白塔の迷宮④ ポポロ
俺とサーヤは同じ村の出身の幼馴染だ。
俺は剣士。サーヤはボーガン使い。
18歳で冒険者になって、初めて挑んだダンジョンが、白塔の迷宮だ。今までは、旅との途中に薬草集めや魔物討伐などしていた。これまで順調にきていた。
正直、ダンジョンを、冒険者というものを、舐めてたのかもしれない。
今までの旅では特に苦戦することもなかったし、村では俺もサーヤも1番の使い手だったから……。
初のダンジョンで気持ちが浮ついてたのかもしれない……。
「もうすぐ3階だ」と2人で地図を見ていた。普段なら周りの警戒を怠らないだろうが、今まで楽勝だったから完全に油断していた。
後ろから音もなく近付いてきていた、キラースネイクの存在に気付くのが遅れた。
気付いて振り返った時には、近距離に迫ってきていた。俺とサーヤが武器を構えると同時に、キバからのシャワーのような神経毒を浴びてしまった。
グㇵっ!!
毒の影響が出る前に、サーヤが反撃のボーガンを放った。矢は大きく開けられた口の中に刺さったが
「ギャシャーーーーー!!」
キラースネイクは怒号をあげ、勢いよくサーヤのボーガンを持った右手ごと、カブりと噛みついた。
「キャーーー!!」
絶叫したサーヤを、離さないとばかりに咥えたまま振り回し始めた。
「サーヤ!!!」
俺は剣を大きく振り被り、キラースネイクを斬りつけたが、キラースネイクの表皮が硬いうえに、毒で段々と上手く力が入らない。
「サーヤっ!!、こんのぉぉ~~!!」
俺は、痺れ始めた体に鞭を打ってキラースネイクを斬りつけると、キラースネイクがサーヤを高々と放り投げる。
「!!!」
キラースネイクがニヤッと笑った気がした。
俺は敵が目の前にいるのに、サーヤに視線をとられ上を向いてしまった隙に、牙が俺の肩に食い込む。
「ぅグっっ!!」
しまった!!
すでに毒で動きずらいのに……怪我まで
それでもっ!!サーヤを助けなければ!!
放り投げられたサーヤを、キラースネイクは蜷局を巻き、そこに捕らえた。
サーヤはグッタリとして意識がないようだ。
なんとか早く助けなければ!!
どうにか片手で剣を構え、キラースネイクを睨み見据える。相変わらず、余裕そうなキラースネイク。まるで、そろそろ毒で動けなくなるのを待ってるみたいだ。
クソっ!!動けっ!!体っ!!
毒で意識も朦朧となってきたが、俺がここで倒れたら……俺も、サーヤもキラースネイクの餌になるだけだ!!
すると背後から、駆け寄る足音が響いた。
『ア・タックーー』
他の冒険者かっ!!??
突然目の前がキラキラと光り始め、全身が光りに包まれたと思ったら……
お、おい。………嘘だろ?…………痛みも、痺れもなくなって、体が軽い。さっきまでの自分と嘘のように違う。……回復魔法なのか??
ま、まさか……聖女がこんな所に?!!!
タッタッタッ、軽やかな足取りで横に並んだ彼女。後にバーバラという名前を知る。
獣人っ!!?
今、俺を助けてくれた聖女が??どっから見ても冒険者にしか見えないが……
しかし……彼女以外に他に誰も見当たらない。
「ギャシャーーーー!!」
新たな敵にキラースネイクが威嚇をした。
はっ!!そうだ!!今は考えるのは後だ!!
キラースネイクをいち早く倒し、サーヤを助けなくちゃ!!
「クロ!いくよ~~!!」
獣人の彼女が駆け出すと、彼女の脇から黒い仔犬も一緒に飛び出した。
っ!!!真っ黒の魔物の仔犬??
いけない!!何よりも今は、サーヤだっ!!
俺も一瞬出遅れたが、両手で剣を持ち直し
「うぉぉぉぉーーー!!」
キラースネイクに向けて駆け出した。
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