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02・なる程、これが神土下座か

 さて、ジャンプ中は暇になる。

 次元重力子衝撃駆動航法なんて小難しい名前が付いてるみたいだけど、なんだっけ、確か物質の余剰次元の紐を開いた状態から閉じた状態に変換して重力子の群にして、ブレーンから外れて光速を超えるとかなんとか。

 勉強したけど忘れたわ。どーせ残念な頭してるわよ。改造されたのに。

 でもジャンプ中って、不思議なのよね。船の外部はモニター使っても認識出来ないんだけど。

 機器は正常に動いてるし、自分も船体も認識出来てるし、ダッキさんとも会話出来るんだけど、なんて言うか『ここに在る実感が無い』って変な感じがするし。


 で、そんなジャンプ中にダッキさんから報告が。


「タマモ、船外カメラに光を検出。ジャンプ中では有り得ません。これは……」


「ダッキさん、どしたの? あれ? ジャンプ中の違和感消えてる」


「モニターに出します。タマモもこれを見て(・・・・・)判断して下さい」


 ダッキさんがそう言うとブリッジの船外モニター画面が点く。普段は窓みたいに外の映像を流してるんだけど、ジャンプ中は無駄だからね、消してるのよ。

 あと、ダッキさんから思考リンクで直接に映像を回しても貰えるけど、私が酔うから止めて貰ってる。改造されたのに。


 さて、沈着冷静なダッキさんが戸惑うようなモノってなんじゃらほい。


 なに、あれ。どう見てもヒューマノイド型の生物に見えるのがモニターに映ってる。なんか口開けて呆然とした表情をして、女性っぽいな。うん、美人がそんな顔しちゃダメだぞ。


 いやいやいやいやいや! なにこの空間! 白い、驚きの白さ! 上下分からんし! そこにポツンと一人立つ謎の女性って何よコレ!


「……ダッキさん、レーダーとかセンサーその他の反応は?」


「光学的な反応しか(・・)検出は出来ていません。それ以外は全てネガティブ(反応無し)。ジャンプ中と同じです」


 腕を組んで考えながらモニターに映る女性を見てると、彼女がなんかワタワタし始めた。口を動かしてるけど、声なんか聞こえないし。


「ダッキさん、あの人の声、拾える? と言うか外に気体あるの?」


「気体も音声も検知不能ですね。有るのか無いのかすら分かりません」


 あの人が居る位置って貨物デッキと同じ高さだわね。行くしかないか。


「あの人、って人なのかな? 取り敢えず会って来るよ。貨物デッキまで降りる。着いて船外作業服着たら合図するから、正面搬入出ランプドア開けて」


「危険では?」


「いやあ、光学的なもの以外が、ジャンプ中と同じ状態なんでしょ? それだと補機での移動も出来ないし主機の稼働も無理そうだし、手詰まりじゃない」


「それもそうですが……」


 まったくダッキさんは心配性だな。


「ランプドアから先には行かないから、大丈夫だよ。それとハーネスにライフライン(命綱)も繋げとくから。そんじゃ行ってくる」


 ブリッジを出て、ナセル内を通るエレベーターで貨物デッキへ。そう言えばメインデッキ以外は人工重力無いはずなのに重力あるわ。なんで?

 疑問はあるが取り敢えず船外作業服を着込んでランプドアの前へと進む。


「着いたよ。開けて」


「呉々も無茶はしないで下さいね」


 もう、信用ないな、私。

 そしてランプドアが、ゆっくりと開いていくと女性の姿が視界に入る。

 あ、こっち見た。うわ、ダッシュで走って来るよ。地面とか無いのに。


『ああ、やっと姿を見る事が出来ました。これでお話する事が出来ます』


 こいつ! 脳内に直接っ!


『まさか召喚で正体不明の巨大な物が現れるとは思ってもいませんでしたから。中に居られたのですね。安心しました』


 いや、こっちは全く安心出来てねーし。なによ『召喚』て。

 あれか、JK時代の友達のミヨちゃんがハマってたネット小説のアレか?


「いや、召喚て。私、仕事中なんですよ。先方に荷物届ける途中の。この空間から元の所に帰してもらえます?」


 一応、言うだけ言っておこう。確かテンプレだっけ? 勧められて何度か読んだ事あるけど、大概が帰れないとか魔王(笑)倒せば帰れるとか、そんな事を言われるらしいし。

 いやぁ、変態異星人に拉致されて改造されたのもビックリだったけど、それ以上にビックリだよ。私、随分と図太くなったよね。思わず遠い目しちゃったよ。


『それは……、不可能なんです。一度この狭間の世界に入ると、元には戻れないのです』


 はい、テンプレ乙。


「いや、そもそも何で私なんですか? 呼ぶなら若い子でしょうに」


『貴方も十分お若いように見えますが……』


 けっ! 花の十七歳で拉致されてから外見は変わらないけど地球時間で二百とウン十歳だよ!


