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8)異世界転移で非常食の立場から脱したい

------人物紹介--------------------------------------


〇俺:桐森きりもり りょう

18歳/料理人見習い

割と考えなしに行動しがち。親父の怒声にはよく皮肉を言って対応している。

〔好きなもの〕母の手料理の煮物(味が良くしみ込んでいて鶏肉の甘みがたまらない)



◇ジュエリア国

・クオーツ村

木の実や果物を主食としており、商人が多く滞在する。

村人は茶色の髪を持っていることが多い。


〇ジャスパー

肌が白く鼻筋の高い顔立ち。茶色い短髪で俺より10㎝は身長が上だ。

親切で優しい男で、俺の料理にゾッコンだ。

門番の仕事を辞めてまで、俺の旅についてきてくれた。




〇飲食店兼宿屋の男性(ジャスパー父):カル

焦げ茶色の髪でかなり筋肉がありそうだ。

昔、親父(岩鉄)から卵焼きを作ってもらったそうだ。

ジャスパーと仲直りしてから、とても穏やかな表情を浮かべる。



〇飲食店兼宿屋の女性(ジャスパー母):セドニー

ふくよかで愛想がよく、少し母に似ている。

どうやら彼女も一目惚れでカルと結婚。

世話好きな彼女の為に、カルさんが宿屋経営も

提案したのではないかと思われる。


・ガネット村 

クオーツ村から100キロ程離れており、村人は赤色の髪を持つ事が多い。


〇アルマン(野菜農家の男性)

豪快で小さな事を気にしない性格。

鮮やかな明るい赤色の髪をしていて、農家とは思えない筋肉をお持ちだ。

昔は王宮の兵士だったそうだ。


〇バロバ(アルマンの妻)

笑い上戸じょうごで明るい性格。

アルマンと同じく、昔は王宮の兵士だったそう。



〇ティンガー(農家の息子)

無鉄砲でよく怪我をする。

自分は農家の息子ではなく、兵士の息子なのだというプライドを強く持っている。



〇シュラー(レタス農家の娘)

勝ち気で生意気な性格。オレンジ色の髪を二つに束ねているので、

ツインテールと呼んでいる。



〇アンドラ(キュウリ農家の息子)

内気で気弱な性格。ティンガーとシュラーとに振り回されてつつも、

二人と過ごす時間をなにより大切に思っている。



〇ガネット

巨大な竜。鋭く尖った長い爪、燃えるような紅色べにいろの鱗うろこに巨大な翼。

目の前にすると恐ろしさのあまり硬直してしまうだろう。

子供の食事に俺を選び、連れ去った。



〇ルビィ

ガネットの娘の小竜こりゅう

体調が悪い様子だったが、俺の〔ゆで卵〕を食べて元気になったようだ。

美しい声をしていて、可愛らしい竜だ。


シュラーの父とアンドラの父が気絶して倒れている。

アルマンさんですら、硬直して何も動けないでいた。


それもそのはず、平和な村に突如、巨大な体に紅色の翼、鋭い爪をもった竜が現れたのだ。

凄まじい風圧がトマト畑を大きく揺らしていた。


「これで静かになったな。」

しばらくして、ガネットは人間の姿に戻った。


すると、アルマンさんの家から子供たちとバロバさんがでてきた。


「あら!リョウ。無事だったのね。怪我もなさそうじゃないか!」

「リョウー!!」アルマンさんの息子、ティンガーが俺に抱き着く。


(なにこれ、可愛い。)



「何よ。無事だったんじゃない!」

生意気なツインテールのシュラーは少し目がれているようにみえる。


「よ…よかった…。」アンドラも今まで不安だったようだ。



あれ、ジャスパーはどこにいるのだろう…。



「ジャスパーが一番心配していたよ。あの子は夜中ずっとあんたを捜索そうさくし続けて、

ぶっ倒れているところさ。」



(ジャスパー…。そんなに心配してくれていたのか。)


