01.流星杯 予選
コロシアム状の模擬戦闘場の上に、学生と思われる人物が2人立っている。
1人は、制服のところどころに汚れや傷がつき、肩で息をしていた。
対照的に、もう1人は、全くの無傷で退屈そうな顔で戦闘場に立っていた。
「はぁはぁ…… <フレイム・バレットォォ>」
「次は炎の弾丸ですか…… マナよ! <ウインド・ブラスト>」
肩で息をしている生徒は、無数の炎の弾丸を放つ。
それを見たもう1人の生徒は、退屈そうにつぶやき、暴風を引き起こした。
暴風はいとも簡単に、無数の炎の弾丸をかき消し、そのままの勢いで弾丸を放った生徒をコロシアムの壁まで吹き飛ばした。
「ロッソの気絶を確認! 校内予選の優勝者をヴァイスとする!」
戦闘場にいた審判が勝者の名前を告げた。それと同時に観客席からは大きな歓声があがる。
「ありがとうございました。本選でも優勝するつもりで頑張りますので、よろしくお願いします。」
簡潔に観客に向けて挨拶をすると、ヴァイスは戦闘場を後にした……
「よぉヴァイス。さすがだな!」
コロシアムの控え室で着替えているヴァイスに赤髪の男が声をかけた。
「ロイドですか。まぁ校内予選くらいは余裕で勝ち上がらないと本選で優勝なんて不可能ですからね。」
綺麗な方まである銀髪をなびかせながら、ヴァイスは笑って答えた。
「しかし、本当に無傷で優勝しちまいやがるとは…… やっぱり天才だよ、ヴァイスは!」
「そんなことありません。本選には王国の騎士団長や宮廷魔導士も出場しますからね。余裕があるのはここまでです。それにロイドも本選には参加するのでしょう?」
「あぁ、俺は学生枠ではなく、ギルド枠での参加だがな。まっ、ぼちぼち頑張るよ。」
「ロイドがでるとなったら、一筋縄ではいきませんね。よろしくお願いします。」
「へいへい、俺はヴァイスとは当たりたくないけどな。まぁ本選を楽しみにしとくよ。またな、ヴァイス!」
そう言ってロイドは控え室を出て行った。
「ぼちぼち頑張るですか…… 私は負ける訳にはいかないのですけどね……」
ヴァイスのつぶやきは誰にも聞かれることもなく消えていった。