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ある日、ヒロインと成り代わりまして~鬼隊長と呼ばれた私が可憐な男爵令嬢に成り代わり、イケメンの元部下に絆される~  作者: えとう蜜夏


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16 占い師ミルド

 城下町の片隅にそこはあった。小さな建物で周囲は古書店や魔道具やと軒を連ねていた。

「ここが……」

 マギーに案内されて着いた店だった。

「ここです。メルティアお嬢様がペンダントをお求めになったところです」

「ありがとう。マギー」

「いえ……」

 マギーは顔を伏せたまま先へ進む。できれば早く彼女にも説明をしたい。あなたのご主人がどうなっているのか。そうすれば元のような笑顔を見せてもらえることができるのだろうか。

 そして、扉を開けるとそこは夜だった。深い紺色のカーテンや布で店内は装飾されていた。

「いらっしゃいませ。これは、これはソードラーン男爵家のご令嬢。どうされましたか……」

 奥には深い紺色のローブとマジックハットを被った老女がいた。老女と言っても背は真っすぐで立ち姿は素敵な感じだった。

 私の姿を見てメルティア嬢と言いかけたがぴたりと口を閉ざして私をじっと眺めていた。

「だけど私の存じているメルティア嬢ではありませんね。一体、どうしたことでしょう」

「ああ、やっぱり!」

 占い師の言葉にマギーが堪え切れないといった感じで声を上げた。

「……この状態が一体どうしてこうなったのか私にも分からない。それで私のあなたに会えたらご説明をしていただこうとここへ参りました。これがこの現象の原因の一つではないかと思っております」

 そう言って私はあの宝石が砕けたネックレスを取り出して見せた。

「これは……、そういうことですのね。お時間はおありかしら?」

 占い師は私達を見渡した。私はエイベルに視線で確認すると黙って頷いた。占い師は店のプレートを裏返して閉店中に帰ると護衛を壁際まで下げさせて店内の応接スペースへ私達を誘った。

「こちらへ、どうぞ、長くなりそうですから。ああ、護衛の方々は話が聞こえないところまでお下がりください。沈黙のベールを使ってもいいのですが……」

 沈黙のベールとは魔道具の一つだ。その中で話される言葉は外に聞こえることはない。

 占い師の言葉に私は護衛を壁際まで下げた。職務に忠実な彼らは渋る様子だったけれどそもそもエイベルと私の戦闘力の方が彼らよりある。護衛らは気がついていないけれど。

「そうですね。そちらの方はどうしましょうか?」

 占い師はマギーをどうするか私に尋ねた。

「彼女も今回のことで知りたいことばかりだろうと思います。マギー? ここで知りえたことを秘密にできるか? その代わり疑問に思うことは解決するはずだ」

 私が問うと一瞬迷うそぶりを見せたがマギーは私の後ろに控えた。それを確認すると占い師は私とエイベルの方に向き合った。

「では、そうですわね。自己紹介からさせていただきましょう。私は占い師のミルドと申します。ドルリアの王立魔法学校で占術学を主に専攻しておりました」

 ドルリア王国にも貴族の通う学校として騎士学校、魔法学校などを代表として様々な教育機関がある。平民の通う学校ももちろんある。私が通ったのも平民が無料で通える兵学校だった。

「私はソードラーン男爵家のメルティアだ。中身は平民のアニーだ」

 そう言うとミルドはても驚いたようだった。マギーは一瞬体を強張らせていた。

「ミルド。あなたとメルティア嬢は面識があったようだが……」

「ええ、何度か、その彼女の魔力について相談を受けておりました」

「そうでしたか……」

 日記に書かれていたのは占い師のところに行っているとだけ記されていた。

「彼女は魔力についていろいろと悩んでおりました」

 ちらりと私を伺う目でミルドは眺めた。

「ああ、彼女は魔力量の過多による過剰反応だな」

「お分かりでしたか、そのネックレスをお貸しください」

 壊れたネックレスをミルドは渡すように指し示したのでそれを手渡した。彼女はネックレスを手に取り目を閉じて何かを唱えていた。

「……これは」

 ミルドは暫くして大きく息を吐きだすとそう呟いた。驚きと諦めの混じった声だった。

「それは一体何の魔道具だったのです?」

 私の言葉にミルド以外驚きを露わにしていた。どう見てもただの装身具ではないことだけは感じていた。

「それには願い事が叶うというネックレスとして売っておりました」

「願い事……。では、今の状態はメルティア嬢が望んでいたということなのか」

 私のつぶやきにミルドは、

「これには元々大した術はかかっておりません。気休めのようなものです。ほんの少しラックの、幸運の値を上げるくらいなのです。だから、何故、メルティア嬢の体にあなたの記憶というか魂が入ったのかは私にも分かりません」

 ミルドがため息をついた。

「そんな、では、メルティア嬢はどうなったというのか?! いや、私がメルティア嬢なのか……」

 やや混乱した私は立ち上がってしまったもののなんとか椅子に座り直した。マギーがふと呟いた。

「メルティアお嬢様はアニー隊長に助けられて、憧れておりました。アニー隊長のように強くなりたいと……」

 その言葉にミルドが、私を見遣やって躊躇いながら話した。

「あなたの今のステータスがどうなっているのか、鑑定してもよろしいかしら? 占い師に必要なスキルの一つに鑑定があります。メルティア嬢が一体どのようになっているのかわかるかもしれません」

 私は同意をして頷くとミルドが私の手を取り呪文を呟いた。暫くして、ミルドが手を離した。

「……メルティア嬢はこのネックレスに強く願った想いが残っておりました。それは強くなりたいと、……憧れのアニー隊長のようになりたいという想いです。そこにちょうど亡くなって体から抜け出たアニーの魂を見つけ、自らに取り込もうと彼女の行き場のなかった多量の魔力によってメルティア嬢と融合、取り込んだようです」

「な!!」

お読みいただきありがとうございました。

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