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10.昔の家と新しい家(オルガ視点)

オルガ視点長くなっちゃいました…!

ネロ視点も書きたいので進んでないお話がさらに進むの遅くなっちゃいますがご了承下さいませ…。


僕の名前はオルガ・テオドルス。


テオドルス男爵家の四男坊であり、1番の厄介者だ。

何を隠そう、僕は謂わゆる妾の子と言われるやつで…。


ここの当主様は仕事は出来るが性格があまりよろしくないことで有名だった。


ある時、仕事で遠方に長期滞在する際に訪れた宿屋でテオドルス家当主(父)と母は出会ったらしい。

宿に到着し従業員たちの出迎えを受けた時が父が初めて母を見つけた。宿屋で働く女性の中で一番若く、そして赤い瞳が印象的ですぐに目に止まった。

それからと言うもの、何かあればすぐに母を訪ねるようになっていった。


母も始めの頃はお客様として接していたが、回数を重ねていくうちにその心にも変化が起きていった。

それもそうだろう、部屋に呼ばれたと思えばプレゼントを貰ったり、花束を送られたり、物と言葉巧みに自分に好意が向くようにしていたのだから。


それからと言うもの2人の関係はさらに発展していくことになった。


最後には父が仕事を終え屋敷に戻る際、母はテオドルス家の侍女として屋敷に一緒に行くことに。

屋敷で待つ夫人には可哀想な子だからうちの侍女として働かしてやりたいと伝え、最初こそ嫌な顔をしていたが母の働きっぷりに次第に嫌悪感も薄れていった。



しかし、それは長続きしなかった。

やはり隠し事というのはバレるもの。


ある晩、父が仕事が詰まっていて部屋にこもるから近づかないようにと言い残し去っていった日の事。

夫人が別の部屋に残っていた仕事の書類を見つけ、必要なものかも知れないと届けに向かった事で発覚した。


そう、実際部屋で行われていたのは仕事ではなく母との密会。この時、既に母のお腹には僕がいて余計に事を拗らせた。


もちろん、母はすぐに屋敷を追い出されることになった。

手酷い暴力を受けて。


しかし、その後も父は仕事だと偽り何度も母の元を訪ねていたらしい。

我が父親ながら懲りない性格のようだ。でもそのお陰で行き場のなかった僕はテオドルス家に引き取られることになった。


実は母は僕を産んだ際に命を落とした。母方の身内もおらずどうするかという時に父が自分の息子だと名乗りを上げたのだ。


引き取られてからというものの正直、いいことなんて1つもなかった。テオドルス家の実の子、三兄弟からは毎日のように理不尽な暴力を受けた。夫人からも妾の子、卑しい子と蔑まれる日々。連れ帰った本人でさえ後は知らないというようなものだった。唯一、自分が安心していられる場所は与えられた小さな部屋だけ。日が昇っている間は義兄弟達にこき使われ、暴力を受け、夫人にもこき使われて、使用人以下の扱いを受ける日々。僕はそんな時間から解放される夜の時間だけが楽しみに生きてきた。


そんなある日のことだった。

「お前はこれから別のところに行くんだ。」

そう言われ部屋から連れ出され、綺麗な服を着せられ髪もセットされた。生まれて初めてこんな綺麗な服を着せられた僕はこれから何が起こるのかわからなかった。


しばらくすると優しそうな顔をしたおじさんがやってきた。おじさんは父に何かを渡すと僕の方へ近づいてきた。


「初めまして、君がオルガ・テオドルスだね?私はハドソン。ハドソン・クロライアだ。宜しく、今日から君はうちで暮らすんだ。」


「お前はクロライア家の従者として是非欲しいとハドソンから言われてね、まぁ、行ってこい。」



こうして僕はクロライア家で暮らすことになった。


正直、クロライア家にも行きたくはなかった。風の噂ではあるが周りのことなんてどうでもいい、自分が一番、人に無理難題を押し付け思い通りにならなければ泣きわめく、おまけにセンスは最悪、という性格の持ち主の女の子がいると聞いていた。

