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7)異世界転移で危機から脱したい

------人物紹介--------------------------------------


〇俺:桐森きりもり りょう

18歳/料理人見習い

割と考えなしに行動しがち。親父の怒声にはよく皮肉を言って対応している。

〔好きなもの〕母の手料理の煮物(味が良くしみ込んでいて鶏肉の甘みがたまらない)



◇ジュエリア国

・クオーツ村

〇ジャスパー

肌が白く鼻筋の高い顔立ち。茶色い短髪で俺より10㎝は身長が上だ。

親切で優しい男で、俺の料理にゾッコンだ。

門番の仕事を辞めてまで、俺の旅についてきてくれた



.ガネット村 

クオーツ村から100キロ程離れており、村人は赤色の髪を持つ事が多い。


〇アルマン(野菜農家の男性)

豪快で小さな事を気にしない性格。

鮮やかな明るい赤色の髪をしていて、農家とは思えない筋肉をお持ちだ。

昔は王宮の兵士だったそうだ。


〇バロバ(アルマンの妻)

笑い上戸じょうごで明るい性格。

アルマンと同じく、昔は王宮の兵士だったそう。



〇ティンガー(農家の息子)

無鉄砲でよく怪我をする。

自分は農家の息子ではなく、兵士の息子なのだというプライドを強く持っている。



〇シュラー(レタス農家の娘)

勝ち気で生意気な性格。オレンジ色の髪を二つに束ねているので、

ツインテールと呼んでいる。



〇アンドラ(キュウリ農家の息子)

内気で気弱な性格。ティンガーとシュラーとに振り回されてつつも、

二人と過ごす時間をなにより大切に思っている。



〇ガネット

巨大な竜。鋭く尖った長い爪、燃えるような紅色べにいろの鱗うろこに巨大な翼。

目の前にすると恐ろしさのあまり硬直してしまうだろう。

子供の食事に俺を選び、連れ去った。



〇ルビィ

ガネットの娘の小竜こりゅう

体調が悪い様子だったが、俺の〔ゆで卵〕を食べて元気になったようだ。

美しい声をしていて、可愛らしい竜だ。


バサッバサッ 


竜の大きな翼が大きく揺れる度に空に浮かぶ雲がどこかへ飛んでいく様だ。


竜の名は『ガネット』というそうで、どうやらガネット村の名前の由来らしい。

昔は守り神のようにあがめられてきたそうだが、100年程前から突如、奉納品ほうのうひんが途絶えたそうだ。


「昔は人間は料理をワシに届けていた。それが突如、やつらは料理の記憶も

ワシとの記憶もなくし、交流がなくなったのだ。」


ガネットは俺を口に挟みながら、呟く。

俺の体が地面に落ちそうで怖い。


「料理の記憶がなくなった…?どういう事なんです?」

「今の人間の王や貴族だけが魔法を使え、料理を作ることができる。

不思議に思わんか?」


あごが動く度に体のバランスが崩れる。

俺はぎゅっと牙にしがみついて聞いた。


「魔法で…村の人や町の人から一部の記憶を消した…そういうことなんですね。」


「そうだ。魔法や料理に関する知識を奪い、竜との交流を絶たせた。」

ガネットの顔つきは険しい。


「全ては魔法の力と料理を独占する為にな。人は皆魔力をおのれ蓄積ちくせきできる。料理をうことで、魔力が得られるのだ。だからお主のことを初めは貴族か何かだと思ったわけだが。」


驚いた。魔力がないから料理ができないんじゃない。

料理を食わないから料理が作れないのか。


なら、クオーツ村のカルさんだって俺の料理を沢山食べてもらえば、

料理をつくることができる。



「私の体調がよくなったのも、貴方のおかげなのよ。」


小竜こりゅうのルビィは俺に微笑む。


ガネットの飛行速度に、必死についていこうとする姿が、とても愛らしい。


「そういえば……どうしてルビィはあんなに辛そうな状態になってしまったの?」


初めて会った時、ルビィはかなり衰弱していた。焦ったガネットが俺を食わせようとする程に。


「そうそれはね…私たち竜は、魔力をかてとして生きているからなの。」

「魔力を…?」


「そうだ、昔と違い料理を奉納する人間がいない今、大気中の少ない魔力を集め生きていたのだが、それもかなり厳しい状況だったのだ。もはや人間でも食うしかあるまいと思っていたのだが…。」


「ええ、じゃあ普段から人間をしょくされている訳ではないんですね。」


(という事は、俺が食料として食べられることはもうないのでは……。)

