騎士(ナイト)
運動会は午前の部が終わり、昼休みに突入。
お弁当タイムになった。
「じゃ〜ん!!♪」
美織がお弁当箱の蓋を開けてお弁当を披露する。
「怜那ちゃんの大好きな鶏おこわにしました!」
「女子力高…っ!(笑)」
私は目の前で披露された完成度の高いお弁当に感心する。
「煮物に 鮭の西京焼きに…
美織…私の好みをよく知ってるわね〜!
しかもおにぎり1つ1つにリボンを巻いて…。
コレ、時間がかかったでしょう…。」
私は巾着風に可愛くラッピングされたおこわのおにぎりを手に取る。
「怜那ちゃんに喜んで貰うためだもん♡ あ、秀くんにはこんな事しないよ?すぐ食べちゃうんだもん!こんなに拘るのは怜那ちゃんにだけだよっ♡」
おにぎりを持たない方の私の手に、美織がそっと両手を重ねて上目遣いに見てくる。
「〜〜っ/// 美織!可愛いやつ…!キスしちゃう♡」
私は美織をぎゅっと抱きしめる。
「きゃーーー♡」
美織も声をあげた。
「うわぁ… 女子校の悪ノリ やめなさい!」
いつの間にか居た春花に突っ込まれた。
「あ、見られちゃった?やっぱり2人きりの時じゃないとダメね、美織…(笑)」
「そうだね… イチャイチャはお預けだね、怜那ちゃん…」
美織もわざと残念そうな顔をして寸劇を終わらせる。
それから実紅ちゃんと小宮山くん達がぞろぞろと会いに来てくれた。
「うわぁ~!小宮山くん!!! 久しぶり!!!」
美織が興奮して話す。
「団長!久しぶり!」
小宮山くんは運動会だからわざと美織を応援団長と呼ぶ。
一気に6年生の運動会に戻された気分になる。
「もぉ〜、恥ずかしいからヤメテ〜///」
美織が顔を赤くする。
「秀はどうした? もしかして別れた?」
小宮山くんがニヤニヤして聞いてくる。
「別れてません! 今日は部活なんだって〜」
美織が説明する。
「なんだ〜!別れてたら付き合って貰おうと思ったのに〜(笑)」
「もう! それネタだね!」
美織が大笑いする。
「え〜、廣澤くんに代わって、今日は私が美織の護衛なんだから!美織にちょっかい出したらダメよ〜(笑)」
私がズイッと美織を守るように小宮山くんの前に出る。
「マジか!」
小宮山くんが慌てる。
「佐々木は強いからな…! …でも、なんか、キレイになったじゃない? 俺と付き合わない?」
一瞬 小宮山くんの目がマジで慌てる。
「うわぁ…、見境なし〜!(笑)
ご遠慮させて頂きます♪」
にこやかに返す。
ふと、美織と理玖くんが話している事に気がつく。
それから
美織と理玖くん2人に見られるとドキッとした。
「佐々木さん 久しぶり…!」
理玖くんが近づいてくる。
「もう、変な人に絡まれたりしてない?」
こそこそと話してくるので、
私は小宮山くんを指差して理玖くんに訴える。
「今、美織がダメだったからって私に絡んできた!」
「ああ、それ見てた!嫌だよね〜、見境なしって!」
理玖くんが小宮山くんに白い目を向ける。
「見境なしじゃね〜!ちゃんと可愛い子にしか声かけない!」
「うわ… 見た目だけ… サイテー(笑)」
それから理玖くんに向き直る。
「1000メートル見てたよ!1位だったね!!」
理玖くんは顔を赤くして下を向く。
「…いつもより距離短いし、キロペースを少し突っ込んだだけだから…。でも何か、記録会より緊張した…。」
「えー? 何で?」
「…何か佐々木さんが見てると思ったから…」
「またまた!(笑)」
ポンッと軽く背中を叩く。
! ? !
理玖くんの体がしっかりしていた。
2年前の あの よろけていた理玖くんとは
全然違ってた…。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ❏理玖
体育祭を終え、教室で着替える。
「な〜!何かすごいキレイな子、いなかった?!」
「あぁ!佐々木さんの事だろ?」
ピクッ 自然に耳がキャッチする。
「芸能人みたいだよな~!スタイル良くて、顔小さくて…!」
「小宮山が速攻でフラレてた!」
「ウケる…!身の程知らずだな!彼氏いるだろ。ふつーに!」
「だな…!」
何だろう… その会話が すごく苛つく…。
体育祭の昼休み
佐々木さんは実紅とか、みんなに囲まれてた…。
「廣澤くんに代わって、今日は私が美織の護衛なんだから!」
調子のいい小宮山から、美織ちゃんを守ろうとして出た佐々木さんの言葉 に 俺は溜息をついた。
今日は美織ちゃんの騎士なんだ…?
秀の代わりだって?
何、易々と引き受けてるの…。
それから小宮山が佐々木さんに「付き合って…」なんて軽く言うから 苛つく…
「…ねぇ、理玖くん…。」
いつの間にか隣にいた美織ちゃんが俺に話しかける。
「あ…!久しぶり…」
「うん。理玖くん、すごく背が高くなったね!」
美織ちゃんがにっこりと笑う。
…やっぱり美織ちゃんの笑顔は普通に可愛い…と、思う。
それから美織ちゃんは佐々木さんを見つめる。
「…理玖くん、怜那ちゃんって困っちゃうよね…。」
「え…?」
突然の美織ちゃんの言葉に困惑する。
「怜那ちゃん、自分が普通の女子より強いと思ってるんだよ…。こっちが心配になるよね。」
「 …。」
咄嗟に何と返して良いのかわからなくて言葉が出なかった。
安易に そうだね って言ったら…
それは …
「理玖くんの分まで秀くんに怒っておくね!」
「 …。」
俺は美織ちゃんに困惑しながら佐々木さんを見た。