナは自信満々にそう言った。

 トゥルーデはボブと一緒に家のドアの前まで移動し、ヨハンナを見守った。


 「まさか、俺より速くヨハンナが動くとは・・・・・・」

 「ボブさんも助けようとしてくれたの?」

 「当たり前だ。あのクズがトゥルーデにくっついた瞬間、拳銃を抜いたぞ。だが、警告しようとした時、ヨハンナが・・・・・・、いや、今更何を言っても言い訳にしかならないが」

 「そんなことない!守ろうとしてくれてありがとう!」

 「トゥルーデ・・・・・・」


 ボブは肩を震わせた。


 「すまない。本当に・・・・・・、本当にすまない!」

 「・・・・・・ボブさん?」


 トゥルーデは首をかしげた。

 この日はボブの様子がいつも以上におかしかった。

 しかし、ヨハンがトラックの運転席から鉄パイプを取り出してきたため、トゥルーデはボブに気を配る余裕がなくなってしまった。

 ヨハンナはそれに引きながら構えた。


 「正気じゃないね、兄さん」


 一方のヨハンは首をゴキゴキと左右に動かして余裕そうに笑った。


 「あったりめーだろ!!」


 ヒューッと風が吹く。

 バランスを崩して、バサッと倒れる空の段ボール箱。

 それを合図に、ヨハンは叫んだ。


 「はじめーーっ!!」


 ヨハンが自転車とほぼ同じスピードでヨハンナに突進してくる。

 ヨハンナはピクリとも動かない。

 しかし、ヨハンが目と鼻の先まで来て、鉄パイプが大きく空に振り上げられた時、ヨハンナはスッと上を見た。

 そして、鉄パイプが振り下ろされた瞬間、それを掌で受け流し、流れるようにスムーズにみぞおちへ強烈な突きをお見舞いした。


 「ぐおぉ・・・・・・!う!ぶぉ・・・・・・!」


 ヨハンは吐きながら膝をつき、鉄パイプを落とした。


 「どう?降参する?」


 ヨハンナは息切れもせず、明るくきいている。

 トゥルーデは興奮して叫んだ。


 「やっぱり、すごいよ!ヨハンナねえさん!」


 しかし、その直後、予想外の人物が動いた。

 ジェイコブが、隠し持っていたナイフをヨハンナに投げつけたのだ。

 ナイフは回転し、ヨハンナの横腹に刺さった。

 あまりに一瞬のことで、トゥルーデは取り乱した。


 「は?え?・・・・・・あああああ!??」

次回、衝撃の真実が明らかになります。

辛いですが、一緒に目撃していきましょう。

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