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デスタウン  作者: 天園風太郎
第1章 自由の夜明け
24/35

第24話 最強ペア

今回はしつこい人達が登場します。

苦手な方はご注意下さい。

 週明けの朝。

 ヨハンナは車を幼稚園の駐車場に停めた。

 そして、いつもの確認を始める。


 「ボブ」

 「わかってる。怪しい奴が来ないよう、遠くから見守る」

 「トゥルーデ」

 「今日も元気に頑張る!」

 「良し。それじゃあ、行こうか」


 ヨハンナはそう言うと、3人で車を降りた。

 ボブがいつも通りどこかへ消えた後、トゥルーデとヨハンナは園庭に入った。


 「トゥルーデ!おはよう!」

 「おはようございます!トゥルーデさん!」


 園庭に入った直後、シャーロットとピーターがトゥルーデに挨拶してくれた。


 「おはよう!」


 トゥルーデも元気に挨拶を返す。

 シャーロットとピーターはヨハンナにも挨拶した後、トゥルーデの方を向いて、あることに気づいた。


 「あ、あれ?」

 「そういえば、トゥルーデさん。左のほっぺが・・・・・・」

 「うん。治ったの!」


 トゥルーデは笑顔で言った。

 そう。トゥルーデの左頬の腫れが治ったのである。

 お遊戯会の次の日にヨハンナが病院に連れて行った際、医師からは症状が治まるまでに数週間かかると言われたが、たった数日で跡も残らず治ってしまった。

 おかげでガーゼを貼り続ける必要もない。


 「良かったね!」


 シャーロットはトゥルーデに抱きついた。


 「あれ?ちょっと太った?」

 「え?そう?」

 「うん。早速鬼ごっこした方が良いかも」

 「やる!」


 トゥルーデはうなずいた。


 「僕もやります!じゃんけんしましょう!」


 ピーターも鬼ごっこに参加するようだ。

 他のキルス教徒の園児達もその様子に気づくと、トゥルーデ達の周りに集まり始めた。

 いつの間にか、大きな「輪」ができている。

 ヨハンナはそれを見て微笑み、トゥルーデとシャーロット達に挨拶してから園庭を出た。


 (トゥルーデ、人気者になったなぁ。まあ、あんなに格好良かったら、当然か)


 彼女はそう思いながら自分の車に向かった。

 すると、そのタイミングで突然、大男が8名も周囲の車の陰から現れ、一瞬でヨハンナを取り囲んだ。

 ヨハンナは舌打ちすると、腕組みした。


 「・・・・・・何?邪魔」


 この動きはただのならず者集団ではない。

 何か目的があって動かされている、統制された集団だ。


 「ヨハンナ・グレゴリィー。お前は選択を間違えたぞぉ」


 正面の大男の背後にある高級車から白スーツの男性が降りてきた。

 喋り方がねっとりしていて、やや低い声だ。


 「俺達父子に逆らうことは、ルクレール家に逆らうことと同じぃ。つまり、ここでリンチされても文句は言えないという訳だぁ」

 「・・・・・・あ~。あなた、ドロススの父親か」


 よく見ると、白スーツの男性の顔は息子のドロススに似て、整った顔だが、表情は醜い。

 心の醜さが表に出てしまうタイプである。


 「そうだぁ。お前は、グレゴリー家の血を引く者でありながら穢れた害虫を甘やかし、俺の息子がそいつに恥をかかされるのを止めなかったぁ。許せんんんん」

 「うちの子をいじめたのは、あなたの息子さんの方なんですけど?」

 「黙れぇええええええええっ!!キルス家の血を引く虫ケラなど、踏まれて当然の存在ぃ!!まずはお前をリンチして殺しぃ、それを見て絶望したあのキルス女をじっくり可愛がってやるぅ。その次は、あの探偵もどきの番だぁああ」

