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デスタウン  作者: 天園風太郎
第1章 自由の夜明け
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第18話 お遊戯会

いよいよお遊戯会が始まります。

一体、どうなってしまうのでしょう??

 トゥルーデは水筒を壊され、お茶を床にぶちまけられた後も、その悲しみを表に出さず、リハーサルに参加し続けた。

 嫌がらせに屈することは絶対になかったのだ。

 そして何日間もリハーサルを重ね、ついにお遊戯会の劇の本番の日がやって来たのだった。



 「トゥルーデ、いよいよだね」


 トゥルーデは元気よくうなずいた。


 「私、全力で狼さんになる!!」

 「良し。ボブは今日、急用ができたとかで休みだから、私とブライアンがトゥルーデ達を守る。安心して、落ち着いてお芝居してね。全部上手くいったら、板チョコだよ」

 「・・・・・・!わかった!!ヨハンナねえさん、いつもありがとう!!」

 「トゥルーデのためなら、何でもするよ」


 ヨハンナはニッコリと笑った。

 リビングのテーブルには、ヨハンナが作った朝食が並んでいる。

 トゥルーデの朝食は、甘いものを減らして、力が出るよう、ベーコンとエッグ、トースト、そしてデザートのドライフルーツが出されている。

 一方、ヨハンナの前には、シリアルしかない。

 トゥルーデはふとそれを見て、心配になった。


 「ヨハンナねえさん、今度から私も朝食作るの手伝う」

 「大丈夫大丈夫!トゥルーデは自分のことに集中して!私、今日を楽しみにしてたんだから!」

 「・・・・・・うん!」


 今はお遊戯会に集中すべき時ということだ。

 トゥルーデはお祈りを済ませると、ベーコンとエッグから食べ始めた。

 柔らかくて、優しい味がする。

 今日も1日頑張れそうだ。



 トゥルーデとヨハンナは、準備を終えて車で幼稚園まで来た。

 トゥルーデは車から降りると、ヨハンナに見送られて園舎に入った。

 また痛い視線が集中する。

 だが、舞台に立てば、関係なくさらされる。

 彼女は動揺を顔に出さなかった。


 「あ、やべ・・・・・・っ!」

 「危ない!」


 トゥルーデは、すれ違いざまに荷物を落としそうになった子をとっさに支え、ニコリと笑った。


 「フーッ。大丈夫?」

 「あ、ああ・・・・・・。その、ありがとう、トゥルーデ・キルス」

 「どういたしまして!さあ、今日はお遊戯会!皆で力を合わせて、来た人達を笑顔にしよう?」

 「・・・・・・そうだな」


 落としかけた荷物を抱え、その園児はうなずいた。

 お遊戯会本番の日だからか、慌てている園児達が多い。

 その後も、トゥルーデは、次々とトラブルに見舞われる子らを目撃することになった。


 「うわああ!!ポスターが剥がれるぅうう!!」

 「誰か、クレヨン知らない?これじゃあ、人形劇に間に合わないよ」

 「あいつがボクのカードとったぁああああ!!うあああーーーん!!」


 無視しても良かったが、どうしても見て見ぬふりはできず、教室に向かう前に彼らを少し手伝うことにした。

 彼女は、剥がれかけたポスターを貼り直そうとする子のために椅子を押して乗せたり、クレヨンを探す子にはそれがしまってある棚を教えたり、喧嘩をしている子らの間に入って仲直りを手伝ったりした。

 やっと人助けが一段落すると、彼女は自分の教室へまっすぐに進んだ。

 しかし、近づいていくと、その方向からざわめく声が聞こえてきたため、さすがに首をかしげた。


 「何だろう??」

 「あ、トゥルーデ!!」


 シャーロットはトゥルーデに気づき、彼女へ駆け寄った。


 「大変なの!!あなたの衣装が・・・・・・!!」

 「え・・・・・・?」


 トゥルーデは嫌な予感がし、慌てて教室に入った。

 ・・・・・・予感的中。

 トゥルーデが劇で着るはずの狼の衣装が刃物で切り裂かれ、教室の壁にガムテープで貼り付けられていた。


 「何これ!??」


 トゥルーデは思わず叫んだ。

 すると、シャーロットが彼女の隣に立った。


 「朝来たら、教室の壁に貼られてたの。マジでクレイジー」

 「先生には?」

 「もう言ったよ。でも、『大丈夫大丈夫』しか言ってこないの」

 「な、何で・・・・・・??」


 トゥルーデは困惑した。

 本番当日にこんな事件が起きたというのに、何が「大丈夫」なのだろうか?

