レベルアップ
「マモル様、まだまだ夕食まで時間があります。レベルアップに行きましょう。」
さっそくミルスからレベル上げに誘われた。
「いいね、行こう。ところで今何時?」
「今はちょうど午後の2時半です。夕食は6時からになります。あと、武器をひとつ選んでください。」
マモルは腕時計の時間を2時半にセットしつつ、武器を物色し始める。
「武器か。この辺りのモンスターだと、どんな武器がいいの?」
「どれでも大丈夫ですよ。でも剣の方が早く済むと思います。」
「早く済む?」
モンスターを倒してのレベルアップだと思うのだが、なんだか変な会話になっている。少し気になったが、剣を選ぶことにした。
「なんか大量にあるなぁ。どれがいいのかさっぱりわからんが、これでいいや。」
マモルは剣やら斧やらが積み上げられた中から、軽くて切れ味の良さそうな1本を選んだ。
「防具はどれがいいかな?」
「防具はいりません。武器が決まったことですし、さっそく行きましょう。」
ものすごく急展開だが、気分はアゲアゲのままなので深く考えずにミルスについていく。
ミルスは小屋を出ると小川を飛び越え、対岸の向こうに見える森に向かって歩き出した。森のそばに来ると、そこだけ空気がひんやりしているのがマモルにも分かる。
「この森は、私たちの一族が旅人様のレベルアップのために作りました。マモル様には、ここでモンスターを倒していただきます。では、行きましょう。」
「おいおい、モンスターなんて倒したことないよ。大丈夫なの?」
「大丈夫ですよ。とにかく来てください。」
ミルスは鬱蒼と茂る森の中にずんずん突き進んで行く。とにかく、マモルはついていくしかない。運動不足のマモルは、ひぃひぃ言いながら、どうにかミルスについていった。
「マモル様、到着しました。ここで止まってください。」
「やっと着いたのか。はぁはぁ……。で、どうするの?」
「見ててくださいね。」
それまで四足歩行をしていたマルスが2本足で立ちあがり何かを投げると、ものすごい勢いで犬のようなモンスターがミルスの投げた物に食らいついた。
その瞬間、犬モンスターの姿が見えなくなった。
(ね、ねこ○ッチャーだ……)
「さ、行きましょう。」
ミルスが走り出したので、マモルもがんばって追いかける。
ミルスが待っているところに着くと、先ほどの犬モンスターが穴に落ちて瀕死の状態になっている。穴には串刺しの罠が仕掛けてあり、見事に犬モンスターがハマっていた。
「このモンスターはケルベロス、魔王の眷属です。最高レベルのモンスターですから、倒せばかなりレベルが上がりますよ。」
「え?ケルベロス?えぇぇぇ。」
「さ、早くトドメを。」
ミルスに急かされたので、持ってきた剣を抜いてケルベロスの胸の辺りに突き刺した。
「わぅぅぅん」
ケルベロスは無念な鳴き声を搾りだしながら、光の粒になって消え去っていった。
「さ、戻りましょう。」
ミルスが何かを投げたところに戻る。
「さて、レベルは……。マモル様、おめでとうございます。レベル130になりました。」
「え?や、やった~。ミルスありがとう。」
レベル130がどの程度の強さか分からないが、かつてないほどに体が軽くなっている。
「このままレベル上げを続けて、レベル200くらいになっておきましょう。」
「ロンダール村に行くには、どのくらいのレベルが必要なの?」
「だいたいレベル400は必要です。ケルベロスを倒せばレベル200はすぐに到達します。そこから時間はかかりますが、2ヶ月間、毎日10匹ずつ倒せばレベル400になることができるでしょう。」
「ちなみにミルスのレベルはいくつ?」
「私はレベル535です。」
「す、すごいね……。」
「ちなみにロンダール村までの道中には魔王がいます。レベル400あれば魔王も倒せますので、向こうも不用意に襲って来ないでしょう。」
「………………」
その日はケルベロスをあと3匹倒し、レベル200になったところで小屋に戻った。