ギルマスからの依頼
「それでな、嬢ちゃん。ナバル様と一緒に、グランドウルフを連れて、王都まで行って欲しいんだが、どうか頼まれてくれないか?」
「お、王都ですか!!?」
「あぁ。流石に眷属の魔物を取り上げる訳にもいかねぇし、まだ幼体とはいえ、レジェンド級の魔物を直接見れるチャンスはまたとないからな。主人であるお嬢ちゃんと一緒に、王都まで来るようにって要望だ」
「バーバラさん。グランドウルフは殆ど実態が分かっていない魔物です。決してバーバラさんにも、グランドウルフにも危害を加えないという契約で、どうか一緒に王都まで来て頂きたい。」
ナバル様がガバリと腰を降り、テーブルに額がつくんじゃないかと思う程、頭を下げて懇願された。
「わわわ~~ナバル様、頭を上げてください~~。わ、分かりました。王都に行きますから~~」
「本当か!!!!」
勢いよく状態を起こし、ガシっと両手を握られブンブンと揺らされながら「ありがとう、ありがとう」と、凄く感謝された。
「王都までの旅費はギルドから出すから心配するな。ギルドからの派遣の仕事だと思ってくれ。出発は3日後だ。とりあえずこれで出発の準備をしておいてくれ」
ジャラリと音がする革袋を渡された。
「ただし!!後で領収報告だせよな」
「わかりました!ありがとうございます」
準備金も旅費もギルドもちの好待遇に、不安はあるものの、初の王都訪問が楽しみになってきた。
「俺達はこれから細かい打ち合わせをするから、バーバラは早速準備をしてくれ。」
「バーバラさん。本当にありがとうございます。」
ナバル様が本当に嬉しそうに、最後にまたお礼を言ってくれた。
後で聞いた話だと、魔物マニアにとって、レジェンド級のレアな魔物に会えることは、宝くじに当たるくらい、一生にあるかないかの奇跡に近い話なんだとか……みんな涙を流して喜ぶだろうということだ。
バーバラは折角ギルドに来たし、前回討伐報告が出来てなかったので、ギルド受付にカードと一緒に討伐証明のホーンラビットの宝玉を出した。
「確かに承りました。クエスト完了です。カードに6ポイントを授与しますね。クエストポイントが200貯まると、次のEランク昇進テストが受けられます。頑張ってくださいね。宝玉5つのうち、3つはクエスト報告として頂きますが、残り2つはお返しします。裏のカウンターで買取もしてますよ。」
カードと宝玉2つを受取り、早速買取カウンターへと行ってみることにした。
そこには、糸目のキツネの獣人がいた。
「いらっしゃいませ。今日はどんなものを?」
「えっと、…ホーンラビットの宝玉2つお願いします」
「どれどれ…………」
片眼鏡をつけて宝玉を鑑定し始めた。
「2つで銅貨50枚ですね」
(ていうことは、ホーンラビットの宝玉4つで銀貨1枚になる。冒険者登録に銀貨3枚したから、元を取り返すぐらい稼がなきゃ!!)
この国のお金は銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚に相当する。因みにバーバラが大好きなたい焼きは1つ銅貨2枚だ。
(自分で稼いだお金って初めて…嬉しい!!旅の準備もあるし、買物がてら初クエスト記念品、買っちゃおうかしら)
「まいど~~」
バーバラは売り上げ金を冒険者カードにチャージしてもらい、ルンルン気分で街に買物に繰り出した。
◇
王都に行くにあたり、片道5日間、移動だけでも10日かかる。向こうに何日いるかは分からないが、衣類やら日用品、薬草、ポーション、色々持って移動となると大変だ。
遠出をする時は、荷物を収納できるマジックバッグが必須だが、バーバラはまだ持っていなかった。まずはマジックバッグを探して、魔道具屋に足を運んだ。
(マジックバッグ……一番容量が小さくて銀貨6枚かぁ。必要経費だって分かってるけど、ギルドのお金でも、こんな大金を使うの緊張する〜)
ギルド長から貰った革袋の中には銀貨10枚入っていた。半分以上このマジックバッグでなくなるが、残りのお金でやりくりすれば、銀貨4枚あれば充分だろう。
その後は、旅で必要なものを買ってはバッグにいれる。もちろん!!クロのご飯にオヤツも忘れずにね!!
(えっと………これで大体揃ったかな?)
ふと道すがらショーウィンドウに並べてある宝石が目に入った。気になって吸い寄せられるように店に入ると、そこにはネックレス、イヤリングやピアス、指輪や腕輪などのアクセサリーがずらりと並べられていた。
どれもキレイに輝く宝石が使われており、色とりどりにキラキラと輝いている。
(キレイ……)
バーバラが目にとまったのは、黄金に輝くブローチであった。まるでレオンの瞳みたいだ……。
ジッと見ていると、後ろから恰幅が良い狸の獣人の店員が声をかけてきた。
「お嬢ちゃん。それはトパーズといって、「成功」「希望」っていう言葉が込められてるんだよ」
「おじさん……コレ」と気になってたブローチを指差すと
「それは銀貨4枚だな」
「えっ!!そんなにするの??」
「宝石は石の大きさやデザインで値段が変わるんだよ。」
そうなのか……普段あまり装飾品をつけないバーバラにとって初耳だった。大きさで値段も違うならと、割かし小ぶりの宝石のネックレスにしたが
「これは………」
「これは銀貨1枚だ」
「………………これより安いのありますか?」
「……お嬢ちゃん。そもそも予算はいくらだい?」
「………銅貨50」
「!!!お嬢ちゃん。銅貨で宝石は買えね〜よ。イミテーションのヤツならそれぐらいで買えるぞ。」
バーバラが見ていたショーケースとは違うところから、イミテーションのものを出してきた。
しかし本当と比べると、輝きが異なり、隣に並べると玩具みたいにみえる。
「う〜〜ん……」
腕を組んで悩み始めたバーバラに
「お嬢ちゃん。今回どうして買おうと思った?」
「それは…さっき初給料が入って……その記念にと……」
「………なるほど。いくら貰ったんだい?」
「……銅貨50です」
「お嬢ちゃん。給料は全額使うもんじゃない。いいかい?使う前に少しでいいから先に貯金することが大事だ。………それに人にやたらと、所持金を教えてはダメだ。騙されてもってかれちまうぞ。」
まさに目から鱗であった。バーバラは素直に頷くと、きちんとお礼を言った。
するとニヤリと狸の店員が笑い、また別の所から何やら持ち出してきた。
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