やっと嫌な家から、人から離れられると思っていたのに結局は何処にいても同じなのだ。妾の子である自分の運命なのだと思っていた。




しかし僕の考えはそうそうに変えられることになった。


初めて彼女と会ったのは僕のお披露目の為に連れて行かれた彼女の誕生日会。

シルバーブロンドの髪にアメジスト色の瞳。優しそうに見えてどこか鋭い棘のような雰囲気。如何にも気の強そうな感じが滲み出ていた。

しかしドレスは悪趣味なものではなく柔らかな水色で今まで噂に聞いていた物ではなかった。


自分の父が見えたのかこちらに向かって歩いてくる。


「お父様!お兄様から私を探していると聞いて…。何かありましたか?」


「紹介したい子がいてね。…オルガ・テオドルスだ。これから一緒に暮らすんだよ。うちにはエドがいるから彼にはミューの従者をお願いしようと思っている。歳も近い事だしきっと仲良くできると思ってね。」


すると僕はぐいぐいと彼女の前に押し出される形となった。突然のことに何も出来ないでいると…


「初めまして、ミュリエル・クロライアです。これからよろしくお願いいたします。…ところでお父様、オルガは少し疲れているようです。休ませてあげてください。」


僕の方を見ながらそっと彼女が目元に手をやった。それを見たハドソン様も何かを察したらしく僕の顔を覗き込んだ。


「…どうやらその様だ。少し連れ回しすぎてしまったみたいだね。部屋に案内させよう。悪かったね、オルガ。」


「…いえ、その……。」


「無理はいけない。疲れているときはしっかりと休む事が大切だからね。…では、お先に失礼するよ。折角の誕生日なのだからミューも楽しんで。改めておめでとう。」


「はい、ありがとうございます。お父様。オルガもゆっくり休んで。」


「……はい。」


確かに疲れていた。でもそれを一番にわかってくれたのは一緒にいたハドソン様ではなく悪評絶えない彼女だった。

彼女の事は悪くしか聞いていなかったので本当に驚いた。それと同時に初めて誰かに気遣って貰えたことに心の底から嬉しいと思ったのだ。


翌日、朝食の席につく前の出来事もだ。

僕はいつも与えられた小さな部屋で一人で冷めた料理を食べていた。だから、僕みたいなのがみんなと一緒に食べていいのか悩み廊下で立ち尽くしていた。

その時、朝食の席につくのにやってきた彼女に出会った。彼女は驚いたような顔をしていたが、昨日はちゃんと休めたか等、僕を気遣ってくれ、そのうえウチの食事はとても美味しいのだと食事の席まで手を引いてくれたのだ。


またクロライア家には従者として引き取られた僕は手始めに紅茶の淹れ方を教わるも満足にこなすことが出来ずに、やっぱり僕は何もできない役立たずなんだと思いつめている時だった。いつの間にか彼女が練習している部屋に来ていて声を掛けてくれた。


「…凄いじゃない!オルガは凄いよ!ちゃんと教えてもらって上手く出来るようになろうと頑張っているんでしょ?この部屋の様子を見ればわかるよ。」


「オルガは頑張り屋さんなのよ。だからね、いっぱい頑張った分、いっぱい失敗して、そしてとっても上手になるの。貴方が淹れてくれる紅茶、楽しみにしてるね。」


しかも満面の笑みを浮かべて。

自分に向けて励まして、褒めてくれる人なんて居なかった。ましてや笑ってくれるなんて。


「…あの!僕、頑張るので!!…きっと上手になるので、一番最初に飲んで貰えますか?」


心からすんなりと出た言葉だった。


「もちろん。それと、そんなおどおどしないの。いっぱい頑張っているんだからもっと自信を持って堂々としなさい。もっと胸を張って、自分はちゃんと努力してるんだぞってね。」


「…はい!」


この子は噂のような人じゃない。

そう思った瞬間から僕はきっと彼女の役に立つ人間になろうと決めたんだ。


まずは、彼女が楽しみにしていると言ってくれた紅茶をマスターするべく練習に取り組んだ。

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