俺の安直な考えに気が付いたのか、


「言っておくが、今のおぬしは非常食なのだ。ルビィの体調が回復したとはいえ、

これからも魔力の込められた料理を作らんとその時は…。グルルルル」

ガネットは喉の奥で威嚇するような声を上げた。


(で、ですよね…。)

俺ががっくりうなだれると、何故かルビィが「お父様!」と、ガネットに怒っていた。


森を抜けるとすぐにガネット村が見えた。

竜は村の人に見えない位置で地面に降り立ち、俺をそっと降ろしてくれる。



「あの…。さすがにガネット様のお姿が偉大いだい過ぎますので、村人が腰を抜かすと思うのですが…。」


まして俺が竜に連れ去られたと話が広まっているならば、自分たちも食われると考えてしまうだろう。

現時点で食われる可能性があるのは、魔力のある俺だけなのだが…。


「ふむ。それは問題ない。」ガネットがそう言うと、竜達りゅうたちの体が赤く光はじめた。

シューシューとけむりき出し、前が見えなくなる。


「あ、あの。これは一体??だ……大丈夫ですか?」


その時煙がすっと消え、竜の姿がない。

「ガ…ガネット様!ルビィ!」

心配になって声を張り上げたが、竜の姿が見えない。


代わりに目の前には老紳士と美しい女性が立っていた。

女性がふわりと俺に笑いかけた。


「うふふ。リョウ、安心して。私はここよ、私がルビィ。」

「ワハハ。驚いたようだな。我が種族秘伝の変身魔法だ。」

「え…ええ!?」


魔法を初めて見た俺は、驚き…同時に感動していた。


(驚いた…竜が人間にしかみえない…。)



----------------------------------------------------------------------


俺とガネットとルビィの三人はなんなく村に入る、とは言え、

俺の姿を覚えていたらしい門番の人がかなり驚いていた。


「き、君…。無事だったんだね。竜に食われたと聞いたのだが…。」

「はい、大丈夫です。どうもありがとう。」

(今後の無事の保証はないのだけれども…。)


しかし、誰よりジャスパーが俺の心配をしているだろう…。

サラダの材料調達と、ジャスパーに説明しなければ…。


俺はガネットとルビィを連れアルマンさんの家に向かう。

広大に広がるトマト畑が見えてきた。


トマトが大好物だというガネットが目を輝かせる。

ルビィも人間の村に入るのは初めての様で、少し嬉しそうに辺りを見回す。


「あのね、リョウ。お父様は本気で貴方を私に食べさせようとなさったけれど、

昔人間と交流していた時の話をされる時のお父様はトマトを見るときのように嬉しそうなのよ。」

ルビィが微笑んで話す。

実は人間のことを好いている父を知っていたからこそ、ルビィは俺を食べようとしなかったのだろう。


「それに貴方、自分のことより私の事を心配してくれていたでしょう。そんな人、食べられる訳ないじゃない。」うふふとルビィが俺に笑いかけたので、なんだか照れくさい気持ちだった。


俺とルビィが楽しく談笑していると、先ほどまでトマトを幸せそうに眺めていたガネットが、こちらを鋭い眼光で見つめてきたので、俺はなんだか慌てて「あ…着きましたよ。」と視線をらす。





アルマンさんの家には数人、人が集まっていた。

こちらが近づいても気が付かないようだ。

話し声が聞こえる…。かなり険悪そうな雰囲気だ。


アルマンさんと、シュラーの父であるレタス農家の男性、アンドラの父のキュウリ農家の男性が言い争っていた。


丁度いい。野菜を分けてもらえないかお願いしよう。


豪快で優しいアルマンさんの怒声が響く。


「子供たちが竜が出たんだといっておろうが!!早う助けにいかねばならん。

邪魔をするな!!!」

「馬鹿いうな、このトマト馬鹿。竜に人間がかなうものか!!」

「そうだ、このアホンダラのトマト野郎。旅の男なんて知ったこっちゃねえ。お前が死ぬ必要はない。このあほたれ!」


なんだろう、きっと俺が竜に連れ去られた事で喧嘩しているようだが、

意外と仲がいいのか…。


「あ…。あのう。俺はここにいます!」

俺が話かけても行き交う怒声で声が届かない。



するとガネットが「ふむ。仕方ない」と呟くと竜の姿に戻った。

突如現れた竜に男三人、口をつぐむ。


俺はすかさず、「俺です!リョウです!とりあえずは無事です。ちょっとお願いがありまして…。」




よく晴れた昼下がり、ガネットの紅色の鱗が太陽の光に反射してとても眩しかった。









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