近しい人達の話 ❏美織
私、榊美織さんは怒っていた。
彼、秀くんに…
「みおちゃ〜ん♡体育祭大丈夫だった?!」
1度家に帰ってシャワーでも浴びてきたらしい秀くんは、爽やかな笑顔で両手を広げて私を迎えようとする…。
私はプイッと顔を横に振って 怒ってます アピールをした。
その様子に秀くんは困惑していた。
「え…?何で?怒ってるの? どうして?」
「怜那ちゃんにメールしたでしょ! 私をお願いします、みたいな!」
「え? …あぁ!した…けど…?」
「怜那ちゃん、騎士スイッチ入ってたじゃん!もぉ!怜那ちゃんの正義感を煽るな~!」
「…だって 心配だったんだもん…。 小宮山いるし、理玖いるし…。それに佐々木さんならしっかりしてて、安心だし…。」
秀くんが縮こまる。
「…確かに怜那ちゃんは運動能力も高いし、精神的にも強い。責任感もあって、頼っても寧ろ喜んで受けてくれるだろうけど、怜那ちゃんだって女の子なんだよ?そんな、私を守る様な役 頼まないでよ!」
「ごめん。そこまでしっかりお願いしたつもりじゃなかったんどけど…。」
私のお怒りは収まらない…
「怜那ちゃんってそれで無理しちゃう所あるの!
去年は倒れてきた教材からクラスメイトを守って腕を骨折したし、
この前は絡まれていた他校の子を助けて恐い目にあったみたいだし…。
痴漢を捕まえた1件は話したでしょう?
怜那ちゃんって見てしまったら放っておけないタイプなの!!」
「 … 。」
秀くんは私の説明を聞いて、口元に手を当て、考える。
「…それは…、本当にごめん…。」
秀くんは反省したらすぐに謝る。
私も千景さん(秀くんの母)もこの潔さに調子が狂う時がある…。
「知らなかったんなら、まぁ…、仕方ないけど…。」
私の怒りはぷしゅ〜と穴があいた風船みたいに萎んでいく。
それ以上は何も言えなくなった。
「…でも、今日は何事も無かったんでしょう?」
心配らしくて秀くんが確認してくる。
「今日は、ね!…まぁ、お陰で気がつけた事もあったからいいけど…」
私は今日の体育祭での昼休みのやり取りを思い出す。
私と同じ目線で、理玖くんが怜那ちゃんを心配してくれていた。
しかも、わかりやすく小宮山くんの雑な告白に苛ついて…。
「ふふっ…。理玖くんってわかり易かったんだね…!」
私は思わず思い出し笑いをする。
すごく… 嬉しかった !
怜那ちゃんの見た目じゃなくて
危なっかしいあの内面に 理玖くんが気づいてくれていた事…。
それから…
そんな怜那ちゃんを好きでいてくれている事…。
「理玖がどうしたの?」
秀くんの言葉に、私は嬉しくて微笑む。
「理玖くんが素敵だなーって思ったの!
はぁ… 愛が詰まってるよ…♡ 」
私は胸に手を当て左右に揺れてしまう。
胸がキュンキュンする…
怜那ちゃんのあのキラキラは理玖くんの影響だったのかなー?
だとしたら… つきあうのかな~?
怜那ちゃんと理玖くんが ?!!
きゃー♡ /// お似合いかも…!!!
私は顔を赤くして1人で興奮する。
「…なに、みおちゃん、理玖が好きなの…?」
ハッ!!!
秀くんの低い声に気がつき、 私は冷や汗を流す。
「ち…違…っ!」
「ふーん…。そんなに素敵だったの…。 理玖…」
秀くんはにこやかだけど目の奥が笑っていない…。
しまった! めちゃくちゃ怒らせた!!
今更ながらに自分の浅はかさを反省するが、後の祭り…
秀くんが「逃さない」とばかりに私の手首を捕える。
私はジリジリと後ろに下がり、秀くんと一定の距離を保つ。
「違うよ~!いや、違わないけど、違うよ〜!!」
秀くんの圧に涙目で訴える。
壁に追い込まれて逃げ場を失う。
掴まれた手首も解けない…
これから何かのお仕置きでも始まるのかと、私は身を強張らせる。
「理玖の どこがそんなに素敵だったの?
じっくり 教えて…?」
壁と秀くんに挟まれて身動きが取れない。
耳にダイレクトに話しかけられてゾクゾクする…。
「…っ! 秀くん… ! 」
この先にどんな事が起こるのか 不安で 慌てる。
頬に秀くんの手の温もりを感じてドキッとする。
堪らずに ぎゅっと目を瞑る。
キス… される ?
「…?」
何も… されない …
恐る恐る目を開ける。
秀くんがにっこりと微笑む。
「なあに? キスして欲しかった?」
かあぁぁぁぁっ ///
秀くんの言葉に、私は顔がみるみる赤くなる。
「それとも本当に、理玖が良かった?」
「…意地悪っ! /// 」
私が睨むと
秀くんがグッと顔を近づけて、静かに言い聞かせる。
「みおちゃんが悪いんだよ? 理玖の事、嬉しそうに話すから…。」
私はぎゅっと秀くんの首に抱きついた。
「…キス して…。秀くんとしか しないから ///」
私はいつからこんなに積極的にキスを強請る様になった…?
いや、コレは
秀くんに 言わされている… 気がする…。
こんな事 言うなんて 恥ずかしくて…
秀くんの顔… 見れないよ…
顔が
熱い…
「 … いいよ。」
秀くんがクスッと満足そうに笑う 。
「秀〜! もう帰るわよ~! 明日も早いんでしょ〜?!」
1階から千景さんの呼ぶ声が聞こえて、私は固まった。
秀くんは構わずに
私に罰を下す様に 荒々しいキスをした。