 「うわあ。イカれてるねぇ」


 ヨハンナは引いてしまった。

 やはり正気ではない。


 「正気じゃないのはそっちだぁ。六大名族の中ではぁ、グレゴリー家よりも、ルクレール家の方が上なのに、そのルクレール家の会社の幹部一族に恥をかかせるなんてぇ」


 白スーツの男性、いや、白スーツ男はにんまりと笑った。

 しかし、ヨハンナは落ち着いたままだ。


 「うわあ。可哀想だね」

 「はぁ?」

 「だって、そんな大事な部下とその息子が恥をかかされたのに、ルクレール家の当主はこの場に来てくれなかったでしょ?」

 「・・・・・・!!」


 白スーツ男の顔は真っ赤になった。

 ヨハンナはそれを見て、冷たい笑みを浮かべた。


 「本当に私達、ルクレール家を敵にしちゃったのかな?」

 「黙れぇ」

 「本当は、あの社長さんはさぁ」

 「黙れぇ!」

 「あなたみたいな小物、全然気にしてないんじゃない?」

 「黙れぇええええええええええ!!!!!」


 白スーツ男はヨハンナからの度重なる挑発で、最初の冷静さを失ってしまった。

 彼女の狙い通りに。


 「本当にあなた達は・・・・・・、おバカなんだね」


 ヨハンナは右手を上げ、指をパチンッと鳴らした。

 すると、白スーツ男の背後からボブがぬっと現れ、彼の頭にナイフを突きつけた。


 「ヒィイイイィイーーーッ!!?」


 白スーツ男が情けない悲鳴を上げる。

 大男達はそれに反応して白スーツ男の方を向き、青ざめた。


 「ああ!?ボス!!」

 「何てことしやがる!?」

 「クソッ!!」


 ヨハンナは静かにボブへきいた。


 「ねえ、ボブ。そこの白スーツ、何て言ってた?」

 「・・・・・・お前をリンチして殺した後、トゥルーデも『可愛がる』と」

 「その通り。これからするお・し・お・き、手伝ってくれる?」

 「もちろんだ」


 ボブはうなずいた。


 「まぁ、待てぇ!!」


 白スーツ男が叫んだが、ヨハンナとボブは聞かなかった。


 「いっくよーー?」


 ヨハンナはそう言うと、早速目の前でよそ見をしていた正面の大男の間合いに入る。

 そして、下段蹴りを食らわせた。


 「んっ!?んんんああああああああっ!!?」


 大男は悲鳴を上げて膝を抱える。

 ボブに注意を向けてしまったことで油断してしまい、まともにダメージを食らった。

 ヨハンナはそれを見ても容赦なく蹴りを繰り返し、地面に倒した。


 「あと7人」


 ヨハンナがそうつぶやくと、今度はヨハンナの方に注意が向いた。


 「舐めやがって・・・・・・!!」

 「予定通り、リンチしてやんよ!!」

 「ま、待て!まずはボスの救出を――」


 大男達の意見が分かれる。

 その隙を突き、ボブは持っていたナイフを白スーツ男の太ももに刺した。


 「あぎゃあああああ!!」


 白いスラックスが真っ赤に染まる。

 大男達は再び「ボス」の方を向いて叫ぶ。


 「ボスゥうううう!?」

 「こちらに人質がいることを忘れるな」

 「卑怯だぞ、貴様ぁあ!!」

 「大人数で女をリンチしようとしてるお前達がそれを言うのか?クズ共が」

 「ぐうう・・・・・・!」

 「ハッ!笑える」


 ボブはそう言うと、白スーツ男の太ももから勢いよくナイフを抜いた。


 「うおおおお!?」

 「大人しく俺達に殴られてくれるなら、このクズスーツ野郎は解放してやる。だが、抵抗する気なら・・・・・・、入院する奴がもう1人増えることになる」


 叫ぶ白スーツ男を無視し、そう脅すボブ。

 大男達は一瞬戸惑ったが、


 「た、助けてぇ!!こいつぅ、まともじゃないぃいい!!」


 と叫ぶ白スーツ男を見て、すぐに決断した。


 「二手に分かれるぞ。俺と弟達の4人でボスを助ける。他の3人は全力であの女を殺せ」


 リーダーの男がそう言うと、他のメンバー達は無言でうなずき、同時に動いた。

 リーダーと彼の弟達の4名はボブと白スーツ男の方へ、一方、他の3名はヨハンナの方へそれぞれ走っていく。

 ボブはそれを見て、ため息をついた。


 「バカな上に、クズ。本当に救いようがない」


 彼はそう言うと、ポケットからたくさんのビー玉を出し、地面にばらまいた。

