スキル授与
( おぬしは強さを求めるか……そんなおぬしには……これがよかろう。 )
帽子が告げたのは………。
『 洗濯スキル 』
( えっ!!意味不明なんだけど!??ちょっと!どういうことですか? )
どこが強そうか皆無のスキルでバーバラは若干パニックだ。
( 上手くやれば最強だぞ )
帽子がニヤリと笑った気がするが、スキルについて詳しく教えてくれる気はないみたいだ。
( えっ!!最強って??洗濯が?? )
(………………………)
( ねえ!ちょっと!それだと困るんだけど!ねぇってばーー??)
(…………………………)
いくら呼びかけても、これで終わりってことなのか、もう帽子が返事をすることはなかった。すると帽子を外され、次の人の順番になってしまった。
どうしよ……。これって強いスキルなの?冒険者になるのに、洗濯とか必要ないのに、本当困るよー。
そうこうしているうちに、気付くと無事に卒業式は終わっていた。自分のことが精一杯で、スキル授与の後の記憶があまりない。結局レオンが何のスキルだったのかも既に終わっていて分からずじまいだった。
卒業式が終わり、各クラスの話が終わって解散となった。ここからは自立した成人となる。一気に大人の仲間入りだ。学生気分は今日でおしまい。今後は気合いを入れて自分で生活していかなければ……。
後でレオンにスキルについて愚痴りたいが、レオンは今、校庭で後輩やら何やら女性陣に囲まれていて、話が出来る状態ではない。そういえばレオンって女子生徒から人気があったもんね……。
獣人っていっても、耳と尻尾など種族の特徴がある位で、あとは人族とあまり見た目は変わらない。ただ、種族独自の力を使うと瞳が変化する。例えば猫科だと瞳孔が縦長に変化するなどだ。
レオンは獅子の獣人だけあって、体格はガッシリと男らしく、身長も高い。いかにも鍛えてある巨体は、強さを重要とする獣人社会では人気がかなり高い。それに瞳は金色に輝き、金髪でキリッとした整った顔をしている。
かくゆう私は豹の獣人で、スラッとした手足は皆に褒められるが、女性らしさの凹凸はなく、オレンジの髪を肩まで伸ばしていなければ、女性とは思われないかもしれない……。グラマラスな母に似れば良かったのだが、遺伝しなかったのが悔やまれる。顔もいたって平凡で、いつも顔の良いレオンの隣にいると、申し訳なく思ってしまう。そんな私が卒業したら誰かのお嫁さんになる将来とか考えられないし、実際にモテた試しもない……。
卒業したらまず冒険者として登録し、強さを追求しながら世界中を旅しようと考えていたが、貰ったスキルは『洗濯』である。結婚して家事や育児をするのなら大変役立ちそうなスキルだと思う。しかし、どこをどうしたら最強だなんて……あの帽子め。もっと違うスキルが良かったなぁー。これからのことを考えると憂鬱になってしまう。
バーバラはレオンをチラっとみるが、まだ解放されるまで時間がかかりそうなので、いつも下校時に寄る「たい焼き屋」の前にある公園で待つことにした。
「おじちゃーん、たい焼き1つちょうだーーい」
「おうよ。バーバラも今日で卒業かー。おめでとうよ。今日はオマケしてやらぁ。ほらよっ。」
「やったーーーー。ありがとう。おじちゃん」
たい焼きを卒業祝いに貰って少し気分が上昇したバーバラは、食べながらブランコに座り、足をブラブラさせながらレオンを待っていた。
「………おまえ。卒業式の日でも食うんだな。」
いつの間にかやってきたレオンは少し呆れた顔をしながら、隣のブランコに腰掛けてきた。
「今日はオマケして貰っちゃったーうへへ。」
嬉しそうに食べるバーバラをみて、もっと呆れた顔になったレオン。
「そうだ!!レオンってなんてスキルだったの?私のなんて『洗濯』だよ!!それなのに最強になるとか帽子に言われてさー。冒険者に要らないスキルだよー。ほんとさー困るよねー。……で??レオンは??」
「俺は『5次元』って言われた。」
「はっ??『5次元』??何それ?」
「俺もわからん。」
レオンのスキル『5次元スキル』は今まで授与された人がいない、初めてのレアなスキルだった。そもそも安全かどうかも分からないので、後日に結界を用意してくれるので、その結界内でスキル発動することになったらしい。それまで勝手に自分で使ってはいけないらしい。
レオンのスキル……レアスキルとかカッコイイなぁ。神様はイケメン好きなのだろうか。
とりあえず洗濯より強そうだ。……羨ましい。
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