体育祭
体育祭の日は よく晴れて
気持ちの良い秋晴れ
しかし日差しは強い…
私はスポーツメーカーのキャップを被って、ジーンズに7分袖のプルオーバーパーカー、スニーカーというラフな格好で出掛ける。
普段、校則で髪を結ばなくてはいけないので、久しぶりに髪をおろした。
美織の家に行って美織をピックアップする。
美織は髪をゆるゆるに編み込んで、可愛いヘアゴムをつけていた。
そして美織が大好きなワンピーススタイル。
… 可愛い過ぎる…
デートに行くんじゃないんだぞ?!
と、心のなかで突っ込む…(笑)
まったく…
男避けを頼まれているこっちの気も知らないで…
私は気合いを入れて美織を守る事を誓う(笑)
それからふたりで中学校を目指す。
私達が受験しなかったら通う筈だった中学校…。
確か、小学校3校から集まってくる学校だから規模が大きい。
中学校へ着くと、開会式、準備体操が終わり、競技が始まる所だった。
私達はその横をこそこそと、事前に実紅ちゃんに知らされていた、3年生の保護者席を目指して進む。
次の種目の準備等で動いている生徒も沢山いる。
ふと、
「え、あの人、佐々木さんじゃない?」
という声がして振り向く。
「やっぱり〜!! 1こ上にいたじゃん!! 小学校の時…あのきれいな人…!」
「あ〜!!! 今も凄い美人さん…!手足長〜!色白〜!モデルさんみたい〜♡」
見覚えのない女の子達がどうやら私で騒いでいる。
あなた達の方が可愛いわよ…
私はにっこりと微笑み返す。
と、
「きゃ〜♡ /// 」と黄色い声…。
「怜那ちゃん…。ファン増やさないの…!」
美織が心配そうに顔を覗き込んでくる。
「…何でそんなに心配そうな顔してるのよ。まさか嫉妬 ?!」
私はニヤリと笑って美織をからかう。
「違〜うっ!!///」
美織は真っ赤な顔をしてぽかぽかと私を叩く。
「あらあら♡顔を真っ赤にして怒っちゃって、可愛い〜♪今日は1日中離れないから安心しなさい!さらわれちゃったら廣澤くんに怒られちゃう…。」
ふと美織が私の袖をぎゅっと掴んで悲しそうな顔をする。
「? どうした…?」
「怜那ちゃん… 私…っ…!」
美織が話し出そうとすると、
「嫌ぁねぇ〜、こんな所で! 宝塚の悲恋物語でも上演中かと思ったわよ!」
声のする方に振り向くと、ジャージにハチマキ姿の実紅ちゃんが立っていた。
「おおっ!実紅ちゃん! すっかり大人になって…」
私が言うと、親戚のオバサンか!と突っ込まれた。
「こんな通路に突っ立ってないで、ほら、移動して!」
今度は背中を押されて半ば強制的に保護者席へ移動させられた。
「ここに座ってて頂戴な!もうすぐ100メートル走だからコミィが出るよ!」
コミィとは小宮山くんの事。
「相変わらず足、速いんだね!」
美織は小学校の時の運動会を思い出している様で嬉しそうにする。
「んで、その後に女子の800メートルがあって、終わったら男子の1000メートル走がスタートするよ。理玖、応援に来てくれたんでしょう?」
実紅ちゃんが確認するように私を見る。
「…うん? まぁ…。」
「応援に来てくれてありがとね♪じゃ、私は自分の席に戻るね。また後でゆっくり話そう!」
実紅ちゃんがにこっと笑って離れて行った。
別に理玖くんだけを応援に来た訳じゃないんだけどな…。
私は特に突っ込めずに実紅ちゃんの背中を見送る。
それから美織に振り返る。
「美織がさっき言おうとした事は何?」
と、声をかけようと思ったのに、
すぐに行われた100メートル走のスターター音で、私はすっかり聞きそびれてしまった。
100メートル走と、フィールド内ではハンドボール投げが同時に開催され、一気に目が忙しくなる。
100メートル走は小宮山くん始め、知っている同級生もちらほら…
懐かしさと、みんなが成長している驚きと、応援しながら見るわくわく感で、すっかり楽しんでいた。
そうして1000メートル走がスタートする。
「理玖くん、どこ?いた?」
美織が声をかけてくる。
「え?あそこにいるじゃない。今2番目に出てきた子…。」
私が説明しても美織はピンときていない様子。
「…美織…、今日コンタクトしてるんだよね?」
私は一応美織の視力を確認する。
「してるよ!/// … あ、あれ… ?
えー 理玖くん…? 何か…雰囲気変わったねー…。」
美織が驚きの声をあげる。
「背、すごい伸びたよね!」
私が言うと
「うん…。すっかり可愛い感じが無くなっちゃって…。」
そう言いながら膝立ちで美織が理玖くんに見入る。
「ふふっ♪ 浮気?」
私が聞くと
「秀くんに殺される…(笑)」
美織も笑う。
「私、最後に会ったの2年前だもんね…。」
美織の言葉に、私はその時の事を思い出す。
駅の近くのカフェで3人で会った。
その時美織は廣澤くんに会えていない時期で元気が無くて…
でもカラ元気を振りまいて、その時も大好きな小説の話で理玖くんと盛り上がっていた。
エルダナの冒険…?だっけ?映画化するとかで、キャスティングだのシチュエーションだの、楽しそうに話していた。
ふと理玖くんが「…元気ないね。」と美織の様子に気がついた。
「そんな事ないよ〜」って美織は笑った。
「一緒に映画に行く?」
理玖くんに聞かれると美織は顔を横に振った。
「…ごめんなさい。…秀くんと行きたいな…って。」
その様子があまりにも寂しそうで…
「僕だったら美織ちゃんにそんな顔、させない…」
そう言った後に理玖くん自身、すごく驚いた顔をして、すごく焦ってた。
隠していた本音がポロリと出た感じだった。
美織はにっこり笑って「ありがとう。」って言って、
「でも、ごめんね。この寂しさは秀くんしか埋められないの…。理玖くんにそんな事を言わせて、本当に…ごめん…。」
その後2人して暗くなっちゃって…
あの時は 本当に 困ったなー…。