3〜Kerly
いつものクラブでロックナイトというイベントがある。
月一で開催されていて、オーディションに受かった5、6組のロック系のバンドがそれぞれ数曲披露する。
私たちScream Of No Nameは、その頃には顔パスで受かっていた。
出演バンドは、ただでお酒が飲めるとあって、大体そこで打ち上げだ。
この日も、レッドフォーズが一緒だった。
ヌーロも一緒だ。
奴らは素行が悪いので有名だが、その手のパンクロックファンには人気はある。
音楽自体は嫌いではないが、ネオナチ思想のボーカルのビガーだけは大嫌いだ。
グルーピーのあの子達もいる。
毎回私に嫌がらせをしてくる奴らだ。
前回は、眉のピアスを引き剥がされた。
警戒体制は取っていた。
でも、お酒が入ると、油断が生まれる。
ジャッドが何人かの女の子達のグループを連れてきて、一緒に飲み始めた。
若くて露出度の高い女の子達がいて、男どもは大盛りあがりだ。
ボスは、違うバンドのマネジメントをしている人と、すぐ近くのテーブルで飲んでいる。
お酒が入るとトイレの回数が増える私は、行きつけのパブでは従業員トイレを使わせてもらう。
しかし、ここは使えない。
「ショウくん、トイレ行ってくるね」
ショウくんは、私についていくつもりで立ち上がったが、その隣の女の子が一緒に行くことになった。
トイレから出た途端に、2人の大男が、私たちの前に立ち塞がった。