クロのレベルアップ
『クロって〜。名前つけてくれてありがとう〜。』
突然、少し高めの幼児の独特の声がした。
「あれ?声が??え?………クロが、しゃべってる!??」
目をパチクリとして、声の発生源をみる。
『クロね〜。おしゃべりできて、うれしいよ〜。ご主人のお名前おしえて〜。』
さっきまでキャンキャン鳴いていたのに……!!
バーバラはビックリしすぎて思考回路が追いつかず、少し間をとってから答えた。
「………………………バーバラだよ」
『バーバラ〜。バーバラ〜。すき〜。』
嬉しそうにする姿に、反射的にデレデレになってしまうバーバラは、クロがしゃべってる不思議も忘れて、思わずクロの頭をよしよしと撫でる。
「クロ可愛い〜〜」
『えへへ。クロね〜。バーバラが名前つけてくれたから眷属レベルが上がったの〜。』
「名前を、つけたから??」
『そうだよ〜。眷属レベルが上がっていくと、もっと色々できるんだよ〜。例えば!!バーバラと同じ獣人に擬態とか』
「え!!!!獣人にもなれちゃうの??」
『眷属の相手と同じ種族に擬態できるようになるんだよ〜』
「クロ。すごいね!!!」
『そうでしょ〜。クロってすごいでしょ〜。褒めてぇ〜』
と頭をグリグリと擦りつけて撫でを要求された。
うん。可愛い〜。
「クロ、もうすぐ家につくよ。家には私の父と母がいるんだよ。2人とも優しいから、クロのことも可愛がってくれると思うけど……。まずはクロのこと、ちゃんと説明しなきゃね!!」
『バーバラの家族なら、ボクの家族〜』
「そう、一緒に暮らすんだもん。クロも家族だよ〜。……そういえばクロのご飯ってどうしよう!!……クロはどんなもの食べるの??」
『ん~~何でも食べるけど、1番好きなのはウルフベリーだよ~。あとは…肉も好き。』
「ウルフベリー……クコの実のことね!!分かったわ。教えてくれてありがとう〜。」
一人と一匹でお喋りしながら帰宅すると、思っていて以上にあっという間に自宅に到着した。
ガチャリとドアを開け、「ただいま〜」と元気よくバーバラは家の中に入った。
「おかえりなさい。まだ夕飯までに時間あるから、お風呂入ってきちゃいなさい。」
母がキッチンからエプロン姿で出てきた。夕飯の準備の途中だったみたいだ。
「父さんは?」
「まだお仕事よ」
「ふーーん。そうだ!!母さん!!今日からこの子を家に置いてもいいかな?」
ズイッとクロを持ち上げて、母にみせた。
「あらあら〜可愛いワンちゃんね〜。どうしたの?」
「今日、弱ってたところを『ア・タック』を使ったら懐かれちゃって、一緒に連れて帰ってきたの。名前は『クロ』って言うんだよー。」
「そうなのね〜。クロちゃんっていうのね〜。」
そう言って母がクロを撫でようとしたので、私は慌てて、その手から避ける。
「触っちゃダメ!!」
「???………ダメなの?」
母が目をパチクリさせ、キョトンと首をかしげる。
『バーバラ。大丈夫だよ〜。家族に攻撃なんてしないよ〜。クロはね〜、認めた人以外はイヤなだけなの〜。』
「!!!!しゃべった!!!!!」
そうなんです。うちの可愛いクロちゃんは優秀だからしゃべるんですよぉ〜。ちょっと得意気な気持ちになったバーバラ。
『バーバラのママさん。今日からお世話になります〜。』
「………………………バーバラ。私おかしいのかしら?犬がしゃっているわ……。」
「あー。んーーーーと。話せば長いんだけど………私との眷属レベルがあがって、話せるようになったみたいなの。私も最初ビックリした……」
「……、そういうもの…なの?」
『クロね〜、バーバラが助けてくれて、バーバラ好き〜って眷属になったの〜。』
「ただいま〜」っとちょうど帰宅した父も、クロをみて固まってしまった。
◇◇◇
(ふぁ〜、今日も色々あったなぁ〜。明日はギルド活動も出来ないし、クロを連れてレオンのとこに顔だしてみようかな……)
バーバラはベッドに横になり、左にはお気に入りの縫いぐるみ、右にはクロを抱きながら、ホクホクした気分で、いい夢が見れそうと、欠伸をした。
「おやすみ〜クロ」
『おやすみ〜』
そうしてバーバラの冒険者の1日目が終わっていったのである。
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