シャ・ボンの威力
「レオンー。いるーーー??」
バーバラはクロを連れてレオンの家までやってきた。
「あら〜、バーバラちゃん。おはよ〜。ごめんなさいね〜レオン、騎士団の訓練にいっちゃったのよ。まだ入隊前の春休みだっていうのにね〜。夕方には戻るわよ〜。」
レオンのお母さんは人族で尻尾も耳もないが、レオン曰く、怒ると騎士団長のお父さんより怖いらしい……。
「おばさま、ありがとう〜。また出直すわ〜。」
レオンに自分の『洗濯スキル』のこと、初討伐のこと、クロのこと……話したくて、うずうずしていたバーバラは肩透かしを食らってしまった。
(レオン、練習行ってるんだぁ。騎士団に入るとなかなか会えなくなっちゃうよね……残念だけど、仕方ないよね……。それなら、スキルの検証しよっかな!!)
「ねぇ。クロ、これからスキルの練習するから手伝って」
『いいよー。』
今日のクロはバーバラの横をちょこちょこと歩いて着いてきていた。
バーバラ自身、自分のスキルについては、あまり人に知られない方がいいのではないかと思っていて、人目がない方がいいだろうと人気がない場所に移動した。ついでに、クロの好物だというウルフベリーが採れる場所なので帰りに採って帰ろう。
まずは……『スキル発動』と頭のなかで唱える。
◎ア・タック︙穢れや不純物を取り除く。
◎シャ・ボン︙物体を泡膜で取り囲む。
『ア・タック』の穢れはただの汚れだけじゃなく、魔物に使うと浄化されて聖獣になった。不純物も体内の悪いものが全て取り除かれ、疲労や病も治る。
『シャ・ボン』は強度の膜が3分間でる。
今日は、シャ・ボンを調べてみよう。昨日咄嗟に使ったけど、戦闘中にかなり有効そうだ。
どのくらいの強度なのか…
「クロ、これから私スキルでクロの周りに膜を張るから抜け出せるか、中にから色々試して貰える?」
『いいよ~~』
「じゃーいっくよーー。『シャ・ボン』!!」
クロは自分の周りの膜を不思議そうにぐるりと眺めたあと、まずは爪と牙でガリガリとしたが、膜に変化がなかった。それならばと、肉体強化スキルを使うと体型が大型犬くらいに大きくなり、大きな爪と牙でもビクともせず、体当たりをしても、ぷよぷよしてるだけだ。
すると、中にパチパチと電気が飛び散るように炸裂した。きっと昨日の電撃魔法を使ったのだろう。それでも膜は破れない。今度は氷魔法なのか、中側がピキッと凍り始めた。そこにまた攻撃を加えるが変化はなかった。
きっちり3分間たつと、膜はパッと消えていた。
『バーバラ〜。クロ頑張ったのに〜……これ壊れないよ〜。』
シオシオと耳と尻尾を垂れるクロの姿は哀愁を漂わせ、そんな姿も愛らしさを感じる。
「クロ。ありがとうね〜。クロでも破れないって相当凄いってことよね〜」
電撃魔法でも、
今度は私自身にシャ・ボンをかけてみる。
「クロ。今度は私が中に入るから、外から攻撃してみてくれる??」
『分かったー。バーバラに当たらないようにする〜。』
「よし!!やってみるからお願いね〜。」
私は自身を意識して、呪文を唱えると
『シャ・ボン』
見事に私を取り巻くように膜が出来た。中からプニプニと触ってみるも割れない。何だか不思議な感じだ。
『いくよ〜』
クロが合図をくれたので、一応膜が破れてもいいように、私も戦闘態勢の姿勢をとっておく。
クロが肉体強化を使ってもやはり壊れない。ピカピカと光って稲妻が当たっても大丈夫だった。中から綺麗だな〜って見れる余裕もある。
つまりは………最強の結界にもなるってこと!!!
………そろそろ3分間だ。
「クロ〜。そろそろ止めて〜。」
『は~い。』
膜が消えると、やっぱりクロはショボンだ。膜を破れないのが悔しいらしい。
「クロって凄く強いのに、どうして昨日ホーンラビットにやられてたの?」
『あれは!!ホーンラビットにやられたんじゃない………。双子の兄にやられたんだ……』
「え?お兄ちゃんに??」
『……僕たちは種族でも珍しい、双子だったんだけどね……、弱い奴はいらないって……どうにか逃げてきって、力尽きた時にホーンラビットに……、そしたらバーバラに会えた』
「………………」
(じつのお兄ちゃんに………………つらいわね)
思わずクロに駆け寄り、ギュ~~~~っと強く抱きしめた。