1〜Riddle
翌日は、朝から精神科の仕事が入っていた。
以前勤めていた病院で、非常勤として働いている。
週に2回、気になる患者がいた場合には毎日行く事もある。
俺は担当が持てないので、新規の患者との初診が多い。
一回きりの診察で、患者の治療の方向性を見極めなければいけないこともあり、難しい役割でもある。
また、ストリート系のジャンキー、売春、アルコール依存症の更生施設へのボランティアもやっている。
その時に、チラッと見えるタトゥーが役立つこともある。
週の半分は、精神科医の仕事だ。
精神科医の仕事が本業だったが、奨学金を返す為のバイトだったタトゥーが、今や本業になりつつある。
今の俺は、タトゥーの方が稼げるのもあるが、そういった子供達には、こっちの方が近い存在でもあるからだ。
この日は、更生施設の女の子が自殺未遂をしたということで、病院に呼ばれた。
この娘とは数回面識がある。
母親の再婚や彼氏にふられたなどで家出をし、売春で食い繋ぎ、薬にも手を出してオーバードーズで運ばれ、更生施設に入れられた。
更生は厳しい道だが、母親との関係はまだ切れていないのが救いだ。
1時間以上この娘と話し、さらに母親とも話す。
病室を出ると、この娘の担当医がいた。
大学時代の友人の一人だ。
付き合っていた時期もある。
「リドル、悪いわね!いつも」
「今日は休日出勤だから高くつくぞ、マリー」
「そういえば、今日ジョンと飲みに行くの。
久しぶりに飲みに行かない?」
マリーもジョンもかけがえのない友人で、俺を救ってくれた人達だ。