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始まる崩壊3

「貴様!!」


そいつはジリジリとソルバルトの気迫に押され、青白い顔で下がり始める。


だが、次の瞬間。


「………くそっ、このタイミングでか………!」


やつの姿は緩やかに明滅を始め、やがて………虚空の中で消えていく。




「………大丈夫かローレンス。」

「………さしずめストーカーってところか、俺は………。」


びっくりしすぎて思わず体が動かなかった、まさか、俺達が追いかけていたマントの奴が、年端も行かない女の子だったとは。


「………くそっ。」


俺はそうソルバルトに支えられながら悪態をつく、胸甲に当たれば無傷で済んだはずだが、それをわかって腹にさしたのだろう。


「……………やつの正体は一体何だったんだ。」

「まったくわからないな。」

「………そもそもだ、そんなことを言っている場合じゃないみたいだぞ。」


俺達が空を見上げると、無数の異形が、空を浮遊している。




「………子爵様!!」

「おお、ローレンスくんは大丈夫かね!!」

「………平気です、手当は受けていますから。」


そう言いながらも俺の顔はきっと青白くなっているだろう、血が足りないため意識がやや朦朧とする。


「………よし、これから会議を始めよう、議題はまず、空のあの化物についてだ。」

「………あの、骨と肉の塊みたいな球体ですか。」

「そうだ。」


恐ろしい異形が空をふわふわと浮遊しているその姿、すでに兵士達が半狂乱に陥り中には脱走したものをいるという、無理もない、正直なところ俺達だって正直今すぐ逃げたい、ただ使命感がそれを止めている。


「………やつはいま、半透明の状態で明滅を繰り返しています。」

「あぁ、だが騎士団の駐屯地であったように、あの幻かなんだかよくわからないものがいつ実体化するかもわからない。」

「どうしますか………。」

「いま伝令を走らせて、応援を呼んだ、直ちに軍隊が到着するが、果たしてどこまで戦えるのかはわからない、なにせ対空戦闘なんて我々はしたことが無いからな、厳密には、古代に英雄たちが竜などの飛行魔獣を片端からぶち殺して回ったときから、ずっとだ。」


もっとも、こっちは銃火器という最高の飛び道具があるし魔導兵も魔法の効率化で古代の頃とは比較にならない、意外に苦戦することはないのではないだろうか。


「………それより、カイレン、そろそろできないのか………?」

「………これは、どういうことだ………あぁ、すみません、まだもう少し時間が掛かりそうですが………ただ、すこしだけ、お話できるかもしれません。」

「伯爵邸の研究資料に関して、なにか進展が。」

「あぁ、カイレン研究員がいうにはな。」


カイレンは立ち上がって言う。


「………この研究資料は、私がざっと読んだ結果時空間に関する研究資料であることが分かりました、伯爵邸では、どうやら我々の世界をそのような時空間の面から研究していたようなのです。」

「どういうことだ?」

「私は、この何十行とある方程式を必死に読み解こうとしました、これは最先端の時空間研究に匹敵する高度なものであり、一応私の専門ではありますがそれでも多大な時間を要しました。」

「結果を早くいってくれないか。」

「………様々な学術的根拠を提示した上で………研究資料は、この世界が元々はあらゆる事象が一つの世界で巻き起こっていたことがわかりました………意味がわかりませんよね。」

「「「「まったくだ。」」」」


そうみんなが異口同音で叫ぶ。


「例を上げましょう、ここにりんごがあったとして、りんごにはある状態とない状態が存在しますよね、そして、その世界では、ある状態とない状態が、なんと両方存在するのです!!!」

「………………。」

「………まだピンときませんか、まぁ気持ちは分かります、ある状態とない状態がどちらもある重ね合わせ状態のとき、いったい世界はどうなるのか?研究資料の方程式を見るだけでは状態は知れても実感はしれません、だから私もわからずにいましたが、あの明滅する人間達をみてピンときました、これは電流で言うところの交流と直流のようなものです、我々は普段直流の世界にいます、そこはプラスとマイナスどちらかしかない、しかしプラスとマイナスを両方もっていると、定期的にプラスになったりマイナスになったりするのです。」

「うん、うん、交流の例えでなんとか理解が追いついたよ。」

「子爵すごい。」

「直流?交流?何それおいしいの?」

「で、それは事件と関係するのかね。」

「大有りですとも!!いま、この都市は何らかの要因でこの直流が交流になってしまったのです、そして、交流になってしまったために人々が明滅して存在が消えたり現れたりしたり、様々な怪奇現象が起きていたのです………それが、今のところ私が研究資料を読み解いた結果でた結論です。」

「………なるほど、だいたいわかったが、そういえばあの子供の落書きみたいな絵に関してはどう説明してくれるのかね。」

「………それが、それに関してはちょっとまだわかりません、研究資料の中にあの絵を指していると思われる単語が多数登場するのでおそらくおおきな関連があるのだろうと思っていました、そして最近になってこれは、この研究理論のモデルケースであるのではないかと思ったんです。」

「モデルケース?」

「そうです、方程式で表されるただの文字の塊ではなく、現実的な面での………見本、みたいなものですかね、天動説と地動説ってあるじゃないですか、方程式ではなくて、地球が太陽を回っている、太陽が地球を回っている、とかそういう言葉や情景で理論を表すのですよ、あれはおそらくそういうものだと思っています。」





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