『し、失礼しました!』


 綺麗なジャンピング土下座を決めましたよ、この人。

 あれ? お宅様、思考読めるん? いや、そもそも自己紹介もなんもしてなかったわな。


『はい、あの、わたくしはイスカリアと申します。ある惑星で管理者として女神をさせていただいてます』


 女神様だったのかー。いや、そこまで(へりくだ)らんでも。


「あー、出来れば思考を読むのは止めて欲しいんですが。私はタマモ。しがない下請けの運送屋です。話が進まないので、召喚された理由とか、これからどうなるのかをご説明いただければ」


『はい、実はですね……』


 なるほど、異世界(別ブレーンの宇宙ぼいなー)の、このイスカリアお姉さんが管理する惑星にある、長くて覚えきれない名前の国が『勇者召喚』とやらを行ったと。

 そんで、その経路を繋いでいる途中で、偶々ジャンプ中の私ら『みくりや丸』がその経路に乗ってしまって此処に運ばれたと。


「事故った訳ね……」


『本当に申し訳ありません!』


 土下座再びである。


「そもそも論なんですが、なぜ貴女が謝るんでかね? 本来なら召喚者に詫びを入れさせるのが筋だとは思うんですが。無理っぽいですけど」


『本来、こういう事故の時は上位の神が出る事になってるのですが……。私も一応は不始末を起こした国のある惑星の管理者ですので、その、管理者責任と言う形でお詫びを申し上げてる次第でして』


「イスカリア様って中間管理職? 世知辛いですねぇ……」


『そうなんですよ! あのセクハラ野郎、知らんぷりしやがって!』


 あー、あるある。トラブル対応を部下に丸投げして知らんぷりする奴ね。

 契約先の担当さんがよくボヤいてたっけ。仕事の打合せで飲んだ時にボヤきとグチ聞いて、余りにも可哀想だったので奢ったら、それから優先で仕事回してくれるようになって、こっちは助かったけど。

 宇宙も異世界も世知辛いわー。


「しかし戻れないとなると困りましたねー」


『はい、お詫びとして、特殊能力を受け取っていただいて現地に行っていただくしか他に無いんです』


「ほほう。特殊能力ですか。所謂スキルとか言う奴ですか?」


『はい、よくご存知で』


 これは興味深い。いや、でもな。私が行くとしてもだ『みくりや丸』とダッキさんはどうなるんだ?


「召喚されるのは(やぶさ)かでは無いんでが、私の持ち船、このでっかいのはどうなります? 持ち船って言ってますが、私とは不可分な物でして。それにコレには意思が宿ってるんですよね」


 『みくりや丸』つまりダッキさんを指して聞いてみる。


『このままだと召喚魔法陣を通れませんよねぇ……。かと言ってこの空間には留めて置けませんでしょうし』


 むむむ。なんか手は……。


「つかぬ事をお聞きしますが、そのスキルっての一覧とか有りますか? 出来れば見せていただいて何か使えないか調べてみたいな、と」


 あ、そうだ。ダッキさんダッキさん。思考リンク、接続出来てる?


―出来てますよ。相変わらずダダ漏れです―


 ぐはっ! まー良いか。視覚共有しといて。状況分かってるよね?


―把握してます。ダダ漏れでしたから―


『今お話してたのが、この船と仰る巨大なモノの意思ですか?』


「そうです。ダッキさんと言いまして、私の大事なパートナーです。あと思考読まないで下さい」


『そうですか。あ、これがスキル・リストです。ご覧いただけますか?』


 と、イスカリアお姉さんの手元に立派な装丁の本が。

 受け取ってダッキさんと視覚共有しながパラパラと捲る。あ、ちゃんとスキルの詳細説明もあるんだ、これ。


―タマモ、これ! 『人化』とか使えません?―


 人化とな!? なになに、主に知性を持つドラゴン等が取得出来るスキルと。ダッキさん、人型になりたいん? こう、ずごごごって変形して。


―よく読んで下さい。知性を持つ巨大な(・・・)ドラゴンが、とあります―


 なるなる。人化してコンパクト化するって訳ね。ほほう、アクティブ・スキルだから解除も可と。これが出来たら便利よな。


「イスカリアお姉さん、これ。この『人化』ってやつ、『みくりや丸』と言うかダッキさんに付けられませんか? それが出来れば他は要らないんで」


『意思と知性が有れば可能だとは思いますが……。試してみますね』


 イスカリアお姉さんが目を閉じて何やらむにゃむにゃ始めた。ドキドキ。


『……終わりました。姿を強く思う事で『人化』出来るはずです』


 ダッキさーん、取り敢えず終わったっぽいから、やってみて。


―意識パラメーターの一部に変化が有りました。詳細解析してから試行してみます―


 了解。焦らず、無理せず、安全に、は基本だもんね。


『あの、よろしいでしょうか……』


「あっ、はい。なんでしょ?」


『一応、言語理解とか言語取得とかは必要ですか? 必要ですよね? あと魔法とかもありますよ』


「いや、ダッキさん居れば基本的に困らないんで。それに私なんか基本、水を摂取するだけで活動が出来ますから」


『えええ、そんな事を仰らずにせめて言語関係だけでも。今なら世界の常識も付けますからお得ですよ』


「なにその通販番組みたいな売り込み方は」


 ふむー。言語関係と常識か。魔法とかはどうでも良いけど、有れば便利かな。まぁ宇宙に出ちゃったら関係無いけど。


「……ひょっとして、こういう時に渡すスキルの数に、ノルマとか有ったりします?」


『……はい』


「世知辛いですねぇ……」




※不定期・不定時更新です。

※ノリだけで書いてます。

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