 その時、突然汚い高笑いが教室に響いた。


 「ギャアあははははははハハハっハハハはっはーーーっ!!!」


 驚いたトゥルーデ達が声のした方を向くと、そこには開いたドアのそばで壁に寄りかかるドロススがいた。

 ドロススは何と、新品の狼の衣装を着ている。


 「何がおかしいの!?ドロスス!!」

 「相変わらずバカだな、害虫女ぁ!!何で大丈夫かって?それは、俺がお前の代わりに狼役をやってやるからだよ!!」

 「はぁあああ??」

 「お前の衣装が嫌がらせでダメになるかもしれないのはわかってたから、お父様に頼んで動いてもらったんだよ!!ざまあ見ろ、クズっ!!」


 堂々と親に頼み、他人の不幸に乗じて役を奪ってもらおうとしているなんて。

 トゥルーデとシャーロットはもちろん、ドゥールー教徒の園児達まで凍り付いた表情を浮かべた。


 「ドロスス、木の役のあなたが、狼役の代わりができるの??」

 「当たり前だろ、バカ!!虫けらにできることが、俺にできない訳ない!!」

 「できない訳ないって・・・・・・、マジで言ってるの?」


 トゥルーデは呆れて言った。

 役を演じるというのは、ただセリフを言えば良いというものではない。観客が感情移入できるように、心を込めて、役になりきって振る舞う必要があるのだ。

 そのために、トゥルーデ達は何度も練習を重ねてきた。

 特にトゥルーデは、狼に近づくためという別の理由ではあるが、狼の研究をして、よりリアルな演技ができるようになった。

 今更別の役を演じるなど無理なのはわかっているはずなのに、何故このタイミングで?


 「マジに決まってんだろ!!」

 「ドロスス様を舐めるな!!害虫!!」


 先程まで凍り付いた表情だったドロススの取り巻き達は我に返ると、突然彼に同調し始めた。

 トゥルーデは彼らを見て、ため息をついた。


 「何かあの子達と話してると、頭痛くなりそう・・・・・・」

 「よしよし」


 シャーロットはトゥルーデの頭をなでた。

 ドロススはシャーロットの方に視線を向ける。


 「おい、シャーロット。そんな奴の頭なんか放っておけ。それより、俺の活躍を――」

 「トゥルーデ、どうする?」


 シャーロットはドロススを無視して大親友にきいた。


 「うーん。方法は・・・・・・、なくはない!」

 「マジ!?」

 「おい!!無視すんなっ!!」


 ドロススはそう怒鳴ると、トゥルーデとシャーロットのもとに行こうとしたが、彼の前にピーターが立ち塞がる。


 「邪魔だっ!!」

 「邪魔なのは・・・・・・、あ、あんただろ?」

 「あんん!?」

 「あんたはお遊戯会を、じゃ、邪魔してる。自分が狼役になって、好きな子にちやほやしてもらいたいから、皆の足を引っ張ってるんだ。違うか?」

 「てめえええっ!!お父様に言いつけて潰す!!」

 「言えば良い。そしたら僕は、あんたが今朝やってたことをバラしてやる」

 「な・・・・・・っ!?てめえ・・・・・・、いつから!?」


 園児達はざわめいた。

 ピーターが見たドロススの行為とは、一体・・・・・・?


