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鏡面談と円卓家族  作者: 雲雲雲龍龍龍
平沢家
1/5

低血圧な日向

 一重瞼が嫌。


 団子っぽい鼻が嫌。


 少し出っ歯なのも嫌。


 どうして私はこんな顔なんだろう。


 午前5時半に起きて、顔を洗い歯を磨くと部屋に戻ってメイクボックスを取り出した。ガチャガチャと中身をひっかき回してブラシやら二重糊やらを取り出すとお気に入りの地下アイドルの新曲を流しながら顔を弄り始めた。


 フチなしの薄いブラウンのカラコンは少し大きめの直径13.5ミリがお気に入り。

 日焼け止めを塗り、ベビーパウダーを薄く叩いて、二重糊で瞼の形を整える。あとはブラウン系のアイメイクをして薄らチークとピンクのリップを塗ったら完成。


 鏡の中には可愛い女の子がいた。


 ヨレヨレのジャージを脱ぎ捨てて県内でも1番可愛いと言われる戦闘服に着替える頃には6時を過ぎていた。


 スカートは膝上10センチぐらいが可愛いし、カーディガンはオーバーサイズのほうが可愛い筈。


「日向! 早くしなさい! 20分には出るわよ!」


 朝は気怠くて、学校に行く準備をしたら後は何もしたくない。ご飯も食べたくないし、お喋りする気もないから、SNSを開いて面白い話だけするのだ。嫌な事を言われたら相手との繋がりを切ってしまえばそれまでだし、言いにくい事も何でも言えるからSNSは好き。


「日向! 遅刻しちゃうでしょ!」


 なんだか余計に気怠くなった感じがして、荷物を持って少し強めにドアを閉めた。階段をドカドカと降りると机に置かれた弁当箱を鞄の中に突っ込んでキュルキュルと嫌な音を立てる車へ向かった。


「忘れ物はない?」


「ない」


 シートベルトを締めながら言うと、ラジオから音楽が流れ出した。ベートーヴェンの「月光」だ。それと同時にキュッと音を立てて車が動き出した。まだ薄暗い国道に、他の車は見当たらず空には取り残された月が薄く光っていた。10分程度のドライブの終着点は寂れた駅で、入り口に車が停車すると素早く降りた。


「いってらっしゃい」


 いつも通りの声を背中で受け止めると、自動改札機のない改札を抜けて駅員に定期を見せた。今日も2時間の長旅が始まる。長旅が終われば友達が待つ場所に行ける。


 いつもの席に座った私は静かに目を瞑った。

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