魔物研究所
魔物研究所にはいくつかの部門に分かれているそうで、魔獣系、魔蟲系、水魔系、緑魔系、魔竜系……それぞれ得意の分野によって配属が決まる。
そしてナバル様のように、レジェンド魔物を専門に研究している特別部門もあるそうだ。
今日もナバル様の後ろを、クロを抱いて施設内を歩いてるだけで、すれ違う人々がビシっと固まってしまう。最初は慣れなかったが、数日過ぎた今じゃ、もう見慣れた風景みたいになった。
( 私たち怖くないのにね~~ )
(( いい子なのにね〜 ))
やはりグランドウルフっていうレジェンド級の魔物は脅威に値するみたいで、最初は恐怖で腰を抜かし、泣き出す職員もいれば、逆に好機なチャンスとばかりに、初期のナバル様みたいに隙あれば狙ってくる職員もいて、様々だった。
1人勇敢な職員が制止を聞かずに、クロを触ろうとしたので、案の定……電撃魔法が落ちた。
それをきっかけに、クロは幼い見た目でもレジェンド級だと噂が噂を呼び、なぜか今ではクロを眷属にしてるバーバラに対しても、畏怖の対象として恐れられている感じだ。
それに加えてナバル様は、レジェンド級が如何に凄いのかをあちこちで熱弁するから、……やっぱりクロと私への畏怖の念がどんどん強くなっていくのである。
(まぁ……クロは認めた人にしか懐かないし、変に近付いて来られても困るから、これぐらいの距離が良いのかもしれない)
ナバル様の足が一つのドアの前で止まり
「ここが私の研究室です。どうぞ。」
中に入ってみると、そこは左右の壁一面が本棚になっており、難しそうな本がずっしりと詰まっていた。
研究の最中なのだろうか、中央にある大きな机の上には大きな地図、何やら印が記載されている。
到着して数日は旅の体調を整えて、今日からいよいよ本格的なクロのデータをとることになっている。
どんな事をするのか、不安であるが、決してクロの嫌がることはしないと約束してくれた。
まずは鑑定を改めて行いたいと言う。今日は鑑定士の代わりになる、鑑定眼鏡をナバル様が装着した。
鑑定眼鏡……とても貴重な物で、市場には出回らないって聞いている。
(やはりナバル様って凄い方なのね。普段の魔物ヲタクっぷりを見ていて忘れてたけど、ここの所長をするくらい優秀ってことよね……)
「それでは、いきますね」
眼鏡にあるスイッチを押す
鑑定発動『ファイ・リング』
名前︙クロ(命名・バーバラ)
種族︙グランドウル(聖獣)
年齢︙250
魔法︙水魔法、風魔法、電撃魔法、灼熱魔法、氷魔法、闇魔法(暗視)、古代魔法(重力)
スキル︙肉体強化、認識阻害、威圧、変幻、闘争バースト
状態︙聖獣変化(眷属・バーバラ)
「ファーーーーーー!!!!」
両手を頬にあてムンクの叫びみたくナバル様が叫びだした。……ビックリしたよ〜。
「クロ様っ!!ギルドから報告を受けてましたが…魔法も然り、スキルも凄い!!それに……聖獣?これは……バーバラさんの眷属になってですか?」
『ギャウギャウ』
そうだとばかりに、返事をするクロ。
ん~~、顎に手をあててと考えこんでいたナバル様が、バーバラの瞳を真っ直ぐ見て、
「…………バーバラさん。もし可能ならバーバラさんも鑑定してもよろしいですか?もちろん個人情報なので、拒否してもらっても大丈夫です。もし可能なら契約も行います。」
魔物や品物に関してはそこまで鑑定することについて厳しくはないが、個人に対してだと基本的には禁止されている。但し、本人の承諾を得れば可能だ。
ナバル様は、それをふまえた上でもバーバラを鑑定したいと言ってきた。
ナバル様とは、数日だが一緒に行動して、決して契約を破る人ではないと分かっている。
バーバラはきちんと契約を結んでくれるなら、鑑定してもいいと答えた。
「ありがとうございます。バーバラさん」
ナバル様は深くお辞儀をして、感謝の意を表した。
「では、いきますよ」
鑑定発動『ファイ・リング』
名前︙バーバラ・リドル
種族︙獣人(豹)
年齢︙18
スキル︙洗濯 (シャ・ボン)(ア・タック)
サブスキル︙(シトラス)
状態︙聖獣眷属(グランドウルフ︙クロ)
「…………バーバラさん。貴方のスキルって、洗濯なんですか?」
ポカンとしてるナバル様は初めてみた。
「……はい。」
「……バーバラさん。もしかしてですが、……クロ様を洗濯したんですか?」
「……クロを洗濯っていうか……そうですね………はい。……洗濯スキルを使ったら…………懐かれたというか………いつの間にか眷属になってまして……」
なんて説明したら良いものか……とぎれとぎれに歯切れ悪く答えるバーバラであった。
「………洗濯」
口が開けたまま放心してるナバル様……戻ってきて〜〜!!気持ちは分かる。分かるけど〜!!
誰だって、レジェンド級の魔物を眷属するスキルが洗濯?って思いますよね〜!!!
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