5〜Riddle
初めて会った時、アイツは24歳で、フランスだけではなくハリウッド映画にも出て、押しも押されもしない存在だった。
それと同時に、男女構わず誰とでも噂になり、色々と問題も起こす悪童としても有名だった。
ロンドンでの撮影の合間に、タトゥーを入れて欲しいといって、俺のところに来た。
俺は、たとえ有名人でも、イマジネーションがわかなければ引き受けない。
唯一無二のオリジナルのタトゥーを入れるので、それなりにお金は取る。
若い奴は、そんなに多くない。
「どこに、何掘って欲しいの?」
「背中に十字架とか」
最初の一言で、コイツの闇を感じた。
「撮影中だって聞いたけど、大丈夫なの?」
「もう裸のシーンはないから」
美しい顔なのに無表情で愛想もない。
「若いのに、そんな物背負ってどうするの?」
「俺の背中はもう見たくないって、そんなやつ掘って欲しい」
俺は、コイツの顔を覗き込み、目を見ながら、こう言った。
「俺のタトゥーは、人に見てもらう為にしか掘らない。いいな!」
コイツ、もういっぱいいっぱいなんだろうな。
「どうしても十字架がいいのか?」
「俺の死んでしまった色んな部分の墓だよ」
クロス。
墓として掘って欲しいのか?
愛と和解の象徴でもある。
悪魔を払う意味もある。
「たとえば?」
「ねぇ!やってくれるの?どうなの?」
「俺に全て任せてくれるなら、やってもいいぞ」
これが、美しく無表情で生意気なルーとの出会いだった。