魔物撃退
(えっ!!魔物!!)
馬車の外をみると、大型のグリズリーが3体と騎士団が交戦していた。
ナバル様曰く、グリズリーは森に住む大型の魔物で体長3〜4メートルあり、獰猛な肉食で、鋭い前足の爪が金属も貫く程の硬さと威力があるという。
バーバラも実物をみるのは今回が初めてだ。
4人いる騎士の1人が馬や馬車を守っているので、ほぼ一対一の戦いを強いられている。グリズリーは大柄で力も強く 左右から爪で攻撃がくるので、剣での攻防は力で押されている感じだ。鋭い犬歯を剥き出しに、今にも隙あらば食い千切ろうとする気迫が凄い。
「私も応戦したほうがいいよね!人手があったほうが有利だし!!」
(( クロが倒そっか〜?? ))
「え?クロも一緒にいく?」
『ギャウ』
「クロ様も参戦されるのですか?」
外は緊迫した戦闘中なのだが、ナバル様はクロの戦いがみれるとあって、目を輝かせ、頬を高揚させて喜ぶ様子が隠しきれていない。鼻息荒く、おもむろにペンとメモ用紙を取り出し、準備万端である。
「い、いってきます」
そんなナバル様の様子に若干ヒキながら、クロとバーバラは馬車の外に飛び出した。
護衛対象の馬車からバーバラが出てきたので、1人馬車の手前を守っていた騎士が一瞬ビックリした顔を見せたが
「私も冒険者です。参戦します」
「助かる」
そう言って、クロと駆け出した。
「クロ!さっき倒すって言ってたけど何かいい手はあるの?」
(( 重力操作魔法で、魔物の動きを封じるから、その間にやっつけてー ))
「わかった!!」
(( いっくよ〜 『グラビオ』 ))
ズン!!
私とクロ以外の、魔物と騎士達がグググッっと上から押さえつけられているように、一気に動きが止まった。
何がおきたのか分からず、騎士も魔物もパニック状態である。なんとか動こうと藻掻いているその間を、縫うようにダガーを持ったバーバラが、グリズリーを一体ずつ確実に仕留めていく。
3枚目のグリズリーを倒すと、バーバラの目の前にステータスがオープンされた。
〈 レベルアップ 報酬︙シトラスの香り 〉
(レベルアップしたーー!!!それに報酬も~~嬉しい!!………けど、シトラスの香りって??)
『スキル発動』
◎サブスキル(シトラス)︙集中力アップ。会心の一撃の確率があがる。
(おぉ〜!!新しいの増えた〜!!レベルアップすると、報酬が貰えるの凄い!!)
レベルアップして、バーバラが新しいスキルに興奮していると
「おい!バーバラ!この状態を何とかしろ!!」
レオンに声をかけられて、まだクロが魔法かけたままなのに気づく。レオンは膝をつくように、中腰のまま動けずにいた。
「あ!!ごめん〜。クロ!ありがとう〜。もう大丈夫だよ〜」
『ギャウギャウ~~』
魔法を解いた後、バーバラの足元に頭を擦り付けながら、撫でろと要求するクロは大層可愛い〜。
「よしよし。クロが居てくれたから、簡単に倒せたよ〜ありがとう。」
クロの頭をなでなでしながら癒されていると、討伐の後始末を終えた騎士達が集まってきた。
「助かったが、ビックリしたから、次からやる前に声を掛けてくれ。」
ハッハッハと爽やかにダグラス副隊長が笑う。
「すみません、今度から声かけますね」
「さっきのは、このグランドウルフが?」
「はい。重力魔法を使って敵の動きを封じる作戦でして……」
まさかバーバラ以外の全てにかけるとは、思っていなかったので、動けなくして申し訳なく思う。シュンとしたバーバラに、ダグラス副隊長は元気よく
「重力魔法とは……やっぱりグランドウルフは凄いなぁ〜。ハッハッハ」
『ギャゥーーー』
褒められて調子にのっているクロも可愛い……。
もっと褒めてくれてもいいんだぞと、グリグリと頭を押し付けてくる。誇らしげにしている顔が、なんとも可愛い。
「ここが片付き次第、今夜の宿の街まで急ぎましょう」
「はい」
魔物の後始末は、騎士達に任せてくれとのことだったので、クロとバーバラは馬車に戻った。
ガリガリガリガリ、…、…一心不乱にメモにペンを走らせているナバル様がいた。ブツブツ言いながら何か書いている。
私とクロが馬車に帰って来るや否や、ギン!!っとした目を光らせ、メモ片手に迫ってくる様は、さっきのグリズリーの迫力とは違った迫力があり、クロもバーバラも、たじたじになった。
そしてクロは(( ぼく寝る〜 ))と、そそくさとバーバラに任せて、ナバル様の質問攻撃を回避したのである。
(クロ〜!!ずる〜い!!)
狭い馬車のなか、その質問会は宿に到着するまで続き、バーバラは馬車から降りる頃にはグッタリとしていた。
お読み頂きありがとうございます。
…すみません!年度末…!本職がバタバタしていて、不定期投稿になりそうです……申し訳御座いません。
出来るだけ更新してきますので、今後ともよろしくお願いします。