白髪の裸体
銀の髪をなびかせながら少女が生まれたままの姿で屋敷を走り回っている。
少女としてはやや不釣り合いなほどに育った胸部を揺らしながら...
「お待ちくださいイール様!」
イールの後ろをメイドが困った様子で追いかけていた。
「そのような格好で走り回られては困ります!」
何故このような惨事に至ったのか、それを知る為には少し時間を遡る必要がある。
(アレが無い...!!)
鏡の前で立ち尽くし、絶句する。
詳細な記憶が無くとも、自身が雄であったことは覚えている。
この場合はむしろ忘れていた方が幸せだったのだが...
股間になんとも寂しい感覚を覚えながらも、やがて興味は別の部位へと至る。
胸部にある存在感に溢れた二つの双峰、女性の乳房である。
感心を抱かずには居られようはずもない。雄ならば。あるいは、雌であっても。
未知である自身の体への興味は尽きないが、その楽しいひと時の終わりを告げる者が現れた。
「では、始めますか。」
意外にもイールはメイドに全身をまさぐられることをあっさりと了承した。
単純に洗われただけだが。
とはいえ性転換という災難に見舞われた者にはメイドの凶暴な胸部はやや刺激が強く、終始目のやり場に困っていた。
ともに身を清めて脱衣所へと向かう。
これが悲劇の始まりであった。
「キツ過ぎるべ!虐待だべ!!」
「そんな事をおっしゃらずに、これもレディとしての務めですから...」
「ヤダ!!!」
振り返りもせず脱衣所を飛び出していってしまう。
ひたすら頭を抱えるメイド。
そして冒頭の痴女案件へと話は戻る。
走り続ける少女を止められる者はもう居ない...と思われたその刹那。
イールは二つの柔らかい膨らみに激突した。
ノーラである。厳密に言えばノーラの胸部である。
「ダメじゃないか、そんな恰好で走り回っては。」
何故か少し顔を赤らめながら語り掛ける。
柔らかい。包まれると甘い眠気を感じてしまうほどの包容力に満ちていた。
このまま眠りへと落ちていこうとしたその矢先にメイドが現れるのであった。
「100歩譲っても構いませんので、せめてこれだけは身に着けてください...」
心底疲れた表情で下着と薄着一式を手にして...
「まぁ、そんなに気を遣う必要もないだろう。来客があるわけでもないし。」
ノーラが悠長な意見を述べるとメイドが眉間にしわを寄せながら反論する。
「私がこの屋敷でお世話させて頂く以上、最低限のマナーは会得して頂けないと困ります。」
「第一、その髪質や肌からしてそこらの村娘ということもないでしょう。」
「であれば、ここに身を置いて頂く合間にも気を払わなくてはこの屋敷の沽券に関わります。」
メイドが整然と正論を述べる。
「わかっているよ。あまり無理強いはしないようにな。」
「ご心配なく。十分に配慮致しますので。」
「それと、イール。あまり、その、服はちゃんと着るようにな」
ノーラは再び何故か頬を赤くしながら忠告すると、そそくさと屋敷の奥へと消えていった。
ノーラが去るのを見送った後、メイドは未だに素っ裸の少女に目をやると、今後も厳しい闘いが続く事を案じてはため息をつくのだった...