2〜Kerly
※タイトル名のわりに、(表現的にはかなり控え目にしましたが)きつい内容の部分もあります。
酒、煙草、タトゥー、性表現、性描写、性犯罪(レイプ、性的虐待)、暴力などの記述があります。
この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。
そんなある日、私はマテオに、背中に大きな木のタトゥーを入れて欲しいと駄々をこねていた。
「そんな大きなタトゥーを入れたら、背中真っ黒になっちゃうよ」
と断られ続けていたが、この日もどうしても入れたいと、マテオを困らせていた。
その時、2階の自分専用のスタジオから、リドルが降りてきた。
私たちより20歳上のイケおじだ。
細身でブロンドの長髪を後ろで無造作に引っ詰めていた。
首から上と手以外はタトゥーで埋め尽くされていた。
自らは、芸術性の高い一点物のみのタトゥーアーティストであるのに、その身体中のタトゥーは子供のキャンバスのようだ。
弟子達に、自分の体を提供してきたからだという。
私とマテオの押し問答を聞いていたのか、
「どうして、こんな枯れ木のタトゥーを入れたいの?」
と、リドルが聞いてきた。
「これは、枯れ木じゃないの。
ナラの木。どんぐりがなる木なの。
落葉樹。つまり、秋になると葉が落ちる木なの」
「どうして、どんぐりの木?」
「鳥やリスや熊だって、どんぐりのおかげで生きていけるの。
森の生き物の食料に欠かせない存在なの」
私は、いつの間にか、森の木々について熱弁を振るっていた。
「よし!俺がやってやる!」
リドルが言うと、スタジオ中が、振り返った。
こんな得体の知れない小娘に!