ジャスパーの為にも、俺の安否が保証されるよう、この件を成功させないと…


「…どうしても…必要なものがあるんです。ご協力、お願いできないでしょうか?」

俺がそう言うと、固まっていたカルさんが動いた。

「詳しく聞こう。」



俺は料理の事や、竜の事、サラダを無事作らないと、

竜が俺を〈お召しあがりになる〉ことなどを説明した。


みんな少し不安げな様子だったのだが、話を聞いてバロバさんが

「なんだい、面白い話だねえ!」と笑ってくれたので、少し周りの雰囲気ふんいきが明るくなった。


竜のガネットは老紳士の姿で、静かに俺を見つめる。

大好物のトマトを使った料理に期待の眼差しだ。


生命の危機ではあるが、料理人として、まずは「旨い」と言わせたい。

グッと拳に力が入る。頑張ろう。


----------------------------------------------------------------------



アルマンさんは、レタス農家とキュウリ農家に掛け合い、食材を調達してくれることになった。


太陽のめぐみをびて育ったトマト、シャキシャキとした食感を想像させるレタス、

イボイボでハリがあるキュウリ、みずみずしい野菜達だ。


アルマンさんやバロバさん、子供たちが俺を見つめている。

ガネットは腕を組み静かに待っている。

ルビィはとても心配そうな顔つきだ。


(よし!調理開始だ!)



まず、野菜達を水の入ったおけで軽くすすぐ。


トマトのヘタを取り、一口サイズに切っていく。

新鮮なので、トマトの汁が溢れず、形状けいじょうくずれない。

どこかから、『ゴクリッ』とつばをのむ音がした。


きゅうりは薄切りにしていく。少し分厚いのも食感がよくて俺は好きなのだが、

今回は他の野菜とのバランスを考えて薄くした。


レタスは包丁を使わずに手でちぎる。

俺はこの作業が好きだ。ちぎるたび、レタスのシャキシャキした音がひびく。


そして盛り付けた野菜達に、とろりとしたタルタルソースをかけた。


タルタルソースはゆで卵を崩し、マヨネーズや塩コショウと混ぜ合わせたものだ。


しかも、マヨネーズは売っていなかったので手作りしてみた。

卵を泡立てかき混ぜて、少しずつ油を加える。そしてレモン汁を加えて味を調整する。

実はかなり大変な作業だった。



それにしても卵が大活躍すぎる…

いっそ俺もカルさんのように鶏を飼うか…




俺はアルマンさんが用意してくれたテーブルにサラダを乗せた皿をゆっくりと置く。

テーブルに腰かけた竜のガネット、ルビィはフォークを手に取った。


(さすが竜…フォークの使い方も知っているんだ…。)


とは言え、ルビィはガネットの真似をしているだけのようだが…。


タルタルソースがかけられた、トマトやキュウリ、レタスをフォークに差し、

ガネットが口に運ぶ。ルビィも苦戦しながらなんとか口に運んだ。



「ふ……フハハハハハハハハハ!!!!!」



ガネットが声高々(こえたかだか)に笑いだす。

老紳士の姿をしていても、恐ろしい圧のようなものを感じた。


「…いかがでしょうか。ガネット様。」


これが口に合わなければ俺は光栄にも竜の血肉ちにくとなるのだ…。

料理に自信はあったものの、竜の口にあうかどうかはまた別問題だ。



周りで様子を見つめていたみんなも不安げな表情だった。



「いいだろう…。お主を食うのは諦めてやろう。」

「!!!!!」



よかった。気に入ってもらえたようだ。

俺たちは歓喜の声を上げた。


ルビィも美味しそうにサラダを食べながら嬉しそうだ。




その時、低い唸るような声がした。


「これからも、ワシらの為に料理を作り続けるのだぞ!」

「「…え……?」」





どうやら食料から、奴隷どれいわっただけの様だ。

「そ…。そんなあ…。」


がっくりうなだれる俺にティンガーが励ましてくれた。

「安心しろ。俺の子分な事には変わりねえよ」

「……。」




太陽が真上までのぼり、照りつける光が花々を生き生きとさせている。

赤く熟したトマト達も美味しそうに輝いていた。







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