第171話 マイダンジョン(夏休み後半の出来事)
夏休み後半。自分の開拓者ギルドのランクがBになった。二条城ダンジョンのギミックはそれほど凄いことだったらしい。
で、一般人にとってBランクは最高ランクだ。これ以上になると国際ライセンスの取得が必要になる。
こちとら日本の高校生だ。当分、国際的に活動しないから英語はからきしである。例えアメリカニュージャージーに個人事務所を持っているとはいえ。
まぁ、いずれはアメリカの開拓者ギルドとも取り引きするかもしれないけど・・・
「マイダンジョンも賑やかになったな・・・」
眼下に広がる光景を見て独り言ちる。稲と酔いどれ麦が黄金の波をたなびかせている。
まぁ、1/4ぐらいはイナゴによって食害を受けているんだけどね。いいんだけどね・・・イナゴの命もダンジョンに吸収されるから。
「こら~」
ダボッとした上着にモンペのこれぞ農家のおばちゃんといった姿のレディオークのデュロックがフレイル片手にイナゴを追いかけ回す。駆除しないとは言ってないもんね。
まぁ、フレイル片手というのはウチらしいけど・・・え?なんでフレイルを振り回しているのかって?
餌がいいのか魔素を浴びているからなのか、40センチを超える個体が田んぼを襲っている。しかも装甲が・・・イナゴとは思えない茶色い装甲を纏っている。
異世界のイナゴかと聞いて見るけど、どうやら違うらしい。ダンジョン中で急速に変異してる?半年も経っていないのに?
「どわぁ!」
デュロックがいきなり叫び声を上げる。
「お~いどうした?」
「なんか、大きな鎌を持った虫が!」
デュロックが指差した先には一匹の蟷螂が・・・デカい。80センチはある。しかも鎌が異様に黒光りしている。ダンジョンの中では特異な進化でもするのだろうか?
デュロックに観察するように指示を出す。
ダンジョンの中で人間以外の生物がどうなるかなんて観察されてはいない。当然だ。ダンジョンの中にはモンスター以外の生物はいない。とされていた。
自分もマカハドマのダンジョンが存在してなかったら信じていない。
でもマカハドマのダンジョンとマイダンジョンの存在から今では違うと知っている。
開拓者ギルドもマイダンジョンの住人たちが持ち込んだWebカメラ等で知っている。
マイダンジョン以外では実験していない。
マイダンジョン以外だとスライムが・・・ね。動物はいいとして植物は全滅するらしい。食べられちゃうから。
あと、ダンジョンに発生するモンスターだから囲みが意味をなさないらしい。どこでも湧くから。特にスライム。
「ル〇バの一部に特殊進化する個体がいるようです」
デュロックがそのような報告を上げる。どうもクズ魔石を集めて圧縮し弱いながら魔法の杖のようなものを作り上げて装備している個体がいるらしい。進化した個体が銃器のようなもの作るからその前段階だど思えば不思議じゃないのか・・・
まぁ、武器そのものは無属性の魔力の塊を発射するだけのものなので、人間だったら当たったら痛い程度のものなので様子見だな。
あとで判ったことだけど、魔法の杖はイナゴを駆除するのに活躍しているらしい。ル○バ雑食だったのか・・・いやそうなんじゃないかな?って思ったけど。
「他に変ったことは?」
「ル○バ以外ですか?というかル○バ以外のモンスターは走る草以外は湧いてないので、ル○バだけですね。モンスター以外は分かりません・・・」
申し訳なさそうにデュロックが言う。
「その辺は気にしなくていいよ」
田んぼの管理と住人たちの要望の取り纏めがあなたの仕事です。あぁイナゴと蟷螂の観察は暇なとき気がついたらやってください。
「まぁ、第一階層にはル○バと走る草以外はモンスターは発生しないし、第二階層も今のところル○バ以外は徘徊させるつもりはないから・・・」
「田んぼ以外はイナゴと蟷螂を気をつける・・・程度でいいのですね?」
「まぁ、そう言うこと」
異世界の普通の動物は・・・まぁ、侵入してから考えようか・・・




