05・これは生活魔法ですか? いいえ生活魔法です。
ベハなんとか国をダッキさんと一緒に、物理で傾城傾国して来たタマモです。ごきげんよう。
さて、私は今、人化したダッキさんと、とある山奥に潜伏しております。
常識の学習と、生活魔法の練習の為に。
あ、ダッキさん人化解除しても、着てた服が破ける事はありませんでした。
再人化したら、ちゃんと船外作業服を着てたから一安心。どういう原理なんだろ? 不思議だなー。まぁ便利だから良いけど。
残念なが変身バンクは無いよ。ないったらない。ありません。
私としては、このまま宇宙へ出ちゃても良いかなと思ってたけど、ダッキさんが殊の外、人化を気に入ってまして。
じゃあ暫くこの惑星で生活してみようと言うことになりました。
それで世界常識で生活する上で注意するポイントを押さえ、折角貰った生活魔法なるモノを練習しようと言うことに相成りました。
練習場所は山奥の渓谷、そこの狭い河原。
「それじゃまずは水を出す『ウォーター』から逝ってみるねー」
「タマモ、不穏な言葉になってないですか?」
うむ、ニュアンス違いが確実に伝わってしまうわ。
「えーっと、なになに。魔力を手先に込めて水を意識しながら『ウォーター』と唱える、と。なるほどわからん。取り敢えず適当にやってみるわ」
マニュアルの不備でしょ。こんなん。まず魔力ってなんぞ? うーん、一応、なんか体内で発生する核融合のエネルギーとは別なのは感じるがなぁ。これを手先に集めるのか。
「ふぬ、ぬぐぐぐ、難しいなこれ。よし、『ウォーター』!」
出ました。水が。消防ポンプ車の放水レベルで。
ちょっとマテ。説明にはコップ一杯程度と書いてあったぞ。
まるで光の巨人の技の一つみたいじゃないか!
「タマモは魔力の込め過ぎなのでは? 『ウォーター』。あら、面白いですよこれ」
ダッキさんの手先には五百ミリリットルくらいの水が玉になって浮いてる。おー、成功するとそんな感じなのか。
いやマテ、ダッキさんのも水量が多めだし。しかも浮くとか説明に無いのに浮いてるし。
「ほら、こんな事も出来ますよ」
ダッキさん、水の玉を二つ作ってお手玉と言うかジャグリング始めたよ。なんか笑顔だし。
どうやら思考リンクで私から表情の動かし方を学習してるらしい。
眩しいわー。その笑顔、眩しい。
そうこうしてるうちに水玉が三つ四つと増えて行く。
ダッキさんて超高性能人工知性体だもんなー。プロセスの並列化とか訳もないわ。
取り敢えず水は出せたんだから、次は火。着火の生活魔法『イグニッション』かな。
これは魔力は指先に集めて、着火させたい場所を指差しながら『イグニッション』と唱える、と。
「枯れ枝でも集めて試そう」
河原から山の中へぴょーんと行って、ささっと集めて、ぴょーんと帰って来ました。
そして集めた枯れ枝がこちらになります。
「ほとんど生木ですね」
「だって落ちてなかったんだもん。仕方ないから木の枝もいできたのよ」
なんか生きの良いのが一本あって、枝を振り回して襲って来たから返り討ちにしてやったわ!
「取り敢えずやってみよう。では。ふんぬぐぅ~『イグニッション』!」
「女の子がしちゃいけない顔になってますよ、タマモ」
指先に魔力っぽいのを集めて唱える。
爆発しました。
「うえっ! ぺっ、砂が口に、ぺっ、ぺぺっ」
「一気に枝がプラズマ化して爆発的に膨張した結果ですね。魔力の込め過ぎですよ」
むー、加減がわからん。
「ダッキさん、コツとか無いの?」
「コツですか」
ダッキさん、左腕でおぱーいを下から支えながら左掌で右腕の肘を支え右手人差し指をほっぺたに当てて小首を傾げて考える仕草。艶っぽいですわー。
いや、大分身体の動かし方に慣れた様子で重畳重畳。
表情なんかの感情表現も短時間で益々豊かになって来てるし。うむ、流石は私のダッキさん。
「思考リンクで直接アクセス許可を貰えれば該当領域に書き込みますよ?」
えー、あれもちょっと酔うから遠慮したいなぁ。改造されたのに。
急ぎでもないけど、覚えないとダッキさんの希望が叶えられないし、背に腹は代えられないから、我慢するか。
「ちゃちゃっとヤって下さい」
はい、ちゃちゃっとやって貰いました。うぇっ、やっぱり気持ち悪い。
「なるほどね、こんな感じなのか。では『ウォーター』」
おお! 水玉が手先で浮かんでるよ。ちょっと感動。
「でもさ、生活魔法とか言ってるけど、魔力とか込めたら攻撃に転用が出来るんじゃない? さっきの私がやったイグニッションみたいに」
「出来ますね。でも……」
「でも?」
「世界常識に魔法運用の事が載っているのですが、効率が段違いなのです。例えばですね、これ。『ブラスティング』」
離れた場所の川面で爆発! なにあれ、私の失敗イグニッションより派手だし威力ありそう。
「今のでイグニッションの三倍位の魔力消費ですね。威力から換算すると効率は十倍ほどかと。因みに採石場で重宝する魔法みたいですよ」
ブラスティング……、発破かよ!
