07.真の身体強化
ロイドの体は炎の鎧で包まれ、マナの集中している腕は特に密度の高い炎に包まれていた。
「いくぜぇ!」
そう言って走り出したロイドを後押しするかのように炎が噴き出し、ジェット機のようにロイドを加速させていく。
「速い! しかし、対応できぬほどではないわ!」
アルゲマインもロイドに向かって走り出し、カウンターを狙う。
先に拳が相手に届いたのはロイドであった。
「おらぁぁぁ! 一発くらっとけやぁ!」
炎の拳がアルゲマインを襲う。しかしアルゲマインはきっちりガードをしていた。
「ぐっ。重い…… 炎を纏うだけでこんなにも重い攻撃になるというのか。」
ガードこそしているものの、アルゲマインは一方的に攻撃を受けていた。
「うおぉぉらぁ! このまま押し切る!」
ロイドの連打がさらに加速していく。
アルゲマインは防御してはいるが、ダメージはじわじわと蓄積しているようであった。
ロイドの連打の勢いは衰えず、アルゲマインにダメージを与えていく……
アルゲマインの足元がふらつき、わずかだが体勢が崩れた。
「ここだ! もらったぁ!」
隙を見逃さなかったロイドは渾身の一撃を放った。
「まだまだ若い…… 勝負をあせったか、マナの移動はまだ不得意のようだな……」
アルゲマインは笑い、カウンターを仕掛け、マナの薄い腹部へと蹴りを放った。
「関係ねぇよ、炎の勢いは誰にも止められねぇ!」
アルゲマインの蹴りから守るように、腕の炎が大きく噴き出した。
蹴りは炎に遮られ、ロイドの拳はアルゲマインの顔面へと叩き込まれた。
「ぐあぁ……」
アルゲマインは初めて苦痛の声をもらしながら、壁へと吹き飛ばされた。
「ここで…… 決める!」
ロイドは炎を使い加速し、アルゲマインとの距離を詰め、再び連打を浴びせる。
「これで…… 俺の…… 勝ちだぁ!」
右ひじの後ろから炎が噴き出し、凄まじいスピードをもった一撃がアルゲマインを捉えた。
<フレイム・アーマー>が解除され、ロイドは力が抜けたようにその場に座りこんだ。
会場は静寂に包まれ、勝利の行方を見守っている。
先に立ち上がったのは、アルゲマインだった。
「ははは…… まさか、小僧相手にここまでやられるとは……」
ボロボロになりながら、アルゲマインはつぶやく。
「俺が魔法を嫌いといったな…… それは少しだけ違う、俺が魔法から嫌われているのだ。俺の操ることのできるマナの量は少ない…… 私はマナから愛されていないのだ……」
「そ、そうか。だから身体強化術の開発を……」
ロイドはまだ呼吸を整えることができず、辛そうな表情を浮かべながら答えた。
「身体強化の他にも、一つ作った術がある…… 次の騎士団長との闘いまで温存し置きたかったが仕方あるまい…… 立て!真の身体強化を見せてやる……」
アルゲマインはそう言い放つと、ロイドが立ち上がるのを待った。
「随分と余裕だな…… 俺も負けたくはないんでね。やってやるよ!<フレイム・アーマー>!」
立ち上がったロイドに再び炎の鎧が纏われる。
「ここからは一瞬だ…… この術を使わせたことを誇りに思うがよい。<マナ・パージ>!」
アルゲマインの詠唱と共に、アルゲマインの体はマナに包まれた……