白塔の迷宮⑥
2階の通路で助けた2人組は、ポポロとサーヤという人間の冒険者だった。
ア・タックをかけたけど、サーヤって言う子は意識が戻らない……。
(( バーバラ、血の匂いで魔物があつまってきてる。急いでここを離れたほうが良さそうだよ ))
クロがテレパシーで教えてくれたので
「急ごう!!魔物が近付いてるみたいなの」
「え!!本当ですか!?そんなことも分かるなんて……凄い」
サーヤを抱いたままポポロが呟き、尊敬する眼差しを向けてくるけど、いまは!!
「とりあえず話は後で!行くよっ!!」
クロとバーバラが先頭になり、2階のダンジョンを走り始めた。その後にサーヤを抱えたポポロが続く。地図を頼りに、最短距離で1階を目指す。
血の匂いに誘われてなのか、さっによりも出会う魔物の数が多い。
もう!具合悪い子がいるんだから、ウジャウジャと〜!!早く移動したいのに〜!!
足早に駆け抜けながら、クロの重力魔法と私のシャ・ボンをかけまくりながら、魔物の攻撃を回避して、ひたすら1階を目指した。
後ろからついてくるポポロが、口をあんぐりと開けて呆然としながらも、尊敬の眼差しでバーバラを見ている事なんて、露知らず……。
「ふは〜……。やっと1階についた〜。良かった」
1階に続く階段を駆け上がると、そこは見慣れた草原と青空が広がっていた。
2階の暗闇から目が慣れずに、眩しく感じる。
ポポロの腕の中のサーヤも、顔に光があたり、ヴゥ呻き声をあげ、反応を示した。
「っサーヤ!!大丈夫か?」
ぅ゙〜〜〜んと声をあげ、意識が戻りそうだ。
ポポロは歩行を止め、ゆっくりとサーヤを草原に横たえた。
「………サーヤ!!?」
1階だとしても、一応バーバラは周囲を警戒し、2人を心配そうに見守った。
「っサーヤ!!………良かった」
どうやら彼女は目を覚ましたようだ。良かった良かった〜。
ポポロとサーヤはバーバラのことを命の恩人と言い、今度お礼をさせて欲しいと懇願された。
最初は、別に大した事はしてないしと断ったけど、ど〜しても!!と譲ってくれないので、今度元気になったら一緒にご飯に行くことになった。
2人はバーバラより1つ年上の冒険者で、色んな所に旅をしてる最中らしい。
バーバラが冒険者ギルドのアースガルド所属と分かると、ギルドを通して連絡をくれると言うことだ。
ポポロはサーヤを病院にみせる為、話がまとまるとまたサーヤを横抱きにし、一目散に出口へと駆けていった。
走り去るポポロを眺めていると
((バーバラ。良かったね〜))
「うん。無事に助けられて良かった〜。」
(( 今日はどうする?また3階を目指す? ))
「ん~~………うちらも帰ろっか」
バーバラは、しばらく口元に人差し指を当てて悩んだが、今日はもう帰ることにした。
「ダンジョンがどんな所か見れたってだけで、今日は満足かな。それに3階はパーティー推奨だしね。また今度にしよっか。」
((そうだね〜。帰るにしても……ママさんのお弁当どうする?))
「あっ!!そうだね!………折角だし、それなら薬草摘みながら、ここでピクニックしてから帰ろっか?」
((いいね〜。さんせ〜い!!))
クロがぐるぐると足元を回る。1階の草原と青空が、さっきまでの2階の重苦しい雰囲気を明るく塗り替えてくれる。
◇◇◇◇◇
あれから1週間後に、ポポロとサーヤから連絡があった。
同年代の冒険者と一緒に話すのは大層楽しい時間だった。2人の体験談もとても参考になった。
これから2人は王都に行って、サーヤの義手を作りに行くと言っていたので、ついでにと、バーバラのオススメの武器屋も紹介しておいた。
あれからも何回か会い、すっかり仲良くなった2人の出発を、辻馬車乗り場で見送ったあと、家に帰ろうとしたら呼び止められた。
「バーバラ」
それは……久しぶりに会うバーバラの幼馴染の声だった。
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