表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/71

第1話 プロローグ



挿絵(By みてみん)




 日本発のMMORPG(マッシブリー・マルチプレイヤー・オンライン・ロールプレイングゲーム)、『Magic of the Adventureマジック・オブ・ザ・アドべンチャー』は、剣と魔法のファンタジーRPGゲーム。ダウンロード数、ソフト販売数が九千五百万本を超える大ヒットを記録していた。


 なぜ、そこまでヒットしたのだろうかと、テレビや雑誌、ネットでも、自称ゲーマー、経済評論家、コメンテーターたちは、さまざまな意見を交わした。



 ヒットの理由の第一は、始めるにあたっての敷居が低いことだった。


 『Magic of the Adventureマジック・オブ・ザ・アドべンチャー』、通称MOTAは様々なプラットフォームに対応していた。家庭用および携帯用、各種テレビゲーム、パソコン、スマートフォン。新たにハードウェアをそろえる必要がない。またスタンダード版とアップグレード版の二種類が発表されていたが、スタンダード版は、無料ダウンロードが可能だ。お金をかけることなく、すぐに始められる。それがひとつ。


 また有料のアップグレード版は、基本内容はスタンダード版とまったく同じだ。それでも、これを購入するものは少なくなかった。一度でも体験してみると良い。そこには驚くほどのリアルで美麗な世界があった。最新のVR(ヴァーチャル・リアリティ)にも対応していたので、MOTAのお陰で、VR機の売り上げが倍増したほどだった。


 同じアカウントで、スタンダード版とアップグレード版、どちらもプレイできる。たとえば、外出時にはスマホでプレイし、帰宅後に大画面テレビやVR機でプレイをするファンも多かった。



 ただ、それだけだと、そこまでのヒットは考えられないと、ある評論家は言った。MOTAの最大の特徴は、プレイヤーから「製作者は頭がおかしい」と言われるほどの、最新技術の導入と作り込みにあった。


 まず最先端の同時翻訳システムを導入した。これにより世界中の人と気軽に会話したり、冒険を楽しんだりすることができるようになった。さらに、AI技術を用いてNPC(ノン・プレイヤー・キャラクター)を人間らしく行動させ、また会話させることに成功した。個性ある魅力的なNPCたちにファンがつき、アニメやマンガなどの二次制作が行われるようになった。


 MOTAには色んな楽しみ方があった。プレイヤーの多くは冒険者となって世界のさまざまな遺跡、ダンジョン、未踏の山や広大な海、砂漠などを探検する。ドラゴンや魔物と戦う。それだけではない。村を造ったり、王国を建てることも可能だった。基本の職業は百種を下らず、さらに自分で新たな職業を作ることも可能だ。ある者は鍛冶屋、ある者は農民として生活することを楽しんだ。



 製作者はMMORPGにありがちな悪質プレイヤー対策をすんなりと解決した。監視を強化し、警告やアカウントの停止などのペナルティを課すのではない。


 「いいね!やだね!」システムの導入である。各プレイヤーによる申告に加えて、一定の行動、人助けをしたり、物をあげたり、慈善行為を行うと「いいね!」ポイントが上がる。悪質プレイを行うと「やだね!」ポイントが上がるのである。これらのポイントにより、ゲームの難度、運が左右されるのだ。たとえば「やだね!」が高いと、襲ってくる魔物が強くなって、攻略できないダンジョンも少なくない。自然災害などにまきこまれる確率も増える。自然と、多くのプレイヤーは「いいね!」を求め、悪質プレイは驚くほど減少した。


 膨大な情報量。町、NPC、職業、魔物、植物、食べ物、アイテムなどは万を超えるほど数が多い。オリジナルの服や武器、防具、工具、装飾品、魔法道具などのアイテムや、独自の魔法すら新たに作ることもできる。


 冒険しつくせないくらい広大な世界。すべてを知りつくせない量のアイテム。隠された多くの謎。そして心地よいゲーム内の雰囲気。MOTAは多くの人々の心をつかんだ。




 京都の片田舎に暮らす高校二年生。文芸部員の日向翔一ひなたしょういち。彼はゲームと謎解きが大好きだった。


 彼もまたMOTAにはまっていた。毎晩のようにログインし、友人の秀樹と保志とMOTAの仮想世界で遊んでいた。


 翔一は、この先、現実世界で想像もつかない冒険が待っていることを知る由もない。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