始まる崩壊4
下水道の探索に参加した兵士は50人、一個小隊を預かった。
俺達は死ぬほど臭い地下世界を隅々まで探索していく。
「………。」
俺は、まだズキズキ痛む腹を抑えながら、職務に没頭していた、もう一週間はたっている、その間前線は抜けちまったが、ソルバルトとハンスの二人だけでまぁ十分な作業だった。
俺は今回かれらと組んでいない、変わりっちゃなんだが、参加メンバーの兵士に顔見知りがいた。
「………こんなところに女の子かぁ、そしてそれを必死で追いかける変質者が3人いたらしいんですよね、誰でしょうね。」
「うるせえ。」
そのとき、俺は歩いていると、なにか物音がした気がしてそっちの方向に方向を変える。
「………?いないか?」
「………っ!!!」
後ろから切りかかってきた女の子の手を、俺は難なく受け止める、あのとき俺から奪った短剣がカランと落ちた。
「離して!」
「無理だ、人様をぶっ刺すやつのどこを信用できる。」
「それはこっちのセリフよ!!どうせ、今まで悪逆非道の限りを尽くしてきたんでしょ!
どうせ、兄さんだって!!」
「………よくわからないが、とりあえず言っておくと、俺達がこの都市にやってきたのは一ヶ月くらいだぞ?この都市の異変を調査するために来たんだ。」
「………なんだか知らないけど、あいつらとは違うの………。」
「あいつらとは、一体誰を指しているかにもよるな。」
「………知らないの?全身黒ずくめ、フードを被って街を闊歩しているあの薄気味悪い連中よ………本当に知らないの?信じられない。」
「そんな人間は見たことも聞いたこともないんだが………。」
「なんだそりゃ、まるで古代の黒魔術結社みたいな連中だ。」
「………私達は、ずっとこの街に住んでたの。」
「私達?」
「お兄ちゃんがいるわ、お兄ちゃんと二人暮らしで、ずっと、ずっと………でも、奴らのせいで全部壊されちゃった、あの黒フードの集団が家を焼き払っちゃって、それで、私達はこんなところに逃げて………目が冷めたら、お兄ちゃんがいなくなってた。」
「………お兄ちゃんねぇ。」
「………。」
俺達はしばらく黙りこくっていたが、やがて女の子の方から切り出してくる。
「………ねぇ、できることなら、私のお兄ちゃんを探し出してくれない、きっと、この下水道の何処かにいるはずだから………。」
「………わかった、やってやるよ。」
別に完全に親切心でやっているわけではない女の子の兄ならそのよくわからない黒フード人間たちについてなにか知っているはずだからだ。
「………ぁ………。」
「おい!」
女の子の明滅が始まり、存在が薄れていく。
「………私はマリア、お兄ちゃん、見つけてね………。」
「………。」
そして、女の子は時空の間に消えていった。
「で、あの女の子の言うお兄ちゃん、どこにいると思う。」
「………わからんな、だいたい、あんなふうに消えたり現れたりされていては、一度探索したはずの場所にじつは透明になった状態でいましたなんてことになりかねないのでは。」
「………。」
その時だった、天井を破壊しながら、俺達に向かってきた一体の化物。
「うぉぉぉぉぉ!!!!!?」
俺は叫びながら間一髪避ける。
「ちくしょぉぉう!!!」
「エヴァァァンズ!!!」
「いや、いちおう生きてますよ!!」
俺はハルバードを構え、エヴァンズは後方に下がって援護射撃するようだ。
「………。」
化物と俺はジリジリと間合いを詰めて、次の瞬間、俺の方から詰め寄る。
「はぁっ!!!!」
超神速で放たれるハルバード、大砲かなにか
が直撃したかのような爆音をたてて突き刺さる。
血しぶきが飛び散る。
「………そこだぁ!!」
俺が飛び退いたところをエヴァンズが傷口に向けて銃を撃つ。
悶え苦しみながらどんどん奥へ逃げていく化物………突然その先から炎が上がり、化物は燃えおちていく。
「思ったほど強くはありませんな。」
「それでもあの巨体は結構な脅威になると思うが。」
死体を乗り越えてやってきたのは、ソルバルトとハンスだった。