秘密基地と博士
〜あらすじ〜
毎日ゲーム漬けだった少年が田舎で秘密基地を営む博士との出会いをきっかけにちょっぴり成長する物語
〜人物表〜
相川駿太(12)小学生
相川幸子(40)駿太の母親
米田悠人(68)駿太の祖父
米田圭子(66)駿太の祖母
権田裕二(70)米田悠人の友人
○相川家・外観
家の前に緑の木が立ち並び、蝉の鳴き声が響いている。
○同・リビング
相川駿太(12)、ソファの上でゲームをしている。
相川幸子(40)、駿太の前に通りかかる。
幸子「駿太、明日からの荷造り終わったの?」
駿太「これからやる!」
ゲームに集中する駿太。
幸子「ホント、毎日ゲームなんだから」
駿太「夏は家でゲームに限るね」
幸子「ナニとぼけたことを言ってるの?ちゃんと自分の荷物の準備しとくのよ」
○東京駅・ホーム
駿太と幸子、新幹線に乗り込む。
○東北新幹線・中
駿太と幸子、席についている。
駿太、カバンをあさり、ゲームを取り出す。
駿太「あれ、もう電池ないな」
駿太、カバンを探り、焦りの表情になる。
駿太「あれ、ない!」
幸子「どうしたの?」
駿太「充電器、忘れた…」
幸子「昨日あれだけ言ったじゃない!準備は大丈夫なのって」
駿太「…、今から家に戻れないかな?」
幸子「戻れないわよ!たまにはゲームしない日があってもいいんじゃない?」
駿太「そんなぁ…」
○盛岡駅・改札出口(夕方)
幸子、駿太を連れて改札に出る。
米田悠人(68)、幸子と駿太に気づく。
米田「幸子、駿太、ご無沙汰だね!」
幸子「わざわざ迎えにありがとうね」
米田「駿太も大きくなっなぁ」
駿太「…」
米田「あれ?」
幸子「ごめんなさいね。今、機嫌が悪くて」
米田「何はともあれ、まずは家まで行こうか」
○米田家・庭(夕方)
米田の車が止まる。
車から、駿太、幸子が降りる。
米田圭子(66)、家のドアから出てくる。
幸子「久々わね、お母さん」
圭子「待ってたよ。駿太も久しぶり」
駿太「うん」
圭子「なんか元気なさそうじゃない?」
幸子「いいの、気にしないで」
○同・食堂(夜)
米田夫婦、駿太と幸子、食事をしている。
米田「そんなことで落ちこんでたのかぁ」
駿太「…」
米田「わかった、明日、おじいさんが面白いところに連れてってやろう!」
駿太「ホント、ゲームセンターとか?」
米田「まぁ、そんなところかな」
駿太「やったぁ」
幸子「もー、ゲームばっかりなんだから」
○米田の車・中
駿太、助手席に乗っている。
米田、運転をしている。
外の森林の風景を眺める駿太。
駿太「どんどん山の中に行ってるんだけど…」
米田「もうそろそろだよ」
前方にログハウスが見えてくる
○権田のログハウス・外
米田と駿太、車から降りる。
米田「権田さーん!」
権田裕二(70)、ドアから出てくる。
権田「おやおや、米田くんじゃないか」
米田「ご無沙汰しております」
権田、駿太のところに目をやる。
権田「その子は?」
米田「孫の駿太です」
権田「ほー、米田の孫とはねぇ。駿太くん、よろしく」
駿太「駿太です。よろしくです」
権田「わしのことは博士と気軽に呼びなさい」
駿太「は、はかせ?」
米田「権田さんは発明家なんだよ」
○同・中
部屋中に権田の発明グッズが雑然と置かれている。
権田と米田、楽しそうに会話する。
駿太、部屋の中を見回す。
駿太「なんかモノがいっぱい」
駿太、ピザ窯に近寄る。
駿太「これって何に使うの?」
権田「それはピザ窯だよ」
駿太「こんなところで作れるの?」
権田「あぁ、もちろんさ。作ってみるか?」
駿太「いいの?」
権田「もちろん」
米田「権田さん、駿太を一日預けても大丈夫ですかね?」
権田「あぁ、構わんよ」
米田「ということで、博士から色々と教えてもらうといいよ」
駿太「うん」
○同・ベランダ
駿太、机でピザ生地をコネている。
権田、具材を持ってくる。
権田「おっ、いいできだね」
駿太「ありがとう。博士はなんでこの場所作ったの?」
権田「友達と皆で秘密基地を作ろうってね。頑張って山を切り開いて作ったんだよ」
駿太「ヒェェ、博士すげぇ。そんなのゲームの話だけかと思った」
権田「いやいや、単なるお遊びだよ」
駿太「じゃあ今は友達と遊び放題だね」
権田「それが、みんな死んでしまって、もう私一人なんだよ」
駿太「そうなんだ…」
○同・庭(夕方)
米田、車の前で立っている。
駿太と権田、楽しげな表情で前から歩いて来る。
駿太「おじいちゃん、今日、自分でピザ窯の火つけて、ピザ作ったよ〜。火だって自分でつけられるんだ!」
駿太、マッチで火をつける素ぶりをする。
米田「今日はほんとお世話になったようで」
権田「いえいえ、こちらも久々のお客で楽しかったよ」
駿太「おじいちゃん、明日も来ちゃダメかな?」
米田「権田さんがいいなら大丈夫だが」
権田「もちろんだとも。明日は竹馬を作ろう」
駿太「やったぁ」
○米田家・リビング(朝)
米田、電話に出ている。
駿太、米田の様子を見ている。
米田「えっ、権田さんが。わかりました。」
米田、電話を切る。
駿太「博士どうかしたの?」
米田「それが…」
○中村病院・部屋・中
ベッドに横たわっている権田。
駿太と米田、部屋に入ってくる。
米田「腰は大丈夫ですか?」
権田「大したことないよ。ちょっと張り切って竹馬に乗ろうとしたらこの有様で。駿太くんもごめんな」
駿太「大丈夫だよ、博士」
権田「そろそろ発明家も潮時かねぇ…」
気を落としている権田。
○米田家・部屋・中(夜)
マッチ箱と棒を見つめる駿太。
○米田の車・中(朝)
駿太と幸子、座席に乗っている。
運転している米田。
駿太「最後、博士のところによってもいい?」
米田「もちろんさ」
○中村病院・中
ベッドで天井を眺めている権田。
駿太、部屋に入ってくる。
駿太「博士、元気?」
権田「あぁ、来週には退院だよ」
駿太「僕、今日帰っちゃうんだよ」
権田「そうか、寂しくなるなぁ」
駿太「それで、これ」
マッチ棒で作られたログハウスを渡す。
権田「ほー、よくできてる」
駿太「博士からもらったマッチで思いつたんだ!ぼくの発明品、受け取ってよ」
権田「ありがとう」
駿太「これから東京に帰ったら博士に負けないスゴイ基地作るからね」
権田「完成が楽しみだ」
駿太「博士、ぼくの基地が完成するまで元気でいてよ。また一緒に発明しようね」
明るい表情になる権田。
権田「楽しみにしとるよ」
○相川家・玄関
駿太、靴をはいている
駿太「行ってきまーす」
工具を持って外に出かける駿太。