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アルゴリズム

 サラリーマンなんてやっていると、時おり現実逃避でもしないとやっていけない。個人の尊厳なんて会社にとっては紙くずだ。平日にすり減らした自分を週末取り戻しに行く。こうしてなんとか自分を保っているんだと思う。(俺だけか?)


 現実逃避の方法は、旅行に行く人、飲み歩く人、SNSでリア充をアピールする人、スポーツに打ち込む人など、様々だ。


 最近、異世界ものが流行っているが、これも現実を忘れ、充実した自分を夢見ることができる。


 1年ほど前、暇つぶしの本屋で何気なくライトノベルを手に取ったマモルは、いつの間にかその世界にどっぷりと浸かってしまった。今では、異世界妄想は現実逃避の集大成とすら思っている。


 この歳になるまでマモルはオタじゃないと思っていたが、すっかりその魅力にハマっている。最近の異世界ものの流行りはすごいし、オタの脳内を超越して現実逃避No.1の座に君臨しつつあるのかもしれない。会社で偉そうに演説してる部長も、家に帰ったら剣と魔法のファンタジーにどっぷりだったりして。(ぷぷぷ)


 話は逸れてしまったが、セドリックとの会話は続く。


「異世界はあるよ。だって僕は君と違う世界の人間だから。」


 セドリックは、当たり前のように異世界人だと告げてきた。


「も、もしかして、俺は勇者として召喚されてチートなスキルで無双したうえ、モテまくりのハーレムを作り上げる運命なのか?」


「う~ん。確かにそういう異世界もあるんだけど、僕の話とは違うかな。」


「違うのかよ!……ってか、チート無双世界も実在するのかよ。」


 非常に残念だ。チート無双世界に行きたかった。そうすれば、社畜金なしの生活が一変したのに。


「君、いまチート無双世界で人生大逆転を願ったでしょ。そんなんだから、そっちの世界で社畜になってるんだよ。」


「ぐ……」


 これじゃあ、会社で説教されているのと変わらない。


「さて、お互いに打ち解けてきたところで本題だよ。実は君にお願いがあるんだ」


 おいおい何も打ち解けてないぞと思ったが、セドリックからの提案はとても興味深いものだった。


「これから君はある本を手に入れることになる。その本の中から……」


 セドリックの話を要約すると、彼は今あまり良くない状態にあるらしい。そんな彼を救うため、良い未来につながる何かをして欲しいとのことであった。そしてその何かは、マモルが手に入れる本に書いてあるとのことだ。


「なんとなく言いたいことは分かったけど、どうやって本を手に入れるの?」


 マモルが何かして異世界にいるセドリックを助けられるとは思えないが、乗車率250%の危機から救ってくれた恩人だ。せっかくだから協力してみよう。


「君のカバン……中を見てみなよ。」


「カバン?」


 マモルは歩くのをやめ、道端でごそごそと通勤カバンの中を確認してみた。


「な、なんだこりゃ!」


 マモルのカバンの中には、見たことのない、古びた分厚い本が入っていた。ちょうど英和辞典くらいの大きさだ。本の表紙には、『アルゴリズム』と下手くそなカタカナで書かれていた。

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