2〜Riddle
いつも行くパブとは違って、怒号も喧嘩もない落ち着いた雰囲気だ。
マリーは救急医療で、ジョンは小児科医なので、仕事ではよく会う。
でも、3人で飲むのは数年ぶりだ。
昔話に花が咲く。
病院でも、上の立場になってきた2人の話を聞くと、そっちに戻りたい気持ちも出ないこともないが、俺は、今の自分にやっと満足できるようになってきた。
「何言ってるんだよ、リドル!
今や、お前は、誰もが憧れるタトゥーアーティストじゃないか」
「そうなのか?」
「この前も、首相の娘さんのタトゥーを掘ったのはリドルだって話題になってたじゃない」
「あれは良い意味でなのか?悪い意味でなのか?」
そんな話をしている時、カーリーから電話がきた。
「どうした?カーリー。何かあったか?」
席を立って、少しの間、電話に付き合う。
かなり酔っている。
「今、昔の友達と飲んでるんだ」
「えー、会えないのー!
じゃあ、しょうがないね」
上機嫌な口調で切った。
俺は席に戻った。
「患者さん?」
「いや!今タトゥーを掘ってやっている娘だ」
「大丈夫なのか?」
「今凄く気になってる娘だ。
無表情で、人見知りで、闇を抱えてるが、才能のある娘だ」
「昔のあなたみたいね」
「俺って、そんな奴だったか?」