13.お買い物と出会いと…1
お久しぶりです。
やっぱり色々と納まりがつかず更新するのにかなり空いてしまい申し訳ないです。
これからも亀更新になりますがお付き合いいただけると幸いです。よろしくお願いします。
馬車を降りてすぐ、視界に広がるのはオシャレな建物。
いかにもご貴族様御用達といった感じだ。
どこか落ち着いた雰囲気の外装に色とりどりの花で埋められた入り口。筆記体で書かれた看板は私も耳にしたことのある人物の名前も刻まれていた。
―ババリーナ・ジョルダン
この国一のデザイナーである。
彼女が手掛けたものはどれもこれも瞬く間に流行の中心となり人々の注目の的。上級貴族の女性たちの殆どがババリーナの店の常連さんだと噂を聞いたことがある。
「さぁ、どうそ。」
オルガが開けてくれた店の扉をくぐればその先はもうキラキラ。前世の私なら店内に入るどころか回れ右でお暇するような場所だな…。
「ようこそ、お越し下さいました。クロライア家の皆様。ごゆっくりご覧くださいませ。」
「ありがとう、早速だけどこちらで好きに見させてもらうよ。さぁ、行こうか。」
お兄様に連れられ店の中へと進む。
右を見てもキラキラ…。左を見てもキラキラ…。
お、あれはシルク??
前世の赤字シール、セール品大歓迎の私にとっては触るのも恐れ多い品物の山々。
しかし、そんなこと言ってられない。
オルガのを選ぶ約束をしたんだから!
「お兄様!さっそくなんですけれどオルガの衣装を見に行きたいのですが、よろしいですか?」
「そうだね、今日の1番の目的はオルガの衣装だからね。」
と、お許しも出たので私たちはオルガの衣装を見る為に男性物の置かれているコーナーへ移動する。
ほんの一瞬だがお兄様の顔から表情が消えたような気がしたがきっと気のせいだろう…。
ーーーー
「凄い品揃えですね…!」
そう、本当に沢山の種類・カラーの物が所狭しと置かれていた。
選び始めた頃は、こんな高価な物ながい時間触れてられないとか汚したらどうしようとか前世の私が顔を出していたが色々と吟味しているうちにお店の雰囲気にも慣れたのか、そんな気持ちは薄れて今ではあれでもない、これでもないとお買い物を満喫していた。
……うん、私もまだ女の子だったわ。よかった。
オルガに一番ぴったりな物を選ぶべく色々と探し回る私を暖かな目で見守る2人。
そんな彼らに気づくことなく私はずんずんと奥に入りお目当てのものを探して進む。
「本当に昔のミューとは比べ物にならない。それもオルガ、君が来てから余計にそう感じる。…君が何かしたのか?」
「…いえ、何も。むしろ僕の方が色々として頂いてますよ。ミュリエル様の噂も伺っておりこちらに来たばかりの頃は少し警戒していたのですが、いらぬ心配でした。」
「そうか。ミューもちゃんと令嬢として一応は成長しているという事なのか。」
後方で2人がそんな事を話しているとは知らずに私はないセンスを振り絞って頑張ってます。
そんな沢山の物に囲まれている中、ふと目に止まった一着。
私はそれに惹かれるように手に取り2人の方を振り向いた。
「オルガ!貴方にはこれが一番似合うと思うの。」
私が手に取ったものは黒のジャケットとパンツ。ぱっと見どこのお屋敷に行っても目に入るようなもの。
「これ、普通の黒に見えるでしょう?実はね…」
私はジャケットを光がよく当たる位置に持っていくとあら不思議。少し紫がかった色になるのだ。
「これはまた面白いものを見つけてきたね。」
「だってお兄様、クロライア家は紫色なのでしょう?なら、隠れ紫だって良くありませんか??それにオルガの赤い瞳にはやっぱり黒かなと。」
「それもそうだ。いいと思うよ。」
「ねぇ、オルガ。どう思う?」
「とても素敵です。気に入りました、ありがとうございます。」
物凄いキラキラスマイルをこちらに向けるオルガに頑張って選んでよかったと思った。
「よし、次はミューのを見に行こうか。」
「私は大丈夫…」
「実はお母様から必ず新調するように言われていてね。」
ここでお母様からと言われては仕方がない。
今回の参加が決まってからという物のお母様の張り切り様を思えばいらないとは言えない。
「わかりました。…じゃあ、少し見てきますね。あ、でも一人で大丈夫です。お兄様もご自分のものをご覧になられないと。何かあればマリーもいるし、オルガはお兄様に付いていてあげて。」
では、失礼とそそくさとその場を後にした。
だってさ、お兄様たちと一緒にいたら絶対馬鹿高い物ばっかり見てそう。しかも、昔のミュリエルの趣味を知っているからこそピンクのフリフリとか勧められそうで恐ろしい…。
見た目は子供、中身は成人済み。
これは私が耐えられない。
んー、なんかちゃんと見た目相応の物で中身成人済みの私でもダメージの少ないのないかな…。
そう思いながら色々なドレスを物色していると突然声が掛けられた。
「やあ、こんな所で会うなんて奇遇だね?」
「…ネロ?」
なんと、振り返って見るとネロが居るじゃないか。
「実は俺も例のお茶会に参加するんだ。ミュー達が来る前からいて君達が来てたのは知ってたんだけどね。なんだか楽しそうにしてたし声掛けられなくて。」
「そうだったの。別にそんなこと気にしなくても良かったのに。それにお兄様はいいの?」
正直言ってネロは私の事は嫌いなはず。
それに彼はお兄様の事をとても慕っていてお兄様を見つけると必ず話しかけている。
「んー、今はいいかな。また後で話せるだろうし。」
「え!?ネロの憧れのお兄様なのに本当にいいの!?どこか体調でも悪いの?」
お兄様第一のネロのまさかのお兄様後回し発言に驚いて思わず前のめりになってしまった。
「別に体調も問題ないし、そんなに驚く事?」
呆れた顔をする彼に私は思った事を素直に吐き出した。
「だってネロはお兄様の事をお慕いしているのでしょう?姿を見つけてはいつも一番に向かうし…。」
「お慕い………。まぁ、尊敬はしてるよ。それにエド兄さんは俺に色々な事を教えてくれるからね。話しているといい勉強になる。でも、今回は別。…ねえ、ミュー。お茶会のドレス決め兼ねてるんでしょう?」
「えぇ、まぁ……。」
私の答えを聞いたネロは満足そうに微笑むと私の手を取った。
「では、そんなミューに俺のとっておきをお勧めしようかな。」
思ってたより長くなってしまったので切らせていただきました。
また続きは後ほど…。