6.憂鬱な誕生日会から…(ネロ視点)
どうしてもネロ視点が書きたかったようです←
俺の名前はネロ・フォルダン。
そして今、一応幼馴染みの誕生日パーティーの会場にいる。
俺は別にそんなに来たくなかった。
幼馴染みと言っても表面上の付き合いのつもりだ。
正直、その子の性格は最悪だし、爵位だとか、父の仕事関係の事とか無かったら絶対に関わる事をしなかっただろう。
人の話は聞かないし、全て自分が基準で気に入らなかったら直ぐに喚く。幼いながらもこの子はダメだ、と思っていた。
俺自身、その子といるのがだんだんと嫌になって父に無理を通し勉強やマナー、剣の稽古など習い事をたくさん詰めてもらってなるべく会うことのないようにしていた。
しかし、イベントごとには流石に顔を出さないといけない。
だから俺は今ここにいる。
―クロライア家の屋敷に。
俺の幼馴染みと言うのがクロライアの一人娘、ミュリエル。
最近は会っていないが月日が経つにつれてわがままな性格は更に酷くなっているだろう。それにセンスという物を何処かで無くしてきたのか普段から奇抜な格好が多く、それにも滑車がかかっているかもしてない。
そんな考えが頭をよぎり、本当に会いたくはないけど来たからには挨拶はしないとマナー違反だ。さっさと挨拶だけ済ませて帰ろう。
俺は覚悟を決めて彼女の姿を探した。
…が、これが一向に見つからない。
また奇抜な格好で直ぐにわかると思っていたのだけれどそう言った服装の人間がまずいない。
おかしい。こう言ったイベント事などいつも飛びついてはしゃいでいたのにそんな姿も一切ない。
でも主役がこの場にいないなんて事はないだろうし…。
とにかく、挨拶を済ませなければ帰るに帰れない。
「…仕方ない、か。」
俺は彼女を探すべく部屋の隅から順に見て回ることにした。
そうして、見つけた彼女に驚いたのは言うまでもない。
彼女はちゃんと会場にいた。
部屋の中心に比べれば少し暗い照明の灯った壁際に。
最初は自分の目を疑った。目の前の彼女は優しい色をしたフィッシュテールのドレスを纏い、昔のわがまま娘の面影はなく静かにそこにいたのだから。
ただ表情が何か難しそうな…悩んでいる様子ではあった。
まぁ、見た目が変わっても話だしたら中身は一緒かも知れない。そう思い彼女に声をかけるべく近づいた。
「今日の主役がそんな所でなにしてるの?」
「…ネロ!」
彼女は顔を上げると驚いたような、でも困ったような顔をしていた。
「なんか雰囲気変わった?普段はそういうのは着ないのに…。」
思わず口から出てしまった。そもそもミュー自身、容姿は整っているし普通の令嬢のように振る舞っていれば人気も高いだろう。ただその性格のせいで周りも困っていたが…。
「今日は侍女達が張り切ってやったくれたの。…ネロもいつもと違ってシュッてしててカッコいいよ。」
それを見て一瞬ドキッとしてしまった。
彼女は笑顔でましてやこんな事を言う子では無かった。
暫く会わなかった間に随分と成長したようだ。
どうやら驚きのあまりおかしな顔をしてしまったらしい、ミューに眉を潜められてしまった。
「ミュー、こんな所にいたのか。」
そんな時、エド兄さんから声が掛かった。
流石、エド兄さん。助かったよ。このまま2人でいるとまた何かいらない事を口走りそうだ。そう思いながら2人の話に耳を傾けると、どうやらミューのお父様がお呼びで合わせたい人がいると言う。
それを聞いたミューは複雑そうな顔をしたが意を決したらしく「では、行ってまいりますね。」と踵を返した。
ミューが去ってから直ぐエド兄さんに聞いた新しい家族についての話に俺は更に驚く事となった。
今日のこの誕生日会は良くも悪くもとても印象に残る物となった。