第129話 異世界への扉バージョンアップ
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ルナ・オルガさんが言うには、妖精族というのはこの世界の北の果て大紅蓮地方にあるマカハドマという国に生息する種族で、体長は30センチから40センチの人型。虫のような羽根と触角を持ち、人語を話す。回復魔法や属性魔法を使うほかレイピアのような細剣や弓を使いこなす。
性別は男性と女性があり、オベロンという名を冠した王がいるらしい。もっともオベロン王の姿を確認した者はいないという。
街は高い城壁に囲まれており、城壁外はー年通してほぼ冬だが城壁内には四季があるという。他の種族(主に獣人族)も住んでいるらしい。
「姿を見せないのに存在は信じられるって不思議ですね」
ペンタントちゃんが首を傾げる。
「マカハドマに四季があるのはオベロンの加護だって。だからマカハドマに四季がある限りオベロンは健在と」
「へぇ~」
ペンタントちゃんは納得したのか大きく頷くと視線を外に向ける。今自分たちはマカハドマ国に向かって船旅をしている。マカハドマ国の近くには大きな川が流れており、往来には船を使うのだ。
「しかし大きな川だね」
船尾に行っていた疾風と紅桃が戻ったくる。手には1mほどのマスっぽい魚がいる。腹が既に割かれているということは下処理が済んでいるらしい。
「釣れたんだ」
「おうよ」
紅桃は笑う。なお、船旅する人が船尾で釣りをするというのはこちらの世界では割と良くある暇つぶしだったりする。なにしろ船の動力源は魔石をエネルギー源とした風魔法や水魔法の魔導具なので、釣り竿を垂らしたぐらいでは走行の邪魔にはならないのだ。
「船を作るべきかな?」
移動手段は異世界の扉があれば大抵は解決するけど、残念なことに行ったことのない地域にはー度は行く必要がある。移動手段として船を手に入れるのは一考の余地がある。漁具を持ち込めば好きなときに漁も出来る・・・かもしれない。
「ごすずん。魚食べたい」
疾風が可愛らしくお腹を鳴らしながら訴える。
「ほいよ」
スペースから魔導コンロを筆頭とした調理道具を取り出し、マスのような魚を捌く。
塩で味付けしてフライパンで焼いていく。
少し酒を回して蓋をして蒸し焼きに・・・
数分後、蓋をとり水分が飛んでいるの確認したら出来上がり。
皿に盛ってレモンの輪切りを添えて疾風と紅桃の前に出す。
続いてペンタントちゃんとチビの分を焼き、最後に自分のを焼く。
「いただきます」
早速実食。とても美味しい!
ピロン!
紅桃が晩酌用の酒とツマミを求めて異世界への扉をくぐり抜けたら、頭の中でシステム音が鳴った。
〈異世界への扉のレベルが上がりました〉
なんと、異世界の扉がレベルアップした。
〈中の広さが1.5倍に拡張されました。冷凍庫が実装されました。冷蔵庫が実装されました。〉
調べて見ると、部屋の奥に扉が増設され、中身はマイナス15度の冷凍庫と5度の冷蔵庫だった。
中に入れると殺虫や殺菌がかされるとはいえ、常温なので食糧品の保存という点では心許なかったのでこの実装はありがたい。
〈異世界への扉が拡張されました〉
扉の大きさが大型トラック一台が通れるぐらいに広がった。これで異世界にも大型重機が導入できるよ。
〈異世界への扉の転移先ポイントが強化されました。〉
続く説明を聞くと、扉の開く先がテイムモンスターが行った先ならどこでも行けるようになったらしい。これで行動範囲が大きく広がったのは大きいな。今までだと長距離移動には自分が行った場所にしか扉の設置は出来なかったけど、これからは空を飛べるカラス天狗たちを先行させることが出来る。大幅な時間短縮が出来るというものだ。
ということでカイヤを船に残して異世界駐屯地に帰還する。この事をJ隊の田中さんに報告すると、大喜びしてくれたよ。探索範囲が広がるからね。
「マカハドマは摩訶鉢特摩かな?確か八寒地獄のひとつだったはず」
田中さんはマカハドマが常冬の国と聞いて笑う。そうか、マカハドマってどこかで聞いたことがあると思ったけど地獄の名前か・・・なんで聞いたことがあるのかって?八熱地獄の名称は覚えて当然。八寒地獄も名前ぐらいは聞いてて当然の嗜みでしょ?(偏った知識)