「いや、世界常識に魔法運用の事が載ってる方が驚きだよ!」
「生活、文化、政治、経済、軍事、地理、魔法、その他色々と専門的分野が詳細に網羅されてますね」
「それもう、常識ってレベルじゃないじゃん。大きな図書館を持ち運んでるようなもんでしょ……」
ん? 今ダッキさんて生活魔法以外の魔法を使ったよね。て事はスキル生えたのかな。確認確認。
skill
・人化
・言語理解(惑星上全言語)
・世界常識(惑星全域)
・生活魔法
・身体基本動作
・身体応用動作 ←new!
・全属性魔法 ←new!
ステータスの方は見るだけ無駄なのでスキルのみ表示。
えーっ! ダッキさん魔法全部覚えたのかよ。流石は超高性能人工知性体。
それにつけても私のポンコツさ加減よ。改造されたのに。
そんなこんなで人知れず山奥で、私達は、やいのやいのとお勉強と魔法の練習に励むのであった。
さて、今更ながら私の身体について語ってみよう。
私を構成する細胞は全て、ナノマシによる人工細胞に置き換えられている。
人工細胞の一つ一つが、ある程度のインテリジェントな機能を持っているのだが、私の意識の基本スペックのせいか、いや、元々の地頭の出来が悪いのが原因なんだろうけどさ、真価を発揮し切れていないのだ。困ってないから良いけどさ。
さてこの人工細胞。なんでも細胞内で水から水素を分離して、更になんたら構造とか言うのを持った細胞構成要素で核融合をしてエネルギーにしてるとか。エネルギーは血液で、血液だよね? 身体の中を通って各部に供給されてるとか。
更に生成されたヘリウムから順番に鉄まで核融合させるとか。私は恒星かよ。
そんで生まれた元素は、人工細胞の補修にも使われてるとか。
まあ、人工細胞も寿命があるし、壊れた分は分裂して補うみたいだし。そして壊れたやつはリサイクルされるし。
微量に必要な元素も有るには有るけど、それは時々、ほんの少しだけ外から供給すれば良い。
そんで、一見柔らかそうな皮膚だけど、ケイ素樹脂、所謂シリコーンで構成されるナノマシによる人工細胞。どこのラ○ドールだよ。なんか一瞬、あの変態犯罪者の事が脳裏を過った気がするけど気のせいと言うことにしておこう。
いや、シリコーンて言ってるけど、そこは星間文明の賜物、地球のそれとは性能は段違いなのですよ。
切れない破れない高温にも耐える。
しかも人工細胞の代謝で絶えず表皮が入れ替わるから、いつでも玉の肌。ピッチピチやぞ。
因みに使われるケイ素やら窒素やら炭素やら何やらは体内での核融合で合成されとります。
超高性能な皮膚のお陰で海賊どものブラスター被弾しても平気。痛いけど。
筋肉組織ももちろん超強化されてて、支えがあれば片手で一トンは持ち上げられるかな? 片手でリンゴを握り潰すなんて朝飯前よ。
そしてその筋肉を支える骨。これもね、骨髄細胞が置換された結果、カルシウムで出来た骨よりも硬くて粘りがあって軽い合金に作り替えられてしまいました。
下手しなくても水飲んで土食ってりゃ生きて行ける、いや、生物の範疇から外れてるからなー、活動して行けると言い換えた方が適切かな。
そしてトイレ行かない。出るとこあるけど行く必要がない。昭和のアイドルか私は。
いや、ほんと。何考えてこんな改造したんだよ、あの変態犯罪者。と、また嫌な想像は浮かんだけど気のせいにして忘れた事にする。
しかし、この身体のお陰で、山籠もりしてても別に困らないのだ。
あー、そうだ。貨物デッキにあるアレ等をどうしようか……。
※明日(12/22)から暫く毎日19時に次話投稿を続けます。