女の子
変化はすぐに訪れた。画面の中に女の子が表れて動いている。腰まであるツインテールを揺らし、その細い手足を動かしている。服装は灰色を基調としたワンピースのようなもので、緑色を基調とした装飾が施されている。控えめに言ってもとてもかわいらしい。
しかしなんだか怒っているように見える。
「なんかこの子見覚えあるな。すごくかわいいし。何かのキャラクターかも」
「とすると何かのアニメーションが再生されたのか?」
僕の発言に対しヒロはうーんとうなって手を顎に当てる。画面の中の女の子はじたばたと手足を振って、何か口をパクパクしながら言っているようであるが、何を言っているのかさっぱりわからない。するとヒロはあっと手を打ち、
「スピーカーをつないでみるか。」
といった。確かに音声付きの何かメッセージなのかもしれない。使用説明とか。女の子が怒っているみたいなのはよくわからないけど。
ヒロはガサゴソと僕がおじぃさんから渡された袋をあさる。
「やっぱりあった。」
と言ってスピーカーらしきものを取り出し、パソコンの端子の一つにさした。画面の中の女の子はスピーカーが刺さったのに気が付いたようだ。何やら画面に音量設定らしきものが現れる。なんだがとてつもなく嫌な予感を感じさせる画面が続くが、設定が終わったのか5秒ほど無音だったスピーカーから音声が流れだした。
「この変態!!!どこ触ってんのよ。レディの体を急にあちこち撫でまわすなんて意味わかんない。」
急な大声にびっくりした僕らは慌てて耳をふさぐ。スピーカーのボリュームが最大だったのもそうだが画面の中の女の子はおそらくできるだけ大きな音声を出せるように設定をいじったのだろう。もしかしたら効果的に僕らの耳を破壊できるように音声を合成していたのかもしれない。意識が一瞬遠くなるのを感じた。それほどまでに女の子がご立腹だったのは間違いない。
数秒ほど耳がキーンとして何も聞こえなくなった。ヒロも同じのようだ。地面にうづくまっている。おいおい気絶してるんじゃないよな。少し心配になりながらも僕はそんなヒロを傍目に見ながら画面を見た。
大声で怒鳴って気が済んだのか女の子はきょろきょろとあたりを見渡している。
「そうだったわ」
と彼女はあたりを見渡すしぐさをやめ、音量の調節をしている。先に音量調節してしゃべれよ、まだ耳をふさいでいてよかったと僕は思った。音量の調節が終わったのか彼女が話しかける。
「カメラとマイクも付けなさい」
耳がキーンとしているが何とか聞き取れた。というか聞き取りやすかった。そういうしゃべり方をしたようだ。こいつ大音量で怒鳴りつけるのよくやってるんじゃなかろうな。と思いながら僕はごそごそと紙袋からマイクとカメラらしきものを探しはじめた。