 勢いよく前のめりに走るリーダー達4兄弟はうっかりビー玉を踏んでしまい、足を滑らせた。


 「「「うわっ!??」」」


 転んだリーダー達は駐車場のアスファルトに頭をぶつけ、動かなくなった。


 「チョロいな」

 「チョロい!!」


 ボブとヨハンナの声が重なる。

 ヨハンナも大男3名を相手に勇敢に戦い、それぞれ急所に打撃を与えてダウンさせている。


 「・・・・・・さすがだ」


 ボブはつぶやく。

 すると、そのタイミングで、ゆっくりと大男のリーダーが立ち上がった。

 額からは血がダラダラと流れ、顔が真っ赤に見える。


 「まああだあああだぁあああああ!!」

 「フン」


 ボブは動揺せず、彼の方を向いて静かに構えた。


 「ボスぅううう!!」


 リーダーがボブと白スーツ男の方へ近づいて来る。


 「石頭が」


 ボブはそう言うと、突然白スーツ男を前へ突き飛ばした。


 「なっ!?」

 「欲しいならくれてやるよ」


 白スーツ男がリーダーの方に倒れ、リーダーは慌てて彼を支えた。


 「だ、大丈夫――」

 「もうお前らは一緒の病院に行くからな」


 ボブは白スーツ男とリーダーを蹴り飛ばし、再び立ち上がろうとしたリーダーの首を押さえ、手首を切りつけた。


 「んんんん!???」

 「怖いか?覚えておけ。これが命を失うかもしれない恐怖だ」


 2名が動かなくなった所で、ボブはナイフを拭いてシースにしまった。

 その直後、


 「ボブ、こっちは終わったよ」


 ヨハンナが駆け寄ってくる。

 ボブはそれを見て、笑顔になった。


 「そうか。怪我は?」

 「ない!」

 「良かった。こちらも終わった。さて、今回の敵は一応大物らしいから、救急車呼んでやるか」

 「そうだね」

 「ん?ところで、時間は?」

 「時間?あ!」


 ヨハンナはボブに言われて、自分の黒い腕時計を見た。

 彼女の顔が真っ青になっていく。


 「遅刻するぅうううう!!」

 「ハアァ・・・・・・。早く行け。後はやっておく」

 「ごめん!お願い!」


 ヨハンナは慌てて車に乗り、駐車場から去っていった。

 ボブはそれを見送ると、静かに振り返った。

 トゥルーデ達は遊びに夢中で、彼を見ていない。

 一方、白スーツ男は彼に目を向けている。


 「甘いな・・・・・・」


 ボブはそう言うと、ゆっくり歩き出した。





 週末。

 トゥルーデ、ヨハンナ、ボブの3名は、かつてキルス一家が住んでいた家に来た。

 家の前には、どっさりと段ボール箱が積まれていた。トゥルーデが3歳の頃に登っていた木に届きそうな高さだ。

 いや、大木より高いかもしれない。

 トゥルーデは車から降りて、段ボール箱の山とアイビー公園の大木を見比べてみた。

 ・・・・・・あの大木よりは低いようだ。


 「ほんっと、信じられない!こんないい加減な積み方するなんて!この街はどれだけ腐ってるの!?」


 ヨハンナはトゥルーデの後に降りると、バタンッ!と車のドアを閉めた。


 「落ち着け。トゥルーデが聞いているぞ」


 最後に降りたボブがそう言った。

 実は、ヨハンナは遺品整理業者に手伝いをお願いして、事前に遺品がどのような状態か確認してもらっていたのだが、当日に来てみると、勝手に段ボール箱に遺品を詰められた上に、雑に積まれていたのだ。

 ヨハンナが怒るのは当然である。


 「あ・・・・・・。うん、わかった」


 ヨハンナは深呼吸すると、笑顔を浮かべてトゥルーデの頭に手を置いた。


 「大丈夫。すぐに業者さんが手伝いに来てくれるから。それまで頑張ろう」

 「うん!」


 そして、早速遺品整理が始まった。

 ヨハンナは車に積めそうな段ボール箱だけ選んで芝生の上に並べ、1個ずつ中身を確認していった。

 トゥルーデとボブもその作業に参加し、特にトゥルーデは目的であるアルバムを見つけるため、慎重に段ボール箱を探した。

 すると、意外とすぐに「アルバム」と書かれた段ボール箱を見つけた。

 トゥルーデは目を輝かせた。


 「アル・・・・・・バム!?」

良かったね、トゥルーデ!

このまま何事もなければ・・・・・・、いえ、何でもないです。

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