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はじまり

新連載はじめました。

よろしくお願いします

そこは獣人が普通に生活している村だった。

ある豹の獣人夫婦に1人の可愛い娘が授かった。名前はバーバラ。


 幼い時期は、甘ったれで引っ込み思案な性格をしていたが、大きくなると男勝りな活発な娘へと成長していった。


「バーバラ!待ちなさい!!」

「うへ〜。止まれませーん。」

 今日も教師の制止も聞かずに、全然反省の色が見えないまま廊下を駆け抜けていくバーバラの姿がある。もはや日常の風景で、他の生徒達は気にも止めず、寧ろ煽っている。

「いいぞー。バーバラ。逃げ切れーーー。」

 すれ違いざまに声をかけられる始末。ヒューヒューと野次馬が声をかける。


 颯爽と駆け抜ける姿は靭やかで、誰にも捕まえられない速度で廊下を抜け、校庭へと躍り出た。


「いざっ勝負!!」

 目の前には、獅子の獣人のレオンがいる。ちょうどレオンが帰宅するところに追いついた。レオンとバーバラは幼馴染みであり、親友であり、良きライバルでもある。


「懲りないな。これで56回目だぞ。何回やっても結果は同じだというのに………しつこい。」

 レオンはしれっと返事を返し、心底面倒くさそうな態度である。バーバラをチラっと見ると、ハァ〜っと大きなため息をついた。そのまま帰ろうかと歩きだすも、バーバラがまた正面に回り込むを


「まだ諦めたわけじゃない。今度こそ勝つ!!」

 意気揚々とガッツポーズをし、バーバラは今度こそ勝つぞと闘志をぶつける。


「………ほんと。しつこいな」

「だって、負けたままだと悔しいじゃん」

 ニカッっと笑うバーバラに、レオンは1つ大きなため息をついた。レオンは今度こそバーバラに向き直り、構えのポーズをとる。バーバラはそれを見て、目をギラリと輝かせ、同じように、構えをとった。


「勝負!!」

 最初に仕掛けたのはバーバラ。助走なしのトップスピードで、レオンの目の前に移動すると、その勢いのまま回し蹴りをする。しかし、レオンはその巨漢からは想像もつかない速さでその足を片腕で受け止め、その速さの反動を使ってクルリとバーバラの後ろに回り込む。バーバラも素早く反応し、一歩後方へとジャンプして、レオンの突きを回避する。


 2人の動きには無駄はなく、流れるように軽やかであり、まるで武芸をみているようで、周りで観客とかした生徒達は思わず感嘆のため息が溢れる。

 しばらく2人は互角に打ち合っていたが、次第にバーバラが押されてきた。素早さと柔軟ではバーバラが勝っていても、一手の重さと体幹の安定感はレオンが上である。勝負が長引くほど、段々と力で押されてしまうのである。


「くっ」

 バーバラがレオンの攻撃を受け止めきれずにバランスを崩すと、そこを見逃すようなレオンではない。バーバラに向けて一撃が入る……直前で寸止めした。


 ハァ、ハァ、ハァ……っとバランスを崩し、倒れたバーバラは肩で息をしたまま動けないでいた。

 レオンはバーバラに手を貸すように差し出したが、パシっと手を叩かれてしまう。

「ハァ、ハァ………負けた」倒れたまま呟く。


「……気が済んだか?…帰るぞ」

くるりと向きを変え、レオンは歩き出した。


「くそーーー。今日こそと思ったのに……」

 悔しがるバーバラを横目でチラリと見たが、そのまま歩き続ける。

 バーバラは「よいしょっと」バク転をするようにブリッジから身軽に起き上がり、「待ってーー」とレオンの後を追う。


「ねぇ。レオン」


「…………」


「私さ〜学園卒業したら、この村をでて冒険者になろうと思うの。」


「………やめておけ」


「えーーーー。なんでーーー??だって、この村に居ても、女子に残された就職って、誰かのお嫁さんとか、あとは役場の受付嬢とかだしさー。私に出来ると思う?それなら、冒険者になって思いっきり強くなって、色々旅する人生もありかなって。」


「…………」

 レオンってば、苦虫を噛み締めたみたいに変な顔になっちゃった。


「だから今度のスキル継承の儀式。めっちゃ楽しみなんだよねー。冒険者に役立つスキルだといいんだけどなー。」


 学園を卒業する時に、スキル継承の儀式が行われる。そこで1人1つのスキルが授与され、今後の人生を左右することだってある。冒険者だと……怪力スキル、瞬足スキル、治癒スキル、防御スキル、鑑定スキル、などが多いとされる。

 ちなみに私が欲しいのは瞬足スキル。より早く動けて楽しそうで良いなぁって思ってたりする。


「レオンは卒業後はどうするの?」


「騎士団に入る」

 レオンの実家は、代々騎士団長を務めている。レオンもまた騎士団に入って、ゆくゆくは団長を目指すのだろう。


「いいなぁ…。私も男だったら良かったのに」


「………それは困る」

ボソッとレオンが呟くが聞こえなかった。


「ん?なんか言った?」


「………いや、いい」


「変なレオンだなぁー。」

 バーバラはレオンを見上げたが、レオンはプイっと目線を反らした。まぁ、いっか……それよりも、さっきからお腹の虫がグーグー鳴いているほうが気になった。


「ねえー。動いたらお腹すいちゃった。帰りに鯛焼き買ってこーよ。」


「バーバラは相変わらずだな」


「学生の買食いはロマンだよー。」


 フッとレオンが笑った気がする。


 こんな平穏な日々がずっと続けばいいのに……。卒業まであと少しだ。そしたらこうやって一緒にいる時間もなくなるのかなぁ。






そしていよいよ今日は卒業式


 これから全員の名前が一人一人呼ばれ前に順番にでていく。そして、魔法の喋る帽子を被ると、個人にあったスキル授与がされ、帽子が教えてくれるって仕組みだ。


 いよいよ私の順番……名前を呼ばれ「はい」と大きな声で返事をし、前ででていく。校長先生が「卒業おめでとう」って言って、頭に魔法の帽子を被せた。


( 強くなれるスキルください。強いスキル。強いスキル。強いスキルくださーーい。 )


 心の中で帽子に向かって、どうかお願いしますと念を飛ばす。


( おぬしは強さを求めるか……そんなおぬしには……これがよかろう。 )


 帽子が告げたのは………。

お読み頂きありがとうございます。


獣人ってカッコイイなぁって思っていて、いつか書きたいなぁって思っていた作品です。

これからも応援よろしくお願いします


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