 「ド、ドロスス様・・・・・・?」


 不穏な空気に不安になった取り巻き達はドロススの方をチラチラと見た。

 ドロススは、「フン!」と鼻息を鳴らすと、腕組みをした。


 「・・・・・・もういい。お遊戯会が始まるまでよそのクラスで遊んでくる!!お前ら、ついて来い!!」

 「え!?お、お待ちを!」

 「待って~~!!」


 彼はトゥルーデ達に背を向け、取り巻き達を連れて教室から出て行ってしまった。

 ピーターは、トゥルーデとシャーロットの方を向いた。


 「これでやっと静かになりましたね」

 「う、うん。ありがとう。でも・・・・・・」

 「ピーター、あなた、ドロススの奴と喧嘩しちゃっていいの!?あんなに怖がってたのに」


 彼の身を心配するトゥルーデとシャーロット。

 しかし、彼はそれ以上に2人を、特にトゥルーデのことを心配していた。


 「怖がってばかりじゃダメなんだって、今朝気づいてしまったんです。あんな恐ろしいものを幼稚園に持ち込むなんて・・・・・・!」

 「それ、さっきも言ってたね。ドロススが何かやってたの?」

 「はい。実は見てしまったんです。雑用係として早朝に来たら、ドロススが狼の衣装を切り裂いてるところを」

 「「はっ!!?」」


 トゥルーデ達は驚きの声を上げ、他のキルス教徒の園児達はその異常性に震えた。

 ドロススに置いて行かれた残りのドゥールー教徒の園児達も、引いてしまっている。


 「小さなナイフで切り裂いてました。僕は慌てて隠れてしまい、止められないまま・・・・・・、見てることしかできませんでした。ごめんなさい」


 ピーターはトゥルーデに謝罪したが、トゥルーデは首を振り、彼の手を握った。


 「謝らなくて良いよ!ピーターが無事で良かった」

 「トゥルーデさん・・・・・・!」


 トゥルーデのまぶしい表情が、今のピーターには辛い。

 目から涙がこぼれたので、ピーターはそれを拭った。


 「ありがとうございます。でも、でも、あの時勇気を出してれば、衣装がここまで酷くはならなかったでしょう。だから、怖がってばかりじゃダメなんだって、そう思ったんです」

 「ピーター・・・・・・」

 「あいつは多分、今もナイフを隠し持ってる。今日は、あいつに近づかれないように注意して下さい」

 「・・・・・・わかった!」

 「OK!」


 トゥルーデとシャーロットはうなずいた。

 ピーターからの話が終わると、トゥルーデはパンッと手を叩いた。


 「さて、そろそろ狼の衣装を下ろして、元通りにしちゃおうか」

 「方法があると言ってましたが、それは一体・・・・・・?」


 キルス教徒の園児の1人がきくと、トゥルーデはリュックから裁縫セットを出した。


 「縫う!!それしかない!!」

 「「!!?」」


 周りの園児達は驚いた。

 トゥルーデが裁縫ができるようになったことを、彼らは知らなかったのだ。


 「シャーロット、手伝ってくれる?まずは壁から剥がさないと!」

 「喜んで!!」


 シャーロットは笑顔になり、トゥルーデと一緒に狼の衣装が貼られた壁へ走った。


 「ま、待って下さい!僕もやります!」


 ピーターも、2人の後に続いた。





 数時間後、ついにお遊戯会が始まった。

 ホールでは、それぞれのクラスが出し物を披露していく。

 トゥルーデ達のクラスの番が徐々に近づき、今、隣のクラスが街の創設を基にした人形劇をしている。

 新品の狼の衣装を着たドロススは、取り巻き達と共に舞台袖に立っていた。


 「あー、楽しかったな。さあ、今日は俺が名悪役になる日。全力で俺を支えろよ、お前ら!!」

 「「おーっ!!」」


 ドロスス達は周りの迷惑も考えず、叫んだ。

 何もかも思い通りに進んでいる。

 ・・・・・・誤算さえなければ。


 「こら、ドロスス!まだ隣のクラスが人形劇してるでしょ!」

 「ああ!?」


 後ろから声がして振り向くと、そこにはトゥルーデの姿が。

 何と、今朝切り裂いたはずの狼の衣装を着ている。


 「な、何故!?」

 「うるさい。さっさと自分の役の衣装に着替えてきて。時間がないよ?」

 「ああああああああああ!!」


 ドロススは怒りの声を上げた。

ドロススの陰謀は、早くも失敗しそうです。

しかし、本当にこれで終わりになるのでしょうか?

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