帰り道
いよいよ王都から帰る日がきた。
最初はどうなるかと思っていた王都生活だが、王都の魔物研究所での生活は、バーバラにとって、とてもいい経験になった。
何だかんだと王都では、ナバル様や武器屋のダルジアンさんなど、知り合いも出来た。
ゴブリン討伐の後、ギルドに報告した帰りに、新しいダガーの使い心地を伝えにお店に顔を出したら、ダルジアンさんに、武器とはなんぞやという長い講義を散々聞かされ、バーバラが真面目に聞いていたら、すっかり気に入られてしまった。
気づけば、以前から愛用してるダガーも、新しいものと一緒にメンテナンスしてくれることになっていた。
冒険者ギルドに、ゴブリンとゴブリンロードの討伐の話をすると、王都近くにゴブリン集落があったことに衝撃を受けていた。
王都には出入りする訪問者が多いため、もし気付くのが遅かったら、多大な被害の可能性もあっただろうと……その前にバーバラが討伐したことに対し、賞賛の言葉を貰い、そしてソロでゴブリンロードを倒したならと、F級からE級に昇格してくれた。
マゼリン草の他に、ゴブリン討伐の報酬も貰い、バーバラの懐はヌクヌクにだ。
王都に来れて、本当に良かった〜。
今回は研究の為の王都訪問だったけど、いつか王都を拠点に活動出来るぐらい、もっと冒険者として安定して稼げるくらいまでに強くなりたいなぁ〜。
王都最後の日は、日中はダルジアンさんにお別れの挨拶をし、夜にはナバル様と一緒に王都のレストランで食事をとった。
この2人にとってバーバラは娘のような存在なのだという。
とくにダルジアンさんは、年齢不詳なドワーフなので、もしかしたら…ひ孫どころか、ひひ孫くらいかもしれないけど……。かなり年上だろうし、尊敬の念でダルジアン様って呼んだら、背中がムズムズするから止めてくれと怒られた。
本当に、この2人には王都滞在中、とてもよくして貰って、感謝ばかりだ。いよいよ帰るってなると、少し寂しく感じる。
帰りも魔物研究所から馬車を出してくれることになっている。
「バーバラさん、クロ様。こちらの研究にお付き合い頂き、本当ご協力感謝します。今回の研究結果をまとめたら、大々的に発表したいと考えてます。その時は是非とも参加して貰えればと。それに、また王都に来る時には、遠慮なく顔を出してくださいね。なんなら研究所に滞在してもらっても大丈夫ですからね」
そう言って、お見送りに来てくれたナバル様から、クロには大量のジャーキー、グリモにはアーモンド、私にはアースガルドのギルマスに渡す書類を渡された。
「こちらこそ、ありがとうございます。研究も、王都での生活も、すごくいい経験になって、楽しかったです。ナバル様にはお世話になりました」
バーバラはお辞儀をしたあと、改めてナバル様と別れの握手をして、馬車に乗り込んだ。帰り道は騎士団とは別々になる為、行きよりも静かな旅になりそうだ。
結局レオンとは、あの王都の街に出かけただけで会えていない。騎士団も色々忙しいんだろうな。
◇
「グリモは研究所から出るの初めてだよね。私の故郷の獣人の街も、王都と比べると小さいけど、みんなフレンドリーで、とっても優しくていい所だよ〜。安心していいからね」
ガタガタと揺れる馬車の中で、グリモはバーバラの膝の上に、クロは足元に、それぞれバーバラにくっついて丸まっていた。おかげでヌクヌクで快適である。
『バーバラのママさんの料理、美味しいんだよ〜……はやく食べたいなぁ〜』
『へぇ〜いいわね。わたしは、はやく可愛いリボンが欲しいわ〜』
「リボン?グリモ何に使うの?」
『だって、この眷属証明のタグ、ただの黒革の紐で可愛くないんだもん。ゆるせないわ〜』
どうやら、グリモの美的観念に、クロとグリモの首にかかっている革紐は引っかかるみたいだ。
「それじゃ〜後でお店を見て回ろうね」
『うふふ。たのしみだわ〜』
馬車の旅は、クロとグリモと楽しくおしゃべりしていたら、あっという間に故郷に着いた。
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