邂逅②
「キャッ!」
驚いた女神サマ。唐突に叫ばれれば驚くよな。
「お前は人をなんだと思ってんだ!存在を消した!?手伝ってもらえますか!?ふざけんな!勝手すぎるだろ!!」
思い浮かんだ言葉を声にする。
言いたいだけ言わせてもらう。
「大体!自分達の仕事だろうが!なんで人を巻き込むんだよ!神同士でどうにかしろよ!馬鹿なのか!元に戻せよ!」
そう、元に戻してくれればいいのだ。
そうすれば俺には関係ない。
普段の日常に戻れるのだ。
「あのー…申しにくいのですがお伝えしたように貴方の世界では存在を消して産まれてない状態ですので戻ると消えちゃいます…。」
退路すら無くしてたのかよ…。
協力してってお願いするなら選択肢くらい下さいよ…。
「マジかよ…。それじゃ協力するしか生きる道ないじゃん。」
「心苦しいですがそういう事になります…。どうしても協力してもらう必要があったのでこの様な手段を取らせてもらいました。本当に申し訳ないです。」
絶対心苦しいとか思ってないだろ。
しゅんとした顔の女神サマにこっちが悪い事した気分になるけど非人道的すぎるのは女神サマだ。
俺は悪くない。当然の文句を言っただけだ。俺は悪くない。
「で、女神サマに協力しないと生きれないから協力は決定事項だけど人生を買い上げるって何?人生を買うって意味がよくわかってないんだけど。」
「うーん…例えるなら慰謝料と海外勤務手当に近いです。こちら都合で存在を動かして別世界で働いてもらうのですから。」
「別世界で働くってどういう事なの?兼任してる世界で何かすればいいの?」
「そうですね。勤務地は私が管理してるもう一つの世界です。業務内容は言い方は悪いですが《間引き》です。」
《間引き》って…人殺しは無理だよ?動物も殺せないよ?子どもの頃に蟻とか蜘蛛とかの小さい虫を踏んで殺した事しか無いよ??
「えぇーっと、間引く対象って何?人とか動物は無理なんだけど。」
「メインは霊体、幽霊です。人の怨念や情念が具現化したものを排除するのが仕事になります。」
既に怖いんだけど。そっち関係は得意じゃないよ??女神サマの広告でビビッてたのよ??
「排除と言っても物理的な排除じゃありませんよ。話を聞いて寄り添ってあげて満足させてあげて消してくださるのがお仕事です。」
あ、そういう感じなのね。カウンセリングする感じかな?資格とか持って無いけど。
「満足してもらえるのが一番なんですけど時間が掛かっちゃうんですよね…だから人手が足りなくて…。」
そりゃ時間も人手もかかるよな~。すぐに終わる話じゃないだろうしデリケートすぎる問題だろう。
「でも、それを俺が出来るのかな?そんな仕事してたんじゃないし所謂一般人だよ?」
「…あんまり言いたくないですが女神の私と初対面なのに怒鳴ったりそこまで砕けた態度が出来るんですからコミュニケーション能力は高い方だと思いますよ。」
そんなつもりは無いけどそう言われるとそんな気がしてくる。怒鳴ったのはすみません。あと女神サマなのは信じてなかったので。
「では、勤務場所と業務内容の説明は完了という事で。次の説明に移らせてもらいますね。」