呼ばれる
「“隠れる”って、“死ぬ”って意味もあるんだよ。」
その言葉を聞いて以来、かくれんぼをする度にそれを思い出すようになった。
見つかりづらいプールの陰に身を潜めていると、やっぱりそれが頭をよぎる。
日影にいてもジリジリ暑い昼休みに、ひたすら時間が過ぎるのを待つ。
頭がくらくらする。
かくれんぼって、不思議だ。
誰にも見つからない場所を探しながら、結局見つけてもらえないと寂しい遊び。
見つけてもらうことを他人に期待して、独り空白の時間を過ごす。
もし、かくれんぼと死が同じ構造ならば。
死んだ人は、残してきた人に、その消息を見つけてほしいのだろうか?
誰もその願いを叶えてくれなかったならば…彼らは泣くのか、怒るのか。
ああ、“祟られる”ってそういうことなのかな…?
校庭の方からは、女子達がバレーをする歓声が聞こえてくる。
彼女らが楽しくボールを回す中、ぼくはこんな所で一人、何をしているのだろう。
恐らくぼくを探す友人、ぼくなしで回る世界。
隠れたまま、隠されたまま、見つけてもらえなければ、元の世界には戻れない。
そうやって今も見つからない人もいるのだろう。
ぼくは今、死んでいるのだ。
最高の隠れ場所だから、きっと友人達は辿り着けないだろう。
今から100年後に、本当に珍しい、ぼくと波長の合った人がまた、この場所を見つけて、良い隠れ家とするかもしれない。
そうしたら、ぼくはやっと久々に人に会えるのだ。
隣に100年前の服装をした女子が、ニコニコ笑っているのがみえる。
“呼ばれる”ってそういうことなのか…。
と、そこで予鈴が鳴った。
気付けばぼくは、昇降口まで帰ってきていて、友人達から、お前はどこにいたんだ、と称賛される。
「明日もかくれんぼ、やろうぜ!」
ぼくたちは、死に憧れているのかもしれない。
終
お目通しを頂きありがとうございました!
ホラー作品を書いたことはありませんでしたが、お世話になっている「小説家になろう」のサイト様のイベントと、ホラー好きの読者様の読書タイムをほんの0.000...1ミリでも盛り上げられたら!と思い、書いてみました。
失礼しました_(。-_-。)_