7〜Riddle
あの日の早朝、カーリーとの偶然の遭遇。
普段は、人の目を見ず、下かあらぬ方向を見ているカーリーの目は、いわば半開きの状態だ。
あの日、カーリーは、見開いた大きな目で、俺の顔をずっと見ている。
その目には、目力があり吸い込まれてしまう。
俺も目が離せなくなり、激しくキスをしてしまった。
この娘は、内面を押し隠している分、目が物を言っている。
この娘は、まだ、それに気付いていないんだろう。
俺は、レイの忠告を忘れてしまう程、この娘に心酔しているのかもしれない。
次の日もその次の日も、カーリーは俺のところにやってきた。
酒瓶を抱えて。
前の客が終わり、カーリーを待合室に迎えに行く。
ソファで、本を読んでいた。
臨床心理学。
俺が声をかけると、返事はするが本から目を離さない。
臨床心理学の比較的容易く読める本を出してやり、作業場に連れて行く。
タトゥーを彫る前に、予め作成していたイメージ図を見せる。
「凄い!こんなことまでしてくれるの」
実寸大の図案を見せる。
「服を全部脱げ!」
カーリーは服を脱ぎ出す。
シラフのせいか、俺の目は見ないが、脱ぎっぷりはいい。
作業台に、うつ伏せに寝るように促し、実寸大の図案を体に合わせ、まず写真を撮る。
「こんな感じになる。
君は、線が細いから、この部分は少し削らないと前まで行ってしまう。
それは、あまり美しくない。
いいか?」
「お任せします」
「根の部分も、植物学的に言ったら、もっと大きくしないといけないんだろうが、美しさを考えたら、これが限界だ。
裏ももまで行ってしまうが、どうだ?」
「望むところだよ」
「太い針で彫って行くから、かなり痛いぞ。
だから、数回に分けて彫って行く。
色も入れたいしな」
これからの工程を説明し、作業に取り掛かる前に、カーリーの背中の感触を手で確かめた時、この娘の闇に触れてしまった。