第166話 第90階層にまで至る
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先行者の通り過ぎ過ぎたあとに湧き直したモンスターは一時的に弱っていた。もう第90階層になろうというのにその傾向は続いている。
まぁ、残っていたモンスターによって以前とは大きく変わるが、秩序のようなものは回復する。
自分たちは初めて踏み込むから支障はないのだけどね。
「陣取り合戦が復活しているから、漁夫の利は得やすいけどね」
ペンタントちゃんが言うようにモンスター同士が戦うシーンに良く遭遇する。まぁ原爆ドームダンジョンならではの光景なんだけどね。
で、モンスター同士が戦うということは両方にダメージが入っているということで、倒し易いということだ。
手に入る経験値は下がるけどね。
「せい!」
ユウイチローの拳が空中を飛んでいたエンジェルの腹を殴る。
「うりゃ!」
紅桃のハイキックがエンジェルの側頭部を蹴り抜く。
「はい!」
心ちゃんの拳がエンジェルの顔面に入る。
「あいかわらずエンジェルを殴るのは絵図等が悪いね」
現在、前衛3人は3人とも武器は拳なんだよね。だから、エンジェルは口から血を吐き出しながら吹っ飛ばされる。
「また苦情だね・・・」
コメント欄が騒がしい。可愛いを殴ると湧いてくる人。
人食い熊が殺されると可哀相だと湧いてくる人と同根の人だ。
最も上層ではこの手の人は湧いてこない。中層以降からだ。多分、中層以降はエンジェルでも魔石でいい稼ぎになるからそのやっかみだろう。
「見なきゃいいのに」
ペンタントちゃんがごもっともな事を言う。
「片っ端からBANしていきましょう」
戦闘は前衛3人でなんとかなっているので、ドローンのコメント欄で元気のいい連中を弾く作業に没頭する。
開拓者ギルドの運営しているサイトに捨て垢と言う文化はないのだ。BANされたら二度と書き込みも閲覧も出来ない。
自らの行為を後悔するがいい。
「倒したぞ!」
心ちゃんが魔石と体力回復ポーションを持ってくる。
ユウイチローは魔石で紅桃は魔石とショートソード。
ショートソードとポーションを受けとり魔石は返す。
「魔石は返す」
ほーいと心ちゃんと紅桃はポーチに仕舞い、ユウイチローは口の中に放り込んだ。
ユウイチロー・・・魔石を食べるのか。まぁいいんだけど。
「魔石って美味しいの?」
「美味い。魔力の塊だからな」
「う~ん。てっきり酒代に化けているモノばかりと」
「酒代に?酒にするよりは魔石の方が体にいいぞ」
まさかの体にいいぞ発言。まぁ酒に溺れないのはいいことです。
「紅桃は?」
「酒も水も変わらないから、特に酒に執着はないよ。魔石?オヤツだな。休みのときのお楽しみ」
紅桃もそうか・・・まぁ魔石自体が食べれるモノだから仕方ない。
「そういえば服とか下着はどうしているの?」
「ダンジョンの行商人からだな。あいつどこからともなく現れて魔石と交換でいろんな物を交換してくれる。知ってるか?あいつスペースの中だろうが売りにくるぞ?流石に交換所みたいな窓口取り引きだが」
どうやら、その行商人の特殊スキルらしい。便利なもんだ。
「あぁ知ってる。私も戦化粧を買ってるよ!」
紅桃が言う。戦化粧?オーガがここぞと言う戦いのときに顔につけるものらしい。
「私はクリーンの魔法が使えますから着替えとか必要ではありません」
ペンタントちゃんが言う。クリーンって便利な魔法もあるもんだ。
「え?何それ!欲しい」
心ちゃんが突っ込む。
「ちょっとした聖属性魔法と水魔法の混合魔法です」
ちょっとした・・・混合魔法がちょっとした?それなりに魔法をこなさないと出来ないのですが・・・
「う~ん。クリーンを習得するのに魔法を2つか・・・」
自分はパワーレベリングが出来るから楽勝だけど、心ちゃんは難しいだろうな・・・
「心ちゃんがその気なら集中レベリングに付き合うけど?」
第100階層に行ってエレベーターで第1階層に戻り副職を付ければいいだけだ。
「第100階層に到達してから考える!」
心ちゃんがきっぱりと言う。まぁ順当な考